見出し画像

#28 社会人編 〜お酒というもの〜

私はお酒が苦手である。

社会人として致命的と言われてしまうかもしれないし、実際飲み会が開かれても、

「今日はちょっと調子が悪くて…」

などと言い、フリードリンクと高いテンションで乗り切ろうとする始末だ。

実際は、今日どころかお酒を飲めばいつだって調子が悪くなる。

成人してからはや10年近くなろうとしているが、おそらくアルコール度数数%しかないチューハイでも半分も飲まないうちにクラクラしてくる。

もう少し時間が経つと、頭がガンガンしてきて心なしか気分も悪くなってくる。

さらに時間が経つと、もはや全身真っ赤になり、使い物にならない状態へと変貌する。

我ながら、お酒に弱いな〜とは思っていたし、おそらく同僚や友人達からも

「こいつ全然飲めないな」

と思われていただろう。

お酒をガンガン飲める人たちを見て

「いいなぁ〜」

と思ったことも数えきれない。

そんな私も一時期お酒をなんとか克服できないものかと考え、努力していた時期がある。

社会人になり始めてまだまもない頃、忘年会や新年会などを職場の人とする際に決まって、先輩からグラスに次いでもらっては飲み、早々ダウンするという醜態を晒していた。

これはいかんと思い、どうにか少しづつでもお酒になれないかと、自宅で練習をすることにしたのだ。

「まずは簡単なところからチャレンジだ。」

と缶チューハイに手を出す。今どきストロング缶などという得体の知れないチューハイが流行っているらしいが、私に言わせればあれは消毒液である。

お酒が全く飲めない方達には共感していただけると思うが、アルコール度数が高くなるにつれて、もはや消毒液感しか得られなくなるのだ。

そんなわけで、ごくごく普通の缶チューハイを選択した私は少しづつ飲んでみる。

「よし、これくらいならまだいける。」

と、レベル1をクリアした私は少しだけ自身を取り戻す。

次、少しレベルを上げて、レベル2のビールに手を出してみる。

もともと、ビールの苦味とかは嫌いではないので、飲むこと自体には抵抗はない。

ただ、アルコールが同時に私を襲う。

「くああああ」

本来ならうまいと歓声をあげるところだが、私の場合は涙目で悲鳴である。

アルコールがいよいよ私に猛威を振るう。

なんだか、胃でプロレスラーかなんかが暴れているように感じる。実際には殴られてもいないのに、頭もぐわんぐわんと揺れ始める。

おそらくセコンドがいたら私を一回引き下げたくらいには、結構やられていた。

しかし、ここで練習して飲み会に少しでも余裕を持って臨みたい、と私はレベル3?として買ったウイスキーに手を伸ばす。

今にして思えば、いやその時でも若干この飲み方は間違っているよな、という感じはしていた。まあ今ならはっきりと言える、間違っていると。

しかし、妙な熱意とKOしかけた私の頭ではもはや正常な判断が難しい。

ショットグラス一杯ほどのウイスキーをクッと飲む。

「ぬはあああああああ」

と声にもならない悲鳴をあげ私はトイレへと駆け込むこととなる。

ちなみに、その後の記憶は所々曖昧なのだが、2・3時間ほどトイレとお付き合いをしていたらしい。

らしいというのは、その間にどうやら友人に連絡をしたそうで、その友人から聞いた話がそれだった、記憶は正直ほぼない。その後、ことの顛末を友人に話すと

「うわ、その飲み方最悪。なんでいろんな酒を一気に飲んじゃうのさ。ただでさえ弱いんだから、絶対気持ち悪くなるって。」

と心配と哀れみのこもった評価を受け、

「だよねー、もう酒を克服しようと思わない。」

と熱意を持っていたわりには易々と敗北宣言、K O負けとなった。

ちなみに友人は、

「いや、もっとゆっくりと自分が楽しめる飲み方をすればいいじゃん。」

と、まさかの目からウロコなアドバイスをしてくれた。

なるほど確かに、レベル1のスライムで突然最後のダンジョンのボスモンスターに挑むのは無理があるな、と納得した。

これからは、スライムはスライムらしくレベル1のところで細々とお酒を嗜もうと心に誓い、今ではちびちびと缶チューハイを飲んでいるに留まったのだった。

宜しければサポートお願いします!