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映画

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2022年12月の記事一覧

【事実は小説より奇なり】映画『ある男』感想

11月18日より公開している映画『ある男』。 1人の男の死をキッカケに明らかになる社会の暗部とある男の過酷な過去と苦しみが描かれる。芥川賞作家、平野啓一郎の原作を『蜜蜂と遠雷』、『愚行録』の石川慶監督が映画化。主演は妻夫木聡、安藤サクラ、窪田正孝。 観た人たちの評判が良いので気になっていた作品。ちょうどタイミングが合ったので鑑賞してきました。 鑑賞したのはミッドランドスクエアシネマの12月22日の13時20分の回。お客さんは20~30人程、客層は年代は20代以上様々で女性

ゴダールの短編を考える

ゴダールの短編 ゴダールの視点の1つとして、今回は、30secで、人生を語れるのか(?) その疑問も払拭するが如くのショートムービーを、ただ、羅列した。 「全員が練り歩いた」(On s'est tous défilé)1987 「全員が練り歩いた」(On s'est tous défilé)1987-Jean-Luc Godard 1987年(昭和62年)、パリのファッションデザイナーチームマリテ+フランソワ・ジルボーとのコラボレーションで製作された。スローモーション

映画2022年の振り返り「女性の立場を見つめ直す作品たち」

2022年も早いものでもう終わり。 今年もたくさんの映画を観ましたが、総括してみて気付く"映画の傾向"があったりします。 ちょうど、2022年の映画を振り返る執筆依頼をいただいたので、映画サイト「OSANAI」にて記事を書かせていただきました。 テーマは、「女性の立場を見つめ直す作品たち」。 ▼サイトはコチラ ↓ 先日、「映画に見る女性の妊娠・中絶のリアル」という記事をnoteに書いたのですが、その大きな系譜にあたるかなと思います。 2022年公開の作品を中心に10作品

【2022年鑑賞映画ベスト10】

今年ももう終わるということで、今年観た映画のベスト10を挙げます。 選考対象は今年劇場公開された新作映画(リバイバル上映などは除く)。 選考基準は、面白かったり好きだったり、言葉にできない気持ちになったりと、とにかく心に強く残った順で選びました。 選考理由と共に10位から順に挙げています。 10位『NOPE』IMAXで鑑賞したこともあって、映像の迫力にやられたし、色々考察するのも楽しい。ジョーダン・ピール作品は『ゲット・アウト』、『アス』も映画館で鑑賞してきたけど、こ

「竜とそばかすの姫」視聴ともろもろ

感想というほど大層なものは書けないなと思ったので見たよという報告です。 音楽の良さはストーリー関係なく良いと評価になるしいい音楽の映画を好きがちなので好きを再確認した。 ストーリーについて、最後う〜んな人も多いけど、私は好きで。 (見る前から「警察仕事しろ」というネタバレ感想は食らっていたのであーねになった) 作品とは祈りであると思っているので、それに照らして正しいなと。言いたいこと言えてれば表現者として勝ちだと信じているため 最終的な落とし所が現実に接続してくるのもよく

映画「ヒノマルソウル 舞台裏の英雄たち」

観た映画の紹介 制作:2021年 日本 上映時間:114分 配給:東宝 この映画を選んだ理由 公開当時主演の田中圭さんが映画の宣伝のために多くの番組に出ておられたのは記憶していました。今回Netflixの配信で、観ることが出来ました。 キャスト・スタッフ キャスト:田中圭、土屋太鳳、眞栄田郷敦、山田裕貴、小松菜緒、 濱津隆之、古田新太ほか 監督:飯塚健 脚本:杉原憲明、鈴木健一 主題歌:MISIA(作詞・作曲 川谷絵音) 挿入歌:MAN WITH A MISSION

【町の片隅のボクサーの物語】映画『ケイコ 目を澄ませて』感想

映像に魅了される99分だった。 ざらついた町並みに柔らかい光の線、16mmフィルムで撮られた映像は懐かしさを感じさせる。物語の舞台が戦前から続くボクシングジムという事もあって、映画全体にレトロな雰囲気が漂っている。 一見すると2022年に作られた作品とは思えない。だが、マスク姿で生活する人々や無観客で行われる試合など、本作は間違いなく今の世界を撮った映画だ。 映画『ケイコ 目を澄ませて』は耳が聞こえないボクサーの実話をもとに描かれた作品だ。監督は『きみの鳥はうたえる』の三

