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たばこに人生救われた話。


私はスモーカーである。
愛煙しているのはピアニッシモのピンク箱。
デザインがかわいいし、1ミリだからそこまで害はないと吸い続けて早7年くらいが経とうとしている。

この7年間で
私をとりまくタバコ情勢は大きく変わった。

まずは値段。
おそらく私が吸いはじめた当時は確か400円台だったと思う。
今やもうすぐ600円越えするのではないかと危惧する毎日だ。

そして喫煙所。
圧倒的に吸える場所が少なくなった。
カフェや居酒屋は分煙どころか、全席禁煙になっているところが後を絶たない。
そしていまやコンビニさえ喫煙ブースを撤去している時代である。
外出するにも、次はどこで吸えるのかしっかりとインターバルを考えて行動しなければならない。

なんとせちがない。

一体、どこまで値上げ、どこまで制限されたら私は禁煙するのだろう。
そんなことを考えながらも私は毎日約1箱、しっかりと喫煙している。

そんな世間的には、喫煙すること自体がタブー、けむりだけにけむたがられるようになった世の中だが、だからこそ、自分自身がタバコに人生を救われた話を、タバコ自体、タバコ文化がなくなってしまうその前にここに綴っておこうと思う。

私がタバコを吸う喫煙者を身近に感じたのはたしか大学生時代だったと思う。
それなりにかっちりとした家に育った私は親族にタバコを吸う人はほとんどいなくて、サークルの先輩が吸う姿を見て大人だなぁ、なんかかっこいいなと思ったのをよく覚えている。



だからといって、所属したサークルに喫煙者は多かったものの、自分自身がそれに便乗したということはなくて、どちらかというと、カラオケで煙が充満していると、むせて、「タバコくさいです〜。先輩〜。」なんて言葉を口にしていたくらいだった。

そして時は流れて、私は晴れて社会人になった。早いうちに経験を積みたくて入社した当時ゴリゴリでイケイケの(自分がそう感じていただけかもしれない)ベンチャーで、経験を積むどころか、終わることのない仕事とプレッシャーにドンと壁にぶつかってしまった。

深夜に及ぶ長時間労働
呼び出しがあれば休日出勤
あくなき向上心で勉強と努力を惜しまない周りの精鋭たち
全然伸びてくれない営業成績


私が夜つらくて眠れなくなる毎日が続くまでにそう時間はかからなかった。

そんなとき仲の良かった友人が吸っていたタバコを1本くれたのがきっかけとなった。

全くタバコを吸ったことのなかった私は思い切りむせた。「なんだこりゃ」と思った。
そして人生初の「ヤニクラ」を経験した。
「くら〜」として襲ってきた眠気に私は虜になった。そう、当時毎日眠れなかった私にとっての革命だったのだ。

それ以来、毎日私はヤニクラで眠るようになった。もちろん途中からヤニクラ感覚は慣れて薄れてきたものの、気づいたときには立派な喫煙者になっていたのである。


新卒1年目ヤニクラ女の爆誕である。


最初は、どこか会社で吸うのは後ろめたくて、ずっと家でしか吸っていなかった。

けど、あるとき同じ部署、同じ支店に配属された唯一の同期とのみにいった際、ものすごくタバコを吸いたくなった私は、「同期なら知られてもいいか」そう思って、思い切って「ねぇ、タバコ吸ってい?」と切り出した。

そしたら「え?吸うの?知らなかった!俺もずっと辞めてたんだけど、最近やってられなくてまた吸いはじめたんだよね。」

と言われて、おもむろに彼はバッグからタバコを取り出した。思わぬ答えに拍子抜けしたものの、仲間ができたかんじがしてすごくうれしかったのをよく覚えている。


正直、最初からそこまで仲のいい同期とは思ってない存在だった。ただ、同じ支店の同期ということで、一緒に仕事したりする機会が多かっただけで、彼は完全に頭脳派でなんでも効率的に卒なくこなすタイプだったから、パッションと気合いでやり抜こうとする私とは全く違う人種だったし、結構シャイな印象の同期で、困ってることとか悩みとかないんだろうなと勝手に思っていた。

2人で一緒にタバコに火をつけて、互いにビールを流し込む。

「吸わないとやってらんないよね。」

弱音なんて吐いたことのなかった彼が突如悩みを打ち明けはじめた。

入ったばかりの同期がキツすぎて辞めていく話
普段の支店での各自の人間模様
仕事する中でぶちあたっている壁


気づいたら1箱くらいゆうにになくなっていたと思う。今まで全然知らなかった彼のぶっちゃけ話を聞いて、すごく心が軽くなったのをよく覚えている。

それからというもの、何を約束したわけでもなく私たちは毎日一緒に一服するようになった。

最初は1日に1回くらいだった頻度も1ヶ月も経てば、朝始業前、昼休憩後、定時終わり、深夜終業後の計4回。あきもせずに一緒に一服した。

喫煙者の方なら感じたことがあると思うが、仕事中に一服をするとき、ニコチン効果なのかよくわからないが、一瞬人は仕事スイッチをオフにする傾向があるらしい。そして思わぬ本音がポロリ。

これがタバコミニケーションというやつなのだろうなと何度も思った。

そりゃあ毎日飽きもせず一緒に一服をしていると、「あ、今日は機嫌悪いな」とか「今日調子悪そうだけどどうしたんだろう」とか「あ、今日はうれしいことあったんだろうな」とか些細な動作とか吸う本数でお互いのいろんなことに気づくようになる。

そうやってどちらかが落ち込んでいると
「今日めしいこや」そう言ってまためしいってタバコ吸って

そんななんでもないような時間に今思えば驚くほどに救われていたのだなと思う。

どう考えても過酷な労働環境の中で、精神を壊さず、生き延びることができたのは、タバコと、タバコ仲間のおかげである。感謝しかない。

とはいえ、私は結局その会社を1年とちょっとで退職した。
最終出勤の日、開いてもらった送迎会の後、結局最後はその同期とタバコを吸った。

「1年前には、まだ知り合ってなかったのに、まさかこんなに仲良くなって今日ここで、この時間に一緒にタバコ吸うなんて思わなかったよね。」

「ほんとそうだよね。」

「これからまたどうなるかわからないけど、1年後どんな自分になってるかワクワクしながら生きたいよね。」


なかなかお互い帰れなくて、よく行った喫煙所をスタンプラリーしながら、夜中まで一緒にタバコを吸った。

そして別れ際、同期は餞別として、私が吸っている銘柄のタバコをカートンで、ライター付きでくれた。

これが私を救ってくれたタバコの話。
つらくなったときよく私はタバコを吸いながらこの話を思い出す。

これから、もしかしたら私もタバコを吸わなくなるかもしれないし、世の中からタバコが消えてなくなるかもしれないけど、そうなったとしても、このよき想い出は忘れないように胸にしまっておこうと思う。










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