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71.ケアマネージャー

2025年、約800万人いる団塊世代が後期高齢者(75歳以上)になります。

国民の5人に1人が後期高齢者になる2025年に向けて介護サービスや医療サービス、その他の生活に必要なサービスと利用者やその御家族の架け橋…つなぎ屋になるケアマネージャーの役割は今後ますます大きくなると考えられています。
 
しかし、人員はなかなか増えていないのが現状です。
 
2018年に受験資格が厳格化(保有資格による試験免除科目の廃止、国家資格保有者又は相談援助業務に就いている人で実務経験が5年以上必要)されてからは合格者が激減して、その年の合格率は10.1%と過去最低を記録しました。

2021年には23.3%になり過去10年では最高値になりましたが、2022年は19.0%と…また減少傾向にあります。
 
厳格化の目的はケアマネージャーの質の向上とされています。
 
それ以前に介護現場や看護現場で5年以上働いて資格を取得した人たちも、現場の人員が足りていない場合が多く、なかなかケアマネの業務に就くことができない…といったことも多々ありました。
 
それでいて5年経てば資格の更新が必要であり、それには安くはない金額が必要なのと仕事を休まなければいけない…という状況から更新せずにその道を断念する人も多くいました。
 
2021年からは居宅介護支援事業所の管理者は主任ケアマネージャーに限定されることになりました。
 
主任ケアマネージャーはケアマネージャーの実務経験を5年以上した人が主任介護支援専門員研修過程を終了すればなれるケアマネの上級資格です。
 
主な業務は“介護に関するサービス、福祉、医療や介護保険などのネットワークの向上”、“ケアマネージャーの指導・教育”、“地域の特徴・課題を把握し、適切にケアできるシステムの構築”の3つです。
 
ただし、全国で主任介護支援専門員まで育っている人の数が揃わず、実施までの措置期間を最大で2027年3月31日まで延長されています。
 
介護業界はなかなか目の前のことを乗り切ることで精一杯で、この20年以上の間で教育・指導と個人の成長が成されてこなかったことで、今になってツケが回ってきています。
 
そして、これまでケアマネ業務を実践してきた人たちの中で、定年退職の時期を迎える人たちも増え始めています。
 
現在は、ケアマネ業務でAI(人工知能)を活用する試みも民間企業などで行われています。
 
ケアプラン作成については、大いに役立つのだと思います。
 
介護サービスの利用者データを学習したAIにケアプランを作成してもらって、それを厚生労働省が実用化に向けて調査を行っています。
 
介護業界では他の産業に比べてデジタル化が遅れていると言われていますが、新型コロナウイルス感染症の拡大の経験も踏まえて、厚生労働省は積極的に介護業界のデジタル化を加速しています。
 
その中でAIによるケアプランも開発されました。
 
AIが介護の膨大な事例を素早くまとめて、そのデータを参考にしてケアマネージャーがケアプランを作成するということです。
 
現状ではケアマネージャーが多くの時間と労力をかけて行っているケアプラン作成を劇的に短縮できるシステムとして注目されています。
 
AIを活用すればケアプラン作成時間が大幅に短縮されて、ケアマネージャーの負担軽減に繋がりますし、更に、空いた時間で利用者と向き合うことが可能になるので、ケアマネージャーがAIを活用する利点は大きくなると思います。
 
AIが利用者本人や御家族に寄り添うことは困難だと思います。
 
ケアプランは介護保険や過去の事例などのデータだけではなく、利用者やその御家族の気持ちも反映して作成します。
 
AIは素早くデータをまとめることができても、人の気持ちを汲み取ることはできないのではないかと思います。
 
このことから、ケアマネージャーがAIを活用してケアプランを作成するという図式になります。
 
AIは、ケアプラン作成支援の為のツールになります。

こうなると、やはり、ケアマネージャーの人員確保が課題になります。
 
もちろん、現場の介護職員の人員確保も同じく重要になります。
 
介護職員やケアマネの人材確保の観点から、処遇改善やICT機器などを活用した業務負担の軽減などの環境整備が必要になります。
 
ケアマネージャーの専門性や役割は地域共生社会の実現に向けて、ケアプラン作成だけに留まらないで、今後更に高まる見込みがあるのではないか…と思います。
 
これからの人口減少の社会で地域共生社会の実現の為には、多職種連携に留まらず、個人と社会の“つなぎ屋”が必要になります。
 
日本の2022年の日本人の人口は前年に比べて75万人減少しましたが、65歳以上の高齢者は2万人増加して人口の29.1%になっています。
 
75歳以上は前年よりも69万人増えて人口の15%になっています。
 
それに比べて、15歳未満は28万人減少して11.6%、15~64歳までの人は約30万人減少して59%になっています。
 
現在はケアマネージャーの受験資格が“国家資格所有者または相談援助業務に就いており、さらに実務経験が5年以上ある人”と厳格化されたので、若年層のケアマネージャーが少なくなりました。
 
例えば、介護福祉士などの国家資格がない状態で介護の仕事に入ってきた人のうち、相談援助の業務になれる人は極僅かです。
 
となると、その人たちは介護福祉士の取得を先にしてその後にケアマネ取得となるので、少なくてもケアマネージャーになるには8~9年かかります。
 
国家資格を持っている人たちは少なくても5~6年かかります。
 
それから主任ケアマネージャーになるのに、少なくても5年かかります。
 
最短で30歳で主任になれる人もいる…ということになります。
 
でも、それは極僅かです。
 
なぜなら、ケアマネ資格を取得しても、介護現場の人員不足など…職場の都合ですぐに現場を離れられない人も大勢います。
 
ずっと離れられない人もいます。
 
その結果、若いケアマネージャーが育たず、そのことから、ケアマネージャーの高齢化も進んでしまいます。
 
どこかで世代交代の波が来ます。
 
その時に後を継ぐ若い世代がいないと、これからもっと深刻になる社会の中で大変なことになります。
 
今後は国家資格になり得る資格であり、そうなれば、もっと志す人は増えると思います。

ここで少し疑問なのが、この受験資格の厳格化の目的がケアマネージャーの質の向上とされていますが、場合によってはこれによって向上する場合もあるとは思いますが、本当に志があって能力があっても諦めざるを得ない場合もあるのではないか…。

福祉の資格は給料が安い仕事の割に、こういうスキルアップの場合に物凄いお金と時間を要する場合が多いように思います。

その結果、必要な人材……いや、人財を失う状況になっているのだと思います。

それでいて、人員不足だと嘆いていても……これまでは嘆いているだけで良かったかもしれませんが、これからは社会が待ったなしの状態で変化していき、嘆く余裕も時間もないような切羽詰まった状況になるかもしれません。

“一に人、二に人、三に人”

…と仰られたのは後藤新平さんです。

“金を残して死ぬのは下、事業を残して死ぬのは中、人を残して死ぬのが上”

人間社会を作っていくのは人であり、優秀な人材…人財を育てて生かしていくことが重要ということです。

“学術と実際は、距離がないようにせねばならない”

…とも仰れています。 

利用者と御家族が抱える介護に関する不安や悩みを解消し、デリケートな部分や感情を汲み取って寄り添ってケアプランを作成するケアマネージャーですが、今後はおそらく、地域共生社会の実現に向けてもっともっと多岐に渡った活躍が求められると思います。
 
介護サービスや医療サービスと利用者や御家族の架け橋から、個人と社会の架け橋へと視野を拡大して“つなぎ屋”としてケアマネージャーの存在が求められます。


写真はいつの日か…百合が原公園で撮影したものです。 


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