如月短編集

【ss】運命の選択

どちらかなんて、選べない。

例えば誘い方ひとつにしても、あまりに正反対過ぎて。

でもそれが飾らないありのままの姿だからこそ、とてつもなく惹かれる瞬間がある。

「今度の土曜にさ、お祭りがあるんだけど…
もし先約とか無ければ一緒にどうかな…って。
迷惑なら全然断ってくれていいんだけど…」

そう言ってお誘いの電話をくれたのは今年知り合ったばかりの一つ年上の優しい人。

いつも自分の事より私の気持

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【ss】不戦敗ゲーム

「なあ、どうなの?」

かれこれ数十分ほどだろうか。
私は目の前の不服そうな幼馴染みに、同じ質問を繰り返されている。

「どうって言われても分かんないよ」

「思い付かないならいいじゃん」

「そういう問題じゃないでしょ」

「そんな難しく考えんなって」

幼い頃から一緒に遊んできたし、大抵の思い出を共有してる異性では断トツの理解者だと思ってたのに。
こんなにも彼の思考が読めないのは初めてで、どう

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【ss】最初で最後の嘘

もしも俺が変わらないことを求めたら
君は変わらずにいてくれたの?

「もう一緒にはいられない…」

そう君に告げられたのは数十分前。
納得なんて出来るはずもなくて。
お互い我儘に一方的な思いをぶつけ合うような、話し合いとも言えない時間が続いている。

「別れるのは…無理」

「どうしてよ…」

「俺にはお前しかいないから」

「そんなの私が同じ気持ちじゃなくなった時点で成立しないじゃない」

その

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【ss】僕らに名前をつけるなら

気が付けば君を目で追うようになって、
“たぶん好きなんだな…”と自覚してからは意識して君を見るようになった。

その頃からずっと、君を見る度に
同じように君を見ている奴と目が合う日々が始まった。

“きっと奴も好きなんだろうな…”

そう思いつつも話しかけるには至らないまま数ヶ月が過ぎた時、たまたま帰りが遅くなった俺の少し前を歩く奴。

「……あ」

思わず呟いた俺の声に振り返った奴もまた気まずそ

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【ss】REPLAY

目を閉じると今でも鮮明に思い出せる。

夕焼けで赤く染まった音楽室と泣きたくなるようなピアノの音。

「あの時さ…」

「あの時?」

「うん。音楽室でピアノ弾いてた頃」

「いつの話よ。学生の頃のことだよね?」

「いや…、急に思い出してさ。
…てか、俺はあの頃のこと結構良く思い出してるよ?」

「なんで?」

「なんでだろ…」

何故かなんて考えたこともないけど、それはきっと俺にとって何より印

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【ss】海のような人

波の音しか聞こえない夜の海を見つめながら君になんて言おうか考えていた時───

「無理に言葉にしなくていいよ」

またしても、だ。
こういう事は初めてじゃない。
君には何故か心を読まれてるんじゃないかとすら思えるくらい、いつも先回りして助けられる。

でも今日は……

「…いや、ちゃんと聞いてほしいんだ」

「そう?」

「うん。まだちょっと頭の中ぐちゃぐちゃなんだけど…」

「いいよ、ゆっくりで

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【ss】嘘つきの独り言

「大丈夫だって。いつでも頼ってよ。
俺とお前の仲じゃん、気にしないで何でも相談してくれていいから。なっ?」

ついさっきの俺の言葉。

また心にもない嘘を並べてしまった。

本当は友達なんて思った事ない。
好きなんだよ、ずっと。
お前を悩ませてばっかりのムカつく野郎と付き合い始めるずっとずっと前から。

……気付くはずないよな。
嘘ばっかりついて、うまく誤魔化して、
お前との関係が壊れないように、

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【ss】以心伝心

どうしてコイツなんだろう……

端から見れば普通に仲は悪いと思う。
性格は真逆だし、何よりコイツは鋭い。
普通なら騙されてくれる所をめざとく見つけては文句をつけにくる。

いわば天敵。

ほら今だって……

「なんでそうやってクール気取るかなぁ」

「何がだよ?」

「今の。誉められて絶対嬉しいくせに。
聞こえてない振りしてカッコ付けたでしょ」

………図星だからこそ腹立つ。

「カッコなんか付け

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【ss】偶然なんて待てやしない

雨が降ってきた。

幸い家を出る寸前にテレビで流れていた天気予報のおかげで傘を持ってきていたけれど、ほとんどのクラスメイトは知らなかったみたいで口々に落胆の声を上げている。

そりゃそうだ。

今朝、家を出る時には雨なんて想像もしないくらいに晴れていたんだから。

「ねえ傘持ってきた?」

「あるよ」

「えー、いいな。入れてよ」

「でも俺、部活あるし無理じゃん」

「そっか。じゃあ仕方ないね」

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【ss】不器用男子

「今日だいぶ頑張ってたじゃん。大丈夫なの?ガス欠とか起こしてない?」

そりゃあ頑張っている君を見るのは嫌いじゃないけど。いつになく頑張っていたから、キャパオーバーしてないかな?って少しだけ心配だった。

「見てたの?」

「見てたっつーか、さすがにあれだけ忙しそうにしてたら目に入ってくるって」

「それなら手伝ってくれれば良かったのに」

「やだよ。……めんどくせぇ」

……そんなに巧くないんだ

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