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2000スキ記念式典! 分冊でお届け(5)

【あわせて読みたい:これは付録付き一話完結連作短編集『大人の領分』の完結記念&こんにちは世界アカウント2000スキ記念エッセイの続きです。大人な人々の大人たる所以、沈黙の中で世間は回っています  ほか】

(1)開会    (2)薫・ユキ
(3)茅瀬・蓮    (4)敦・佳奈
(6)晴人・梨恵


≫≫≫澪里が聴いている音声(詢について話す敦と薫)≫≫≫

敦:詢って女の人にもモテるけど、ホームでは本当、お姫様なんだよね。合コンで一人勝ちする女の子見たことある? あんな感じで、黙って立って微笑みかけるだけで、なぎ倒すようにみんな恋に落ちる。めちゃくちゃモテる。今は薫さん一本だけど、そういう恋愛の基本スタイルは引きずってて、たぶん、してもらって嬉しかったことや、してほしいことを、してあげてるんだと思うよ。うわべでは、詢は結構、それで満たされた気持ちになるみたいだけど、カラダのほうはね…分かるよ。詢が薫さんにしてあげられることと、薫さんが詢にしてあげられることの、バランスが取れてないんだ。まあこれは、お互いにね。二人ともそこには気づいてて、けど、バランスを取るために相手に変わってほしいとは全然思ってない。俺は二人のそういうところ、大好き。それで…思ったんだよね、俺がこんなに好きな二人が、どうして、全てを手に入れちゃいけない? 詢しか…見えてなかった頃は、独り占めすれば幸せになれるって信じてた気がするな。詢は俺にだってお姫様なんだ。ものすごくそそる。あんなの、そそられないわけがないでしょう? けどそれって、ゴールしたら次のゴールが必要になる、ただの恋愛ゲームなんだよね。俺はもっと、存在論的なところで必要とされたいし、俺にしか与えることのできないものを与えていたい。薫さんが来てからは、俺には、俺じゃなきゃ詢に与えてあげられないものがある。ただ体を与えてるんじゃないんだ。俺にしかできない、俺という存在の与えかたなんだ。それは俺が生きるうえで、すごく、幸せなことなんだよ。
薫:え…詢ちゃん…? 詢ちゃんはね、ライオンみたいなの。じっと見つめられると、あーこのまま食べられちゃうのかな、でもしかたないや、まあいいか…って思う。なにしてても、どんな格好でも、本当、生きてるだけで綺麗でね…だから、その、してる…時は、詢ちゃん、苦しいくらい、密着してしたがるんだけど…私はちょっと離れるような体位もすごく、好き。でも…やっぱり…一番好きなのは、始まる前にじっと見つめられたときだな。ぞくぞくして、動けなくて、もうダメって思うの。あんまり綺麗で。一回ね…私、いっぱい噛み付かれて、痣だらけになったこと、ある…詢ちゃんは、すごく…戸惑ってて、ずっと謝ってて、しばらく、私としたがらなかった。でも私、いいんだよって、言ってたし、本気でそう思ってた。今でも…難しいな、やっぱり、なんていうか、ふつうに、優しく、こまめにしてほしいって思う気持ちがないといえば嘘になるけど、詢ちゃんがもし、私のこと酷くしたいと思ってるなら、あれくらいなら、構わないの。詢ちゃんが手加減しなきゃ、優しくしなきゃって、思ってくれてるの、いつも、すごく伝わってくるし…だからちょっとくらい手加減できない日があっても、いいの。詢ちゃんが私のことすごく好きなんだってわかるから…あんまり頻繁には困るけど、やっぱりちょっと怖いけど…詢ちゃんが我慢しきれなくてぶつかって来てくれるの、なんだか嬉しい自分も、いるんだ…。


≫≫≫詢が聴いている音声(澪里ついて話す柚希)≫≫≫

柚希:澪里って、自分から何かしたいと思って、それをすることでそのまま喜ばれるようなセックス、してこなかったんだよね。だからいつも指示待ち。いっつも、求められてる基準があって自分はそれを下回ってると思ってて、相手の顔色を伺って、相手の幻滅に怯えてるの。それってすごく、寂しいことだと思うな。付き合い出してすぐにわかったけど、体は結構、色々なこと覚えてるのに、心の成長が全然、追いついてない。しかもそのことに自分では気づいてなくて、感じなきゃダメ、失敗しちゃダメ、うまくやらなきゃダメ、我慢しなきゃダメ、って、恋愛がダメダメ尽くし。なんだか、切ないよ。だって、恋愛って、うまくいかなかったり、おもしろおかしかったり、つまんなかったり、見苦しかったりするなかでも、どうしようもなく育つものでしょう。それでいいんだよって、澪里は言ってもらえなかったし、思われてもこなかったんだなと思うと…。ね。人生さまざまって、しみじみ思うよね。セックスのあと、澪里が私の髪を撫でながら、急に泣き出したことがあって、どうしたの?って訊いた。澪里は、嬉しくて、幸せだからって言ってた。好きで、好きで、セックスして、嬉しくて、幸せだなんて、そんなの普通のことなのにね。澪里には普通じゃなかったんだなって、なんだか、つらくなったんだ。澪里には、幸せな恋愛させてあげたいな。…って、やりすぎちゃうんだけどね。なんだろうなあ、澪里って、追い詰めてみたい気分にさせるっていうか…虐めたいわけじゃないんだけど、ギリギリまで頑張れるからついつい、追い込んで追い込んで追い込んで…って、そういうスリルを楽しんじゃうんだよね。ま、澪里も喜んでるから、いいことしてるんだと思ってる。うん。



続きます。


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柚希さんの追い込み漁(?)を読んでもう一度興奮したいかたは、こちら:



今日は明日、昨日になります。 パンではなく薔薇をたべます。 血ではなく、蜜をささげます。