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愛を犯す人々 / 大人の領分

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恋愛上手なんだか恋愛下手なんだかわからない、強くて弱くて美しい人たちの、幸運と幸福の百貨店。
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蓮という人(の、素描) 下

【あわせて読みたい:これは短篇『大人の領分⑤澪里』の付録です。シリーズラストにつき特盛!なにやら複雑な事情を感じさせるこの人に、さまざまな角度から光をあてるこころみ。こうしてやっと蓮に光が当たります、破壊的な可愛さと蠱惑的な性格の絶妙なバランスがもはや特殊能力の域に達しています、蓮はみんなのヒーローです、大人な蓮の、こどもの国。ほか】 ずいぶん遠い道のりでしたが、頭の痛い配線を力の限りほぐして、とうとうここまで来ることができました。 蓮という人(の、素描) 上 蓮の母・

蓮という人(の、素描) 中

【あわせて読みたい:これは短篇『大人の領分⑤澪里』の付録です。シリーズラストにつき特盛!なにやら複雑な事情を感じさせるこの人に、さまざまな角度から光をあてるこころみ。の、中巻。タカラくんという人(の、素描)、人は見た目によらないという驚きを数回経るとタカラくんに直接会えます、繊細な奇人・ハルカさん、柚希さんの普通力、続きます ほか】 さて…タカラくんタカラくん言ってるタカラくんとは一体、何者なのか? 美青年? ただの好い人? 遊び人? 仕事できる人? 優しい人

蓮という人(の、素描)  上

【あわせて読みたい:これは短篇『大人の領分⑤澪里』の付録です。シリーズラストにつき特盛!なにやら複雑な事情を感じさせるこの人に、さまざまな角度から光をあてるこころみ。の、上巻。穂南海という人(の、素描)、誰が悪い訳でもないんです、頑張り屋さんの中にはたまに結果が出すぎて結果的に苦しい思いをする人がいます、答えは自分で出すものです、続きます ほか】 蓮くんの素性というのは実は、よくわかっていません。実母は教育系NPO運営者、現在東欧で活動中の穂南海さんでおそらく間違いないと思

柚希という人(の、素描)

【あわせて読みたい:これは短篇『大人の領分⑤澪里』の付録です。なにやら複雑な事情を感じさせるこの人に、さまざまな角度から光をあてるこころみ。裏切られたような気分になるほど「普通」に暮らしていますが踏み込むと混線具合に頭が痛くなります、タエコさんが手にしている自由で絶対な愛、素晴らしい人です、柏木くんは毎回感想を持っているようです、大人な柚希の、こどもの国。ほか】 柚希さんは得体がしれない感じがします。しかしながら、どこまでも金太郎飴のように、一介の子連れインテリアコーディネ

澪里という人(の、素描)

【あわせて読みたい:これは短篇『大人の領分⑤澪里』の付録です。なにやら複雑な事情を感じさせるこの人に、さまざまな角度から光をあてるこころみ。傷つく自分が悪いと思っちゃう人っているんですよね、生き抜いて大人になるまでには色んなことがあります、頑張ってればだんだん夜が明けてきます、友情というのはかくも複雑で困難でかけがえのないものです、大人な澪里の、こどもの国。ほか】 なにも、シリーズ最後にこんな切ない主人公、持ってこなくてよくないか…? って、きっと私がいちばん思ってますよ

大人の領分⑤澪里(みおり)

人間の関係というのは、どんな関係でもせいぜい、ひと言で済むものだ。本人。血縁。配偶者。隣人。同僚。恋人。けれど、それ以上のことを言おうとすると突然、端の一本を引いたとたんに見苦しく絡まって手に負えなくなる、頭の痛い配線のように、ありとあらゆる背景が渾然一体となって溢れ出てきて、どこからどう話したものか、さっぱりわからなくなってしまう。どんな関係ですか?…ひと言で答えないとしたら、あとは長編小説でも編むか、そうでなければ意味深に微笑んで黙るかだ。そして…澪里が、あれ、苗字違

ユキという人(の、素描)

【あわせて読みたい:これは短篇『大人の領分④佳奈』の付録です。なにやら複雑な事情を感じさせるこの人に、さまざまな角度から光をあてるこころみ。雲のように風のように、おおまじめに役者です、謎めいた世界、自然としての人間、或る愛の歌、大人なユキの、こどもの国。ほか】 ユキにはちゃんと和征という立派に普通な名前があるんですが、芸名の下の名前が悠希(ゆき)なので、こちらの名前で呼ばれたがります。キレイオヤジ系バイスタンダー俳優で、ドラマや映画にも一応出てまして、メガネをかけた融通の効

