かおり

【童話】やがて昔話

昔々、あるところに
お爺さんとお婆さんがいました。

お爺さんはパソコンでブログを更新し
お婆さんはケータイでゲームに余念がありません。

裏山の林には竹が光っていたり
近所の川には大きな桃が流れていたりするのですが 

当然ながら、ふたりはまったく気づきません。

そういうわけで
まったくなにもおもしろいことが起きないため 

物語はこれでおしまいです。

やれやれ。
ひどい話があったものです。

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【語り】目覚めの頃

なんなんだろう 

うまく言えないんだけど 

このうまく言うとか 
うまくやるとかやらないとか 

そういうことも含めて 

そういう方向で 
いいのかなって 

ああ 全然伝わらないよね 

頭ん中 まだ整理できてないんだ 
整理すべきかどうかも含めてね 

とにかく 

みんながみんな 
そういう方向に進んでいるとして 

そういう方向に進んでいても 
問題なさそうなんだけど 

そういう方

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【話】僕の悩み

僕は末っ子の長男で、姉が三人いる。
姉たちとはちょっと年が離れている。

両親はそろって刑務所に服役中。
なかなか込み入った事情があるのだ。

僕が幼い頃、姉たちは僕をおもちゃにして遊び 
いたずらして笑い、日課にしていじめた。

おかげで僕はすっかりひねくれてしまい 
姉たちはどうにもならないものになってしまった。

「夕飯まだ?」
「これからだよ。学校から帰ったばかりだから」
「あっ、生意気に

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【論説】「死」の考察

「死は私と関係ない。
 私がいるうちは死んでおらず、死んでしまえば私はいないから」

悟ったように昔の賢人は語ったが、はたして本当だろうか。

「死」と「私=生」は、さような小賢しい理屈通り
きれいに分離されているものだろうか。

年々老い、若さと力を失い、疲れやすくなり、意欲が減り、
意識は薄れ、苦しく辛く耐えがたい痛み、そして・・・

これでは、まるで
生きながら少しずつ死んでいるようなもので

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【セリフ】水面をめくる方法

水面をめくるにはコツがいるんだ。

まず、いかにもめくるような態度で水面に近づいてはいけない。
察しのいい水面に用心されてしまうから。

「ちょっと手を洗おうかな」
そんな独り言をつぶやきながら、しかし静かに水面に近寄る。

両手を水に半分ほど入れて親指は濡らさず空中に残し 
人差し指は水中に潜らせる。

そして、波紋が立たぬよう注意しながら
両手同時に親指と人差し指で水面をはさむ。

そのまま間

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【詩】霧の向こう側

ここからでは見えないけれど 
この霧の向こう側には 

何かがあって 
誰かがいて 

その証拠のように 
ときどき物音が聞え 

まるで呼びかけるような 
やさしそうな人の声さえ届く。

その声に返事をすればいいのだけれど 
相手の表情が霧で見えなくて 

つい返事するのをためらってしまい 
ここには誰もいないと信じさせようとして 

かくれんぼしているつもりになって 
いつまでも いつになって

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【詩】ミズタマリ

ミズタマリ ハ キライ 

イジワル バカリ スル コドモ ミタイ デ 

オイテキボリ ニ サレタ コドモ ミタイ デ 

イツマデモ ナキヤマナイ コドモ ミタイ デ 

Puddle

I do not like a puddle

It seems like a child who only makes me sick

It seems like a child who was left

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【語り】打ち明け話

じつはあたし、人形なんです。

その証拠に、ほら、肘も膝も球体関節。
顎なんて、生まれたときから外れてるわ。

背中には扉があって
おなかには引き出しまであるの。

頭の中は恥ずかしいもので一杯で
ときどきこぼれちゃって困っちゃう。

お洋服はたくさんあるけど
和服だって少しはあるわ。

でも、ひとりでは外を歩けなくて

お付のものに両の足首を持ってもらって
交互に動かして一歩一歩前に進みます。

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【詩】糸の切れる

なにせ 
糸なんだから 

切れることもある 

けれど 
糸なんだから 

結べないこともない 

ただし 

どうにも 
もつれたる糸の 

やるせなき 
哀しみ 

Thread Breaks

Something may cut
Because it is a thread.

But it is a thread,
So I can not tie it.

However, it is

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