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映画

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映画コラム 某ブログでも書いています。
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『ゴジラ-1.0』

外から見たゴジラ 真っ暗な映画館内に重低音が響く。耳障りな、しかし聞き慣れたリズムだ。IMAXの巨大スクリーン内では、小洒落た街並みを覆い尽くすように、鋭利な岩を体中に生やした壁がまっすぐに立ち上がる。壁の片方にある長い尾は地面を裂くようにゆっくりと揺れ、もう片方にある二つの目はこの世の憎しみを閉じ込めたかのように燦々と光っている。街を破壊して歩くカイジュウの全貌をとらえたヒロインがその名前を呼ぶ。映画に詳しくない人も必ず知っている名前。「Godzilla」という一言に、場

【徹底解説】 映画『PERFECT DAYS』

いよいよもうすぐ米国アカデミー賞。 日本勢からも3作品がノミネートされています。 長編アニメーション賞の「君たちはどう生きるか」、視覚効果賞の「ゴジラ -1.0」、そして国際長編映画賞の『PERFECT DAYS』。 個人的にも昨年のベスト映画だったので、とても期待したいところです。 とはいえ他2作品が有力候補なのに比べて激戦区なのでどうなるか。 そんな期待も込めてより本作を楽しめるように色々調べたことをnoteにまとめておきたいと思います。 『PERFECT DAYS

『Disappearance at Clifton Hill』

謎を解く映画 地下鉄を待つ間に、頭上のモニターを確認する。時刻、天気予報、コマーシャル、地方ニュース。まばたきする間に内容は変わっていくものだが、その日はずっと同じ映像ばかりが繰り返されていた。ナイアガラの滝周辺の国境で起こった爆発。自動車事故という話らしいがテロという言葉も見かけた。あの日、私が目にした情報のなかで、どれだけの表現が的確なものだっただろう。 「真実と嘘。どっちがどっちかは自分で考えなさい。まだまだ、お勉強が必要ね」 ナイアガラの滝で有名な観光地を舞台に

热辣滚烫。中国で公開された「百円の恋」のリメイク作品映画がヒットし過ぎで社会現象に。ネット民の考察が興味深い

中国は旧暦新年(春節)で大型連休の真っ最中です。ボクもすっかり休み気分で、noteの更新を怠けておりました。 春節の話題といえば、爆買いにインバウンドで来る観光客の報道が日本ではいつも話題かと思いますが、コロナも収まっている時代にもかかわらず今年の中国から日本への旅行者はあまり多くはなかったようですね。 一方中国国内では、帰省での激混みや旅行の盛況はもちろんですが、文化面では映画がネットで大きな話題となっています。春節シーズンに合わせて多くの話題作が公開され、興行ランキン

映画 「Wish」感想つらつら。

今年は、ディズニーが世に誕生してちょうど100周年の年にあたるそう。 公開前から「ディズニー100年の集大成」と銘打って宣伝された、「Wish」。 駅に予告のポスターが掲示されていたり、グッズがコラボされたりしているのを見かけ、広告にもかなり力を入れている様子がうかがえた。 さあ、どんなものを出してくるんだろう、と気になっており先日ようやく観に行くことができた。 〜ここから じゃんじゃんネタバレに繋がることにも言及していきます。ご注意ください。これから観にいかれる予定の

ゴンドラについて

Amazonプライムを契約してから、知らなかった映画をちょくちょくみるようになった。 今日見たのは、「ゴンドラ」という映画。 僕が生まれたのとほぼ同時代に、日本で制作されたインディーズ映画。 監督さんは、この映画を自主制作するのに借金を背負って、AV監督になり、今じゃ巨匠的な扱いらしい。しかもSM作品の。 なんだそれ。すごい話だ。 都会に生きる少女と青年の出会いから、虚ろな世界が動き出す様を、静かに描いていて、心に染み入った。 俺の田舎じゃさぁ、死んだもんは海に帰るって

哀れなるものたち 受け継がれる母と娘の意思

 『哀れなるものたち』は、多くの人が語っているように、メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』を骨子にした作品だ。さらに、『フランケンシュタイン』の作者であるメアリ・シェリーやその母であるメアリ・ウルストンクラフトの人生を重ね合わせて、という複雑なレイヤーを持った構成になっていて、原作者アラスター・グレイは間違いなくメアリの母娘のことを書いているだろうし、ヨルゴス・ランティモスも、いまこの時代にこの作品、ということで意識しているように思える。  自分はフェミニズム史には

映画とファッション|衣装からみた映画「ゴールデンカムイ」

映画「ゴールデンカムイ」、見ました? めっちゃよかったですよね。ゾクゾクしました。 登場人物が現れるたび「うわー、土方歳三きたー!」とかひとