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SNSによって分断する社会

 近年、日本社会における左右の分裂が拡大しているように思える。自衛官が左派系議員に罵声を浴びせたり、「非国民」「売国奴」といった戦時中に多用された言葉がネットを中心に復活している。その一方、昨今の森友・加計問題をめぐっては左派系の市民団体が国会前に詰めかけて熱狂する光景もみられる。片方では右傾化が、もう片方では左傾化が進んだ、中間層不在の社会になりつつある。

 社会が比較的一体となって政治的メッセージを発信していた60年安保闘争の時代とは異なり、各派がそれぞれ盛り上がりを見せ両極化しているのだ。

 この対立の要因として、インターネット上におけるコミュニケーションの特性に着目し、社会の分断という問題の原因をあぶり出したいと思う。


1. エコーチャンバー効果とは

 インターネットにおけるコミュニケーションの特性の一つに、エコーチャンバーという効果がある。ここでは、この効果の概要と、どのように社会の分断を誘発しているのかについて説明したいと思う。

 作家の佐々木俊尚氏は著書で、現代社会を「一億総キュレーション社会」と表現している 。これは、インターネットを利用すれば、誰でも不特定多数の他人に対して自分の意見を表明し拡散できる現代社会を形容している。例えば、日本でも多くの人が利用するTwitterは、利用者が自分の好きなアカウントのみをフォローすることで、自分の興味に即したタイムラインを構築することが出来る。ある利用者が政治に関する情報をTwitterで収集しているとしよう。この利用者は、共感できる意見を多く発信する一般人のアカウントをフォローするだろう。すなわち、自分と似た思想信条を持った人の投稿が、タイムラインに多く流れてくるのである。このように、現実社会には多種多様な意見が存在するにも関わらず、SNS上では似た意見を持つ人間が繋がりを深め、同じ意見が似た思想の人間間で共鳴しあうことで、あたかもその意見が世間の多数派であるかのような錯覚を引き起こす。これを、エコーチャンバー(共鳴室)効果と呼ぶ 。

 実際に、エコーチャンバー効果を補強する研究がある。世界中で多くの利用者を持つFacebook上では、友達がシェア(拡散)する記事によって、自らの目にする記事も異なってくる。研究によれば、Facebookにおいて、保守派の友達がシェアする記事のうちイデオロギーが横断的な記事の割合は35%、リベラル派の友達がシェアする記事ではわずか24%にとどまることが分かった 。ここから、特定の思想を持つアカウントばかりと繋がれば、自ずと偏った記事ばかりが目に入ることが実証される。


2. SNSのアルゴリズム

 エコーチャンバー効果は、利用者が主体的にフォロワーや友達を選ぶことでSNS上での共鳴効果が発生することである。しかしSNSには、利用者が主体的に友達を選ばなくても、自動的に自らの意見と似た投稿が表示される仕組みが備わっている。それが、SNSのアルゴリズムである。

 例えば、世界最大の利用者数を誇るFacebookは、利用者の好みに応じて、表示する投稿を操作していると公表している。この発表によれば、一つの投稿に対して、誰が投稿したか、その投稿者は過去に否定的コメントを多く受けているか、などの複数の要素が自動的に勘案され、閲覧者の嗜好性に基づいて、その投稿がスコアリングされる 。ニュースフィードには、スコアの高い順に表示されるため、必然的に閲覧者の好みそうな投稿ほど目につきやすくなるのだ。これはTwitter上でも採用されている。


3. まとめ

 このように、SNS上においては、友達関係とSNSアルゴリズムによって、利用者の好む投稿が目につきやすくなる。政治に話を限定すれば、閲覧者の持つ思想に近い投稿ばかりが目につくということだ。インターネットを用いて情報収集をする有権者が増えた現在、ネット上で触れる情報が偏ってしまうという事実は、社会の分断に深く関連していると考えられる。

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