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あとで読む・第37回・土門蘭『死ぬまで生きる日記』(生きのびるブックス、2023年)

3か月前

その川の水は凄く濁っており、夏の熱気を吸って悪臭が漂っていたが、彼は構うことなくその傍を歩いていった。人けが少なくて、ひとりになりたがる彼にとってはそちらのほうがよかった。(土門蘭、2019)

「もう戦争もとっくに終わったのだ」 その言葉が、また耳に聴こえた気がした。 (土門蘭、2019)

涙で濡れた目に、星や月の光がにじんで見え、なんてきれいなんだろうと彼は思った。(土門蘭、2019)

私は戦闘兵から退き、そのまま事務として軍隊に残ることになった。 銃を握れなくなった手にも、ペンを握ることはできる。持ち方を変えると、字も見慣れないものになった。新しくあてがわれた筆跡で、求められた文書を毎日書いた……(土門蘭、2019)

彼はふとため息をつき、それから振り返って、坂の上からの景色を見た。(土門蘭、2019)

誰もまだ起きていないこの時間が、一番寂しくないと思う。この時間の自分は、本当に普通の自分だと思う(土門蘭、2019)

海が太陽を吞み込む瞬間、空と海の境目は、紫と金色が溶けて入り混じるような色を発した。すっかり太陽が沈んでしまうと空は寒々しくなり、幼い彼は夏でも身震いをした(土門蘭、2019)

彼女のお腹の中には、今もひとり赤ちゃんがいる。 お腹はぱんぱんに膨らんで、近所の人は「またなんね」と言って笑っている。 もう、おめでとうも言わない。(土門蘭、2019)

猫はすでに死んでいて、からだを固くして丸まっている。彼は、むき出しになった猫を抱き上げて立ち上がり、もう一度港のほうを眺めた。そして、徐々に脂が抜けつつある灰色の毛にてのひらをあてながら……(土門蘭、2019)

あとで読んだ・第37回(後編)・土門蘭『死ぬまで生きる日記』(生きのびるブックス、2023年)

3か月前