ピカレスク

第15話:ごくろーさん

【前回のあらすじ】
 すべては仕組まれたことだった。青いトランクはタクヤの父親ともつながりの深い謎の機関「ラボ13」から流出したものだったのだ。レイノンはこれを機に親元へ戻るようにとタクヤにすすめるのだが。

「まだ……父とは会いたくありません……」

 それが彼の答えだった。
 隣ではヴェロニカが呆れたように鼻で笑う。

「と、ゆーことは」

 さっきまでのシリアスなモードから一転して、レイノン

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第14話:ラボ13

【前回のあらすじ】
 ヴェロニカの足跡を掴んだレイノンはその足で彼女のもとへと現れる。窮地を救ったかと思いきや、彼女もまた鉄拳制裁の餌食に。そして闇から現れる謎の男に、命だけはレイノンに救われたゴロツキたちが抹殺された。

【 3 】

 スペースコロニーでの一日は、ほとんどの場合、地上と同じく二十四時間のサイクルで進行される。

 朝が来て、夜が来る。

 夕方までの時刻変化は、超硬度クリスタル

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第13話:泥棒猫のワルツ

【前回のあらすじ】
 タクヤはヴェロニカとのデートに浮かれていた。まさか自分が騙されていようとは知らず、大事な「青いトランク」を奪われてしまった。彼はまだそのことに気づいてさえいない。

 一度は床が見えるようにまでなった倉庫であったが、海賊船制圧後にまた荷物が増えた。

 今後こそ足の踏み場もなくなってしまった愛船の倉庫内を、船長レイノン・ハーツはひとり探検していた。

 酒樽の詰まった大きめの

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第11話:タクヤ、野良猫を拾う

【前回のあらすじ】
 当然のように海賊を壊滅させたレイノンは、そのまま相手の船の制圧へと動いた。タクヤはまた少しだけ成長したことを自覚したが、彼の大きな背中を見ると、一体正義とは何だろうかと思ってしまう。

 タクヤが無人の船内通路を散策する。
 フール号よりも倍は広い船内は、気を緩めると迷子になってしまいそうである。無人、とは言ったが別に人気がないわけではいない。
 つい先ほどこの船の乗組員は全

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第10話:喧嘩は相手を見てから売ろう

【前回のあらすじ】
 法外な報酬に目がくらんだレイノンがタクヤを連れて新たな仕事へと向かった。目的地は火星の衛生フォボスにあるコロニーである。しかしその道中に、海賊・星の牙を名乗るゴロツキたちに行く手を阻まれた。

 いかつい男たちが列をなして、あのデタラメに広い倉庫の中から次々と荷物を運び出している。

 酒、食料、調度品。
 うず高く積まれていた積荷の山が切り崩され、タクヤは初めてこの部屋の壁

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第8話:うまい話にゃ・・・

【前回のあらすじ】
 愛車『リフト・モービル』でコロニー内を配達に回ったレイノンとタクヤだったが、度重なる配送の遅延で顧客からこってりと絞られる。さらに別の配送先では、何ならいわくありげな雰囲気だった。

 宇宙規模にまで拡大したマーケット。
 その物流の最前線とも言える総合配送センターは、各コロニーに最低でもひとつはあった。そびえ立つ円筒型のビルは人類繁栄の象徴か。

 総合配送の名の通り、その

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第6話:『Fool』と『F001』

【前回のあらすじ】
 誘拐犯に拉致されていたタクヤは、ひょんなことで出会った謎の男レイノン・ハーツに助けられ、彼の船へと乗り込んだ。

【 2 】

 窓のない広い部屋にひとり。
 煌々と明かりは灯るが壁すら見えない。うず高く積まれた荷物の山が部屋中を埋め尽くしていた。

 奥の方になるとかなり永いこと動かされた形跡がなく埃塗れだ。足の踏み場――ぐらいはあるようだが人ひとり通るのがやっとである。

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第5話:一握りの勇気

【前回のあらすじ】
 一瞬のうちに艦橋を制圧してしまった白髪の男。その大きな背中にタクヤは自分の求める「ちから」への憧れを見出していた。

 自分とは住んでいる世界が違い過ぎる。
 直感でそう思ったタクヤは、まるで珍しいものでも見るかのように彼らを眺めていた。そしてようやく思い至ったのだ。

「あ、あの……メイド、さん?」

「エイプリルとお呼び下さい」

「あ、じゃあ、あのエイプリルさん……」

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第3話:白髪の男と美人局

【前回のあらすじ】
 宇宙空間のなかで人身事故に遭遇するという奇っ怪な場面に出くわしたタクヤだったが、すぐにそれが悪質な「当たり屋」であることを察した。怪訝に思いながらも誘拐犯たちは、なぞの男を船内に招き入れる。

 辺境宙域での不審船との遭遇。
 その予兆として担ぎこまれた赤毛の少女。
 謎が謎を呼び、ついには少女の夫を名乗る人物まで現れた。

 ここ数日、タクヤ・ホーキンスの人生は非常事態の連

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第2話:宇宙で当たり屋やってます

【前回のあらすじ】
 父親への反発から反体制運動の活動家となった少年タクヤ。しかし仲間の裏切りにより職業誘拐犯に売り渡されてしまう。この世の終わりだと悟った彼だったが、さらなる奇妙な事件に巻き込まれてしまった。

 壁一面を覆うメインディスプレイには周辺宙域の海図とリアルタイムの船外風景が表示されている。それはまるで星々が黒いキャンバスの光点となって船乗りたちを誘うかのようだった。

 四方には操

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