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府中での個人的な3.11

繰り返し書いたり話したりしていることだけれど、ぼくの個人的な3.11は、「活字の断食」などというケッタイな(?)試みを実行している最中に起きた。3.11によって、府中市の隅っこで孤独に押し潰されそうになりながら、何とか生きていたぼくの日常はまた一度、リセットされたようになった。

前年の夏から毎日、書いていた「道草のススメ」は、その「活字の断食」の開始と同時に(調べてみたら)3月9日で途切れている。

12日には震災のことを書いているので(生存確認のために始めたブログだったのだ、再開は必要だと思った)書かなかったのは、わずか2日だ。

「活字の断食」は、その期間、"読む"をしない、ということなのだが、おそらくその時の自分はインターネットをつなげるのも… もしかしたらパソコンを開くのすら嫌だった。

しかし、3.11が起こって、もっとも頼りになったのもインターネットだった。

『アフリカ』第14号(2012年5月号)で、ぼくはこんなことを書いてる。

 その日の夜中、ふと思い立って部屋を出て、甲州街道の様子を見に行った、その光景が忘れられない。交通が麻痺しているはずの都心──新宿方面を目指す車のながい列がずっとつづいていた。その様子を、ぼくは甲州街道にかかる陸橋にのぼって、一枚だけ写真に撮った。(「"私たち"の生まれる場所(中)〜"成り行き"をどう受け取るか」)

その写真、「道草のススメ」に残っている。

 昨夜から、余震がぐっと減って、静かになったように感じている。 ぼくは、金曜の14時46分から… というより、そのあとすぐには地震がどこで起こって、被害がどうなっているのかまったくわからなかったので、正確には国立駅まで辿りついて、情報を得て以来、止まっていた「活字の断食」を、またそろそろ再開しようと思ってる(ただ、まだ余震の恐れがあるので、情報収拾はつづける。まずはテレビから消す)。 誰かも言っていたけど、節電というより、「いらない電気は消す」という、日常的なこころがけをするだけ。過剰な反応は何も産みはしない。テレビは地震発生後1日を越して、次第にワイドショー化してきたし(全てがそうとは言わないが)。消そう(もう消してる)。ラジオだけでいい。東京ではティッシュや水を買い込む人たちもいるようだけれど、その必要はない(ここは「被災地」じゃない)。イベントなどの「いたずらな自粛」にもぼくは大反対。やれるものは、やればいい。実際に昨日、実施に踏み切った人たちも知っている。 被災者になるのと、「被災者面」するのは違う。これが国民性だよ、と言われたらそれまで、だけど。写真は金曜の深夜の、甲州街道。新宿方面。(2011年3月13日「東京ラッシュ」全文〜Blog「道草のススメ」より)

その前日には、こんなことを書いている。

 ご心配のメール&電話をいただいた方々、ありがとうございます。東京は、基本的には無事です。交通機関が麻痺して混乱はしましたが、大多数の人にとっては、「ものが落ちたり倒れたりした」のと「帰れなくなった」くらいの被害、と捉えています。さらに大きな地震がこない限り、身の危険は感じません。(余震はつづいています。少しだけゆるやかになっている感じもします。) ただ、関東でも太平洋に近い場所、とくに茨城、千葉など東京以北では停電、断水などで散々な思いをされている場所もあるようです。川崎や横浜でも停電したとか(けっこう近いですね)。 ぼくも知人の全員の無事を確認できているわけではありません。(意識して騒ぎすぎないようにしています。心のなかは乱れていますが。) が、いまはじっとして様子を見守るしかない。もう何だか、祈るだけです。パソコンとテレビ&ラジオ以外の電気をなるだけ使わず、今夜も静かに時間を過ごそうとしています。(注)「活字の断食」はやむなく中断しています。関東在住の方へは、この方のブログがいいとみんなで言い合ってます。(2011年3月12日「祈り」全文〜Blog「道草のススメ」より)

※文中にあるリンク先のブログ、まだあります。それもぜひご覧ください。

大平洋戦争のあとに生まれた文学作品で、ぼくの心を打つのは、悲惨な事件を大局的に総括したようなものではなく、個々の、ある意味ではちっぽけな、一隅の想いのような証言であり、作品だ。

同じようなことが、3.11にかんしても、感じられる日が必ず来る。いや、もう来ているのかもしれない。それから、3.11も、太平洋戦争も、その間にあったいろいろなことも、まだ、終わっていないのだという気がする。

(つづく)

「道草の家・ことのは山房」のトップ・ページに置いてある"日めくりカレンダー"、1日めくって、3月 11日。今日は(我が家にとっては)陣痛記念日でもあります。※毎日だいたい朝に更新しています。

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