【この怒りはどこからくるのか】映画『冬の旅』感想

季節とリンクする映画が好きだ。 夏なら海や夏休みが題材になっている作品、秋なら紅葉や落ち葉が印象的な作品。現実離れした場所へ連れて行ってくれるのが映画の魅力だが、現実と地続きなのも映画の魅力の一つだと思う。 そういう意味で『冬の旅』は今観るのにうってつけの作品だった。 風景映像が本当に寒々しい。存在は知ってたが未見だったので予告編を観た時から気になっていた。 監督は2019年にこの世を逝去したアニエス・ヴァルダ。本作は1985年のベネチア国際映画祭で金獅子賞に輝くなどヴァ

花束みたいな恋をした

ずっと観たかった映画"花束みたいな恋をした''を最近Netflixで観ました。 観る前にこんなnoteの文章を書いていたけど。 未だにこれの再生数を超える文章はない。 スキの数はそこまで多いわけではないけど。 インスパイアソングはやっぱり劇中にはかからなかったけど。 彼女たちの曲は劇中に何度か使われていた。 映画"花束みたいな恋をした"の感想を書いていこうと思います。 好きなものが一緒のひと、疑問に思っていることが一緒のひと。 どちらかと言うと嫌いなものが一緒

【匂いの先に隠された真実がある】映画『ファイブ・デビルズ』の謎を考察する。

11月18日から公開している映画『ファイブ・デビルズ』。 これはかなり奇妙な作品。まず設定が斬新というか奇抜。主人公のヴィッキーは10歳の女の子。フレンチアルプスの小さな村で父と母の3人で暮らしている。 ヴィッキーは嗅覚が異常に優れている。何の匂いか正確に当てたり、目隠ししても匂いの元へたどり着くことができる。犬並み、それ以上かもしれない。 物語はそんな彼女の一家に夫の妹を名乗る人物、ジュリアが訪れる所から始まる。ジュリアの来訪を巡り険悪な空気になる母と父。ヴィッキーも

Amazonプライムビデオでもう観られる!2022年公開の傑作7選!

もう今年も12月に突入し師走となってきましたが、この2022年に劇場公開された新作映画が続々とAmazonプライムビデオでも見放題の配信が始まってます。 アマプラに入っていても何を選んでいいか分からないし、どれが新作なのかもよく分からないし、観たかった新作がやってるかもマメにチェックしてないとなかなか分からないものです。 そこで今回は、2022年に公開された新作映画の中から特に面白かった作品で、Amazonプライムビデオの見放題で配信が始まっているおすすめ7本を紹介してい

『裸足で鳴らしてみせろ』

[あらすじ] 舞台はとある田舎町。父の営む不用品回収会社で働く直己(佐々木詩音)は、泳ぎを習得すべく向かったプールで槇(諏訪珠理)に出会う。槇は、かつて世界一周をしたことがあるという、盲目の養母・美鳥(吹雪ジュン)とともに2人で暮らしていた。ある日、病に倒れた美鳥は、槇にある秘密を打ち明け、「自分の代わりに世界を見てきてほしい」と告げる。実際にその地へ足を運ぶことができない槇は、直己と共犯関係を結び、不用品回収で手に入れたレコーダーを手に、世界のさまざまな“音”を集め、架空の

『ブラックアダム』はロック様無双だけの映画じゃないぞ!!

12月2日から公開している映画『ブラックアダム』。5000年の眠りから目覚めた破壊神の暴走と彼を止めるために駆け付けたヒーロー達の闘いと人間模様を描かれる。『シャザム!』と繋がる物語で、DCU(DCユニバース)に連なる作品となる。 主演は『ワイルド・スピード』、『ジュマンジ』シリーズなど数々の大ヒット作で人気のドウェイン・ジョンソン。共演に「007」の5代目ジェームズ・ボンドで知られるピアース・ブロスナン、『透明人間』(2020)のオルティス・ホッジらが名を連ねる。 監督

やっぱり人生の全肯定だった。映画「漁港の肉子ちゃん」

どうして劇場で見なかったのかなー。。。と悔やまれる名作であった。娘と見ながら、一緒に泣いた。とんでもない、愛の劇場だった。 企画・プロデュースに明石家さんまさん、肉子ちゃんには大竹しのぶさん、娘のきくこちゃんにはCocomiさんと、もうなんか名前だけでお腹いっぱいになる日本の芸能界を作ってきた人たち(とその子孫)が製作したアニメ映画。原作は、ああもう、あの西加奈子さんである。 *** 肉子ちゃんは、頭が悪くて、無防備で、そして圧倒的に愛の人でした。この作品には、愛しか描