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【読書レビュー】スロウハイツの神様(上)/辻村深月 著

今回から読了したものは可能な限り、レビューを書かせていただきたく思う。

今回は辻村深月さんのスロウハイツの神様(上)を読了したので
そちらについて。

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01.あらすじ

人気作家 チヨダ・コーキの小説で人が死んだー

あの事件から十年。アパート「スロウハイツ」ではオーナーである脚本家の赤羽環とコーキ、そして友人たちが共同生活を送っていた。
夢を語り、物語を作る。好きなことに没頭し、刺激し合っていた6人。
空室だった201号室に新たな住人がやってくるまでは。

02.感想・レビュー

様々なレビューをみると、登場人物の紹介要素が大きいと言われるレビューが多くあります。確かに登場人物の紹介。主にスロウハイツの入居までを描かれているような印象を受けた。
しかし、あらすじにもある通り、チヨダ・コーキや赤羽環の両名においては現在の地位、そして過去まで迫るような内容となっていた。

あくまで相関図的な登場人物の紹介と片付けるにはあまりにも勿体無い。

スロウハイツのアパートの名前の由来に関しては
本書の序盤で出てくるので、そこは皆様の目で確認していただきたい。

登場人物の関係性。友人とはいえ、夢を語り物語を作る。
広い意味でいえば同じクリエイターなのだ。
そこにはそれぞれのアイデンティティに対する
「こいつには叶わない」といった半ば諦めに近いものから、
信頼の裏返しとしてのうっすら見え隠れする憎しみと言い難い嫉妬のようなものがそれぞれの登場人物から伺える。

月並みだが同志であり、ライバルでもあるのだ。
最初はマンガ家の間でも有名となるトキワ荘のイメージがあったが、
そうした切磋琢磨というよりも人気作家 チヨダ・コーキの存在が皮肉にも不穏な空気を連れてくる。
スロウハイツの神様とは一体誰なのか?

本書ですら候補が何人か現れるが、解釈は人それぞれ。

下巻へ向けての伏線が多い印象。
まだ、上巻のみの読了のため、なんとも言い難いが
読み終えると続きがきになると同時に「なるほどね・・・」というように感嘆してしまう。

20代前半の夢追い人ならばきっと登場人物の感情を追体験できるだろうし、そうでなくても懐かしく気持ちが生まれるだろう。
クリエイターならばぜひ読んでおきたい1冊。

03.グッときた表現

ここで本書で気になった表現をいくつか書き出したいと思う。

「愛は、イコール執着だよ。その相手にきちんと執着することだ。」
「それは執着されない環の負け惜しみだよ。ストーカーになるくらい誰かに執着してみてから言えよ。人間はそれくらい相手を欲しくなるものなの、本当は。」

登場人物の恋愛トークにて交わされた言葉であるが、まさに言い得て妙である。
誰かのために、ということや「無償の愛」こういう時は綺麗に書きそうなものだが、あえてストーカーという言葉を使うことで、汚い部分を描いている。
恋は盲目なんて言葉も耳にするときはあるが
いかに心をすり減らすかといったメッセージなのだろう。
私はドキッとさせられたのと同時になぜかスッと受け入れるくらいに納得した。

その様子は、どうやら見せるべき「誰か」の目が想定されていた。

事件によって押しかけたマスコミを表現した一文。
見せるべき誰かはきっと我々一般大衆を指しているのだろう。
見せる誰かではなく見せるべき誰かというところに、お話の中ではあるが世間の注目度を表現するような言葉と私は捉えました。

04.下巻へ向けて

まだ上巻を読んだばかりのため、話の前提を掴めていないからこそ、
今回は下巻へ向けてということで締めさせてほしい。
下巻は私はすでに購入済みなのだが、上巻で登場している関係性がどのように変わるのか。また、スロウハイツの住人の未来を見届ける。一人の目撃者としての責任を果たしたいとさえ思う。

05.こちらから本書をチェック

【Amazon】スロウハイツの神様(上)


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