佳奈という人(の、素描)

【あわせて読みたい:これは短篇『大人の領分④佳奈』の付録です。なにやら複雑な事情を感じさせるこの人に、さまざまな角度から光をあてるこころみ。欲望まみれにしか見えないけど欲のない静かな生活、罠を張ってもいないのにホイホイかかります、普通の感覚で接すると困惑させられます、結局彰さんしかいなかったようです、こっちの水は甘いよ、大人な佳奈の、こどもの国。ほか】 佳奈は小規模設計事務所で電話番やら書類作成整理やらをしている女性です。設計事務所の事務の傍ら、というのも電話はあまり鳴りま

大人の領分④佳奈(後編)

◆◇◇◇前編◇◇◇◆ ナツメくんは思ったよりずっと優しくて、意外と背が高くて、そして賢い大学に通っている、大学二年生だった。 カナが台本を音読してあげると、体の奥から出る、身長や体格からはちょっと想像のつかない、低い、よくとおる声で、たどたどしくカナの言葉を復唱して、すぐに全部、頭に入れてしまう、不思議なユキ。 ◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆ ----------------------------------- 3月6日のことを話さずに済ませるのと同じで、ユキには話さないけ

大人の領分④佳奈 (前編)

小説にはよく、出会ってまもなく「セックスしましょう」と言って主人公を誘う、他の男性にも同じことを言うだろう、他の男性にとっても同じように魅力的だろう、女の人がいる。大抵の場合、主人公はその女の人とセックスして、その女の人はまもなく、いなくなってしまう。 ナツメくんにセックスファンタジーについて質問したとき、返ってきたひと言は、一瞬でカナの男性観を固めてしまった。まるで、過冷却された水が衝撃で、たちまち氷になるような仕方で。あるいは、卵子が受精して、一気に受精卵になるみたいに

彼と彼女に関する覚書き

【あわせて読みたい:これは短篇『大人の領分 番外 彼と彼女』の付録です。なにやら複雑な事情を感じさせるこの人に、さまざまな角度から光をあてるこころみ…を、一回お休みしまして、この短編にまつわる書き手としての感想など。この人たちはそれなりに手練れです、こんにちは世界製作委員会はいつも大真面目に振り切り、こんにちは世界はその指示に振り回されています、無個性という個性、フェニルエチルアミンとは恋愛初期に大量発生するいわゆる恋愛ホルモンです、私の好きな人(という、妄想)。 ほか】

大人の領分 番外 彼と彼女

金曜の夜に「友達と会食」の予定を入れた、と彼女から連絡が入る。仕事の合間に店を検索する。前回は和食だったから今度はフレンチかイタリアンにしよう。食事はせっかく選んでも、前だと気が急いて味がしない。今回は後にする。コースがあった方が安心だな。そのうち、アラカルトでも失敗しないくらいにはなりたいけど、今のところ宿題。味はさっぱりめが好み。野菜料理に惹かれがちだったな。器にこだわった店。終電まで移動の時間はないから、閉店が遅いだけじゃなくて、食後にコーヒーがゆっくり飲めるのはマスト

敦という人(の、素描)

【あわせて読みたい:これは短篇『大人の領分③薫』の付録です。なにやら複雑な事情を感じさせるこの人に、さまざまな角度から光をあてるこころみ。魔法使いたち、お酒と裏話はほどほどがいいのです、そんな愛情ありなんですか、秘すれば花、簡単な語彙でできる難しい話、大人な敦の、こどもの国。ほか】 もうあんまり、書くべきことはない気がするので、適当に流して行こうかな。 敦はフロントエンド系のエンジニア。案件を複数同時に抱えながら自分の責任とペースで仕事を進めるタイプの職場で、まあまあ気に

詢という人(の、素描)

【あわせて読みたい:これは短篇『大人の領分③薫』の付録です。なにやら複雑な事情を感じさせるこの人に、さまざまな角度から光をあてるこころみ。恐いの?優しいの?、放蕩息子の帰還、結構乙女ちゃんです、槙野くんという人のごく簡単な素描、大人な詢の、こどもの国。ほか】 詢は、その強烈な外見と凶暴な性質に反して、性格は大変、物静かでシャイな人。超絶オスな部分があって、激しい破壊衝動がある一方で、なにかを育むことを大事にする部分があり、繊細なものをとても愛している、ちょっと複雑な人です。