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確かなものはぬくもりだけ
おばあさんはよく転んだ。歩いては転び、転んでは歩いていた。家に帰るといっては、お気に入りの鞄と杖を持ち、もはや叶うことのない願いを胸に、所在なさげにただ歩いていた。繰り返す転倒の中、試行錯誤の上、様々な対策を行っていくが、それでもおばあさんは転び続けた。その歩いていく様は、人として僕らに何を問うていたのだろうか。
やがておばあさんは転ばなくなった。いや、転べなくなったというほうが適当だろう
子供だましと侮るなかれ
時に幼稚で子供だましと揶揄されることもあるレクリエーション。だがその威力は計り知れない。入居してから一度も笑うことのなかったおじいさん。寝たきりの生活を余儀なくされていたが、少しずつ離床時間を増やし、トイレに通い、普通のお風呂に入ることで、寝たきりから脱却し、穏やかな生活を取り戻していった。しかし、依然として笑顔をみせることはなかった。
そんなおじいさんを、ダメ元で風船バレーに誘ってみた。
つまづいて転んだ時は
ある日の明け方。職員から百歳を超えるおばあさんがベッドから滑落したと連絡が入っていた。
おばあさんは一人で立つことがほとんどできない。にもかかわらず、おばあさんは調子が良い時は一人で立ち上がろうとする。
当然、立つことはできないので、転ぶことになる。今回も恐らく、立とうとして転んだのではないかということだった。
おばあさんは助けにきた職員に対して、懸命に何かを話しかけ、しきりに大丈夫だとい
「当たり前」が持つ力
入院生活が長かったおばあさん。寝たきりとなってしまい、自ら身体を動かすこともなくなり、お医者さんからは「もう長くないでしょう」と言われ、施設に入居してきた。
ご家族さんも半ば諦めている様子で、病院でのこと、お医者さんからそう言われたことを話してくださった。
さぁそこからが僕らの出番となるのだ。
「おばあさん、これからよろしくお願いします!」
差し出された手を、力強く握り返すおばあさん。
ルール・オブ・ザ・ワールド
「そんなもん飲むかー!」
「いらん言うとるやろが!!」
おじいさんは薬を飲まない。生死に関わる薬ではないが、それでも必要なものなので、できたら飲んでもらいたいが、やはりなかなか飲んでくれない。
あれやこれやと工夫してみるが、上手くいくことは少なかった。
そもそもおじいさんは介助に対して拒否的態度を示すことが多い。それは僕らへの拒絶というより、介助される自分への葛藤からではないか。介助を受け
ほんならお風呂に入れてみて
おじいさんは片麻痺となり、寝たきりの状態で入居してきた。ほとんどの介助を拒否していて、ベッドで寝てばかりの生活を過ごしていた。
おじいさんは憤っていた。今自分が置かれている状況を、一体誰のせいにしたらいいのか。本当は誰のせいでもないと気づきながらも、折り合いのつけることの出来ない感情に、自分を見失いつつあったのだ。
ここから日常業務を通じて生活を共に作り、僕らとの関係性を育んでいく。
そう言
のんびりまったり心配されたり
施設は生活の場だ。そんな生活の場である施設では、日夜そこで業務を遂行する職員が、バタバタと走り回っている。こなさなければならないことが多すぎるので、ある程度仕方ないことなのかもされないが、果たしてそういった場で人は落ち着けるだろうか。
「〇〇さーーん!!おトイレこっちー!!」というような叫び声が聞こえたり、あちらこちらと同じ場所を行ったり来たりする職員。轟音をたてる配膳車。なかなかに騒がしい毎