見出し画像

オッペンハイマー

私にとっては、昨年の『君たちはどう生きるか』以来の映画館体験となりました。

2020年以降になって、この2作品しか劇場で観ていません。

今でも悔しいのですが、クリストファー・ノーラン監督の前作『テネット』も劇場で観ていません。

その他にも観たい映画はたくさんあったのですが…、コロナの影響は凄いなと改めて思います。

今回は劇場公開中の作品なので、あまり映画の内容には触れずに簡単にです。

とにかく、圧倒的な作品でした。

ノーラン監督の作品だといつものことですが、想定以上の衝撃と充実感と余韻を与えてくれます。

この映画はロバート・オッペンハイマーさんについて描いた作品です。

オッペンハイマーさんは今にも続く核兵器がある世界を作ってしまった人物です。

ここ数年の世界の情勢を見てもわかりますが、核兵器がない世界に戻ることはやはり困難のように思えます。

“1945年に生命を破滅させる能力を得て、人類は脆い存在になった。”

これは、クリストファー・ノーラン監督の意見ですが、やはり、今も世界は核兵器の脅威に晒されている状況だと思います。

映画『オッペンハイマー』は核兵器の起源、マンハッタン計画、そしてオッペンハイマーさんが軍拡競争や更に強力な兵器の開発に警告を発したことなどが描かれています。

核開発にのめり込んでいたオッペンハイマーさんが被爆地の惨状を知って苦悩し、水爆開発には反対する姿が描かれます。

ノーラン監督は、オッペンハイマーさんの半生を振り返ることで、その行動をとった理由を理解してもらうことがこの作品の真の目的だと言っています。

結局、オッペンハイマーさんの警告は正しく、現在は1万3000発の核兵器を9か国が保有している状況です。

1945年に広島と長崎を破壊した核兵器の80倍の威力を持つものもあると言われています。

ここ数年のロシアや北朝鮮など…あからさまな核による威嚇、挑発が目立ちます。

そういう所を見ていると、核兵器を発明した人たちが悪いというよりは、その後の核を持っている人たちの質の低下にこそ問題があると思います。

オッペンハイマーさんやマンハッタン計画に絡んだ人たちだけを責めるというのはどうなのか…なんてことも考えてしまいますし、どうしてこの作品が日本でなかなか公開されなかったのか…そういうところもずっと疑問でした。

そしてもう1つ…、核の傘という言葉があります。

核保有国が核兵器を持っていることを相手国に示すことで、同盟国に安全を約束することです。

例えば、アメリカは日本やヨーロッパ諸国、韓国、オーストラリアなどに攻撃があった時に、アメリカが攻撃された時と同じように仕返しをします。

そして、核兵器を持つ国同士は敵対していたとしてもお互いに攻撃をしない…冷戦の時代も経験しました。

日本では核兵器を“持たず、作らず、持ち込ませず”とした非核三原則があります。

日本の安全保障戦略の骨格になってきました。

戦後、日本が軍事大国にならないで、平和国家の道を歩む中で重要な役割を果たしてきました。

唯一の被爆国として核廃絶を目指す日本の立場を国際社会に示すという大きな意義も持っていました。

それでも、日本は、核兵器のない世界を目標にした核兵器禁止条約には反対しています。

これだけ核兵器を扱う映画などに反対意見などが多数あるのに、どうしてでしょうか…。

日本が核の傘にいるからだと考えられます。

日本は世界で唯一の被爆国です。

広島と長崎に投下された原爆は、両市合わせて21万人以上の人の命を奪いました。

しかも、生き残った人々も原爆による健康被害である原爆症によって苦しみました。

SDGsの目標16に“平和と公正をすべての人に”があります。

戦争や紛争などの暴力や、暴力による死を減らすことを目指しています。

第二次世界大戦は、日本を含む世界各地で多くの人の命を奪う凄惨な戦争でした。

中でも、広島や長崎の原爆投下はたった1発の爆弾で直接戦闘に関わっていない21万人以上の市民が一瞬にして虐殺されたという点で特異な出来事だったと言えます。

核兵器が人の命をどれだけ簡単に奪うものかは、広島や長崎の事例を見れば明らかです。

それでも、世界の大国は核兵器を保有し続けています。

そればかりではなく、最近はロシアのウクライナ侵攻では核兵器使用の可能性を口に出して威嚇したりもしています。

第二次世界大戦を経験していない世代だからでしょうか…子どもの玩具遊びのような感覚で言葉に出してしまっています。

かつてのように、核兵器を持つ国がアメリカだけではなくなったからには、核兵器の使用は相手からの報復を呼び、互いの国家消滅に結びつきかねません。

核兵器の保有は自国の安全保障の為に必要という考え方もありますが、制御不能になった核兵器の応酬は相手国だけではなく自国も…世界をも滅亡させてしまいます。

核兵器の使用やそれに繋がりかねない地域紛争が激化しないように各国の自重が必要なのではないかと思います。

日本が被爆国としての立場と核兵器禁止条約に反対していることとの間には大きな矛盾があるように思いますが、今の日本は戦争に前向きになっていると理解して良いのかもしれません。

イギリス、イタリアと共同開発する次期戦闘機の日本から第三国への輸出を解禁する方針を閣議決定しました。

国家安全保障会議(NSC)で武器輸出ルールを定めた防衛装備移転三原則(防衛装備品…武器や防弾チョッキなど…の輸出や、海外への技術移転のあり方を定めた政府方針)の運用指針を改定しました。

2023年の弾薬や弾道ミサイルなどの輸出緩和に続く、高い殺傷能力を持つ戦闘機の解禁ですから、武器輸出を抑制してきた日本の安全保障政策は大きく変わることになるのでしょう。

平和主義を貫いてきた国が、紛争助長の恐れもあるこの決断をほんの一部の人たちでしてしまったんですから、時代は変わったということです。

変わったというか元に戻りつつあるというか…。

いずれ、日本でもテロが頻回に起きる時代が来るのかもしれません。

ただの想像ですが…映画の観過ぎでしょうか…。

現在は高齢者中心で政治をしていますが、数年後には世代交代をしているわけで、戦争モードの政治を次の世代が引き継がなきゃいけないとなると大変だなぁと思います(他人事のように書いていますが、私には全く関係ないことなので…)。

一部の政治家の判断で起きる事に私のような平凡な国民を巻き込まないでください…という話です。

戦争なんてどう考えても怖いわけで、私のような凡人はそんなの体験したくないわけです。

中学生の頃に『シンドラーのリスト』を観て、大学生の時に『プライベート・ライアン』と『シン・レッド・ライン』を観たことで、戦争は怖いものと植え付けられました。

その後、『ハクソー・リッジ』と『ダンケルク』を観て戦争の恐ろしさを再確認しました。

戦争なんて怖いでしょ…やっぱり映画の観過ぎかな?

だんだん話が逸れてきたので、この辺で。

『オッペンハイマー』は、一人の人物の葛藤や苦悩を描いた映画です。

この映画の中には善人も悪人もいません。

オッペンハイマーさんがした選択について、自分だったらどうするか考えてみるのも良いと思います。

映画の魅力は、自分とは考えや立場が全く違う人の考えや思いがわかるという一面にあります。

ポップコーンを食べたりビールやジュース飲みながら気楽に観て、何かを感じ取るというのも良いと思います。

これは映画です。

観たければ観れば良いし、観たくないなら観なければ良い…ちゃんと選択の自由がある…あぁ~ステキ♪

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?