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シュールと思った科学者(石黒浩氏)は壮大な夢を持ち、やはりシュールだった


先日、河野大臣がご自身のアバターロボを遠隔操作して実証実験するというプレスリリースがあった。

この少し前には、イーロン・マスク氏もこんな発表を!


これらのニュースを見て思い出したのが、

Styxの”Mr.Roboto”   どもありがっとミスターロボット🎵


ではなく(古くて若い方にはわからないだろう笑)、

以前購読した「ロボットと人間 人とは何か(石黒浩)」である。
著者は、この河野大臣による実証実験を担当されている方である。

割と前になるが、NHKの番組で石黒教授を初めて拝見した時は、失礼ながらちょっと…いや、かなり怪しい臭いを感じた。

巻頭にも写真を載せているが、初めてこの方をテレビで見たのがこの絵面だったからである。

ご自身のアンドロイドとともに。う~ん笑

初見では、NHKに出していいの?くらいに思ったのが正直なところである。ただ、それは見た目だけ(個人の感想です)のことであり、石黒氏はロボット研究における業界の第一人者であった。
もちろん、だからこそ前述の実証実験を任されるのである。

石黒 浩 (いしぐろ ひろし、1963年10月23日- ) は、日本のロボット研究者[2]・知能情報学の専門家。工学博士。大阪大学教授、国際電気通信基礎技術研究所石黒浩特別研究所所長[2]、国立情報学研究所客員教授、AVITA株式会社代表取締役CEOをそれぞれ務める。二足歩行ロボットや外見や動作が人間に酷似するアンドロイドなどを研究する。石黒が参加する産学協同の「チーム大阪 (Team OSAKA)」は、ロボカップ世界大会のサッカー競技ヒューマノイドクラスで2004年から2007年まで優勝する。滋賀県高島市出身。

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

人にそっくりなロボット(正確にはアンドロイド)に違和感を持つ方は多いのではないだろうか。
もし自分のアバターが目の前にいたら、感動よりも気持ち悪いに違いない。そして、河野大臣が語るように「予算委員会で代わりに答弁する」ことができたら、一瞬便利なようにも思うが、そうなると自分の存在って何だろう、という気持ちになるかもしれない。
同様の話が、石黒氏本人よりも自身のアンドロイドの方が人気が出てしまったことで「自身のアイデンティティ」について複雑な思いになったエピソードが本書でも語られる。

これは思ったより深いかも💦


この投稿は本の解説書ではないので、自分として学んだことを2点あげる。

(1)「人間を知る」の意味・意義を知る

ロボット研究にも当然目的がある。
石黒教授は、人間と同じ機能を持つロボットを作ることで「心って何だろう」のようなことを解明しようとしている。そういえば、「心」ってどこにあるの?やっぱり脳の中?そもそも「心」って何?
つまり、自律性や心、脳と体の関係といった人間独特の機能を解明してからロボットを作るのではなく、仮説を立ててロボットを作り、実証実験を経て「人間」を解明しようというのである。
(正確に言えてないと思いますが、ご容赦を)
このようなアプローチを「構成的方法」と言うのだそうだ。

スマホやインターネットのようなイノベーションは、この「構成的方法」で生まれている。

理屈ばっかり考えているより、まずやってみろ!ってことかな(^^♪

(2)「ロボット社会の実現」それは、

   「人間がどのように進化したいのか」

   「人間としての生きる意味」の追求である


そう、(1)とも絡むが、教授はロボット研究を通じて、このような思いで「人間の未来」を創造しようとしている。この夢に向かって研究をすすめる熱意に圧倒され、本書を一気に読みすすめるに至った。

最後に、遠い未来では「人間は無機物から生まれ、無機物に戻ろろうとしている」と話されているが、ここは正直まったくピンと来なかった。
人間が無機物・・・?
このあたりは、固定観念のかたまり且つ文系脳の私の考えの及ばない世界だろうか・・・

数学・物理といった理系科目を極力避けて生きてきた私であるが、本書は全体として私でも十分に興味を持てたし、一定の理解ができた。
何よりも「AIやDXを学ばねば」のような強迫観念的な学びではなく、「夢」「面白そう」「ユニーク笑」のような興味で入れれば、楽しく学ぶことができそうだ。

いずれにしても、先進的だからこそ倫理上の問題を含めた課題や批判も多いだろうが「まずやってみる」ことで日本がこの分野で先導していくことを期待したい。この手の話は「デメリット」の話ばかりしてイノベーションの芽を摘む風潮を感じるので・・・
これからも石黒教授に注目です。

エリカ(アンドロイド)と石黒教授
石黒教授は本物笑

▼ 以下、要旨抜粋 ▼

🔹ロボット研究から学ぶ人間の本質
・ジェミノイド(遠隔操作アンドロイド) 自らモデル
 声+唇/頭/体の動き、感情を推定し表現
・自分のアイデンティティとは何か?(ジェミノイドの方が人気)
・未来は予測するものではなく、創造するもの
 (実現に向かって活動することの方が大事)
・多くの発明は構成的方法によってもたらされている(経験/ひらめき)
 ex)スマホのデザイン、インターネット
・基礎技術ー知能/身体性/マルチモーダル統合
・意図や欲求(自律行動)→意識→社会関係
🔹対話ロボットとロボット社会
・DLにより実用化可能性増大(音声/画像認識技術)
・家庭内/ホテル/語学教師/高齢者対話/自閉症/レストラン
 ロボット社会の実現へ
🔹アンドロイドの役割
・筋肉・皮膚が課題→人工にできれば世の中変わる
・偉人アンドロイド(夏目漱石、渋沢栄一)
 アイデンティティのピーク(何歳の時)をどこにするか課題
 人々の生きる目標、人間社会を牽引する可能性
・三原則
 ①社会的人格表現 ②プライベート人格配慮 ③ポジティブな想像と影響
🔹自律性/心/存在感/対話/体/進化とは何か?
・自律対話アンドロイド「エリカ」
 初対面の人と5~10分の自然な会話(対話者の反応を見て対応)
・移動型子どもロボット「イブキ」
 社会養育ロボット学(人と関わり知識や経験獲得)
・心ー発話や動作で感じ合う、神経回路によってもたらされる(仮説)
・対話ー経験の共有、自分たちで追体験すること(仮説)
・脳と体はそれほど密接につながっていない→生身の体から解き放たれる
・人間は無機物から生まれ無機物に戻ろうとしている
🔹人間と共生するロボット
・誰もが自在に活躍できるアバター強制社会の実現
・実生活を多重に仮想化→仮想化現実世界
・どのような人間に進化したいのか、人間の可能性を探求し人間を理解
 =人間としての生きる意味

最後まで読んでいただき感謝です。
購読したのは半年ほど前で、言語化したいと思いつつもできていなかったので、実現できて満足です。

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