獣化

僕が世界の敵になった理由(わけ)。

7.

「それでは、次のニュースです」
 オルゲルトが出勤するまでつけられている報道番組は、堅苦しくて面白くなくていつも気にかけたことはない。本当は子供向けのアニメチャンネルだとか、エンタメ系のバラエティーが観たいのに、と口を尖らせるユーリの意見に、ラスカーも概ね賛成である。
 けれど、ニュースはこれが一番早くて正確なのだと言う父親は、直接触れられないからこそ世の中の流れを知らなければならない、と

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僕が世界の敵になった理由(わけ)。

6.

 ぽぅ、と淡く蒼色に光った雪が、風もないのにひとりでに集まり形を作って行く。それは次第に大きくなり、ゆっくりと手足のようなものが生え、やがて仔犬のような生物になった。
「うわぁ……ラスカー、スゴい! 仔犬だ!」
「……うー……一応狼を作ったつもりなんだけど、上手く行かないなぁ」
 無邪気に歓声を上げる弟に苦笑して、ラスカーは一気に〈魔法術〉を練り上げる。
 こうして対象物を思った形に組み上

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僕が世界の敵になった理由(わけ)。

5.

「「セルゲイおじさん、しょーしんおめでとう!!」」
 玄関の扉を潜るなり浴びせられた複数の炸裂音に、セルゲイは普段の習性から、咄嗟に身体を丸めて致命傷を負うまいと急所を庇った。
 が、華やかに宙を舞った色とりどりの紙吹雪やテープに、ようやく彼は何事かを理解したらしい。虚を突かれたような驚き顔を綻ばせ、照れ臭そうに後ろ頭をかく。
「はは、ありがとう二人共。撃たれたのかと思って、ビックリしちま

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僕が世界の敵になった理由(わけ)。

4.

 家に着くと、途端にボルシチのいい匂いが鼻先を擽った。食欲をそそられ、無意識の内にふんふんと鼻が動く。母アリョーナの得意料理であるそれは、双子もオルゲルトも大好物であった。
「ただいま、母上!」
「今日ごちそう!?」
 バタバタと足音高くリビングに飛び込むと、まだキッチンに立っていた母は笑顔で二人を出迎えた。
「お帰りなさい。お疲れ様、二人共外は寒かったでしょう?」
 ぎゅうっと抱き締めら

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僕が世界の敵になった理由(わけ)。

3.

「えへへー」
「偉い?」
「偉いさ、この数値ならもう実戦でも通用するよ」
 割って入った同僚の声に、オルゲルトは少し顔をしかめて背後を振り向いた。
「セルゲイ、あんまり甘やかさないでくれ。それに、俺はこの子たちに自分の力の使い方や制御方法を覚えて欲しいだけで、別に軍属して欲しい訳じゃあない。この子たちの未来は自分で選べる、そう思ってる」
「だとしても、十二分に優秀だってことさ。さすがはオル

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僕が世界の敵になった理由(わけ)。

2.

 獲物であるラスカーの認知から起動、攻撃に移るまでものの三、四秒。
 普通の人間であれば、それを察したとしても咄嗟に初撃を躱して体勢を立て直し、なおかつ反撃に転ずるなどと言うことはほぼ不可能だろう。ペイント弾をもろに浴びて、ジ・エンドだ。
 しかし、ラスカーは飛び退って距離を取りたいところを逆に懐へ飛び込み、銃身を一閃した。べきりと紙細工のように折れ曲がるそれには目もくれず、返した掌を容赦

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僕が世界の敵になった理由(わけ)。

1.

 パシュッ! ヒュン……っ、パシュッ!
 間断なく鼓膜を打つ、消音器(サイレンサー)付きの全自動(フルオート)機銃が弾丸を射出する微かな音と、それが空気を切り裂いてこちらへ迫る気配。
 無論鋼の実弾ではなく、訓練用のゴム製ではあったが、同じ弾速が出るように調整されている。当たればそれなりに痛くはあるだろうが、怪我をするほどではない。もしかしたら痣くらいは残るかもしれないが、数時間もせず消え

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閃光のバレット3

四.覚醒18

 黒髪切れ長一重の緑眼、顔立ちは東洋系。記憶力はよい方だと自負しているが、閃光は初見だった。無論狙われる理由は思い当たり過ぎて枚挙に暇ないが、今男が殺気を向けていたのはこちらではなくミツキの方だった。
「ダミアンさん……何で、ここに……」
 同じように一応麻酔銃を手にはしていたものの、撃つ気はないのだろう。目を丸くしたミツキがその名を呼ぶ。
「ダミアン? お前……パリスの時の文保局

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閃光のバレット3

四.覚醒17

「……あのね、」
「悪かったな」
 言いかけた言葉を封じるように先手を打つ。
「怪我とか……その、してねえか? 薄っすらとしか覚えてねえんだが……随分酷ぇ真似をした。詫びてどうなるでもねえけど……すまねえ」
 今ここで、ミツキが踵を返すなら、まだ間に合う。彼女を傷つけずにすむ。手にかけ失くす恐怖から逃れられる。ミツキが拒んでくれたなら、諦めることが出来る。
――駄目だ、それじゃ駄目

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閃光のバレット3

四.覚醒16

――何やってんだかな……
 外へ出て生温い風に当たりながら、自己嫌悪の溜息を吐く。
 誰一人例外なく近づけまいと決めたのは自分のはずなのに、不用意に踏み込んで来るミツキの熱がいつの間にか嫌ではなくなっていた。貴方の作った壁など知らないとばかりに、頑なに他人を拒絶する柔らかな部分に触れられるのが、気持ち悪くはなかった。
 懐を探り、煙草をくわえて火をつける。
 立ち上る紫煙が乱れた訳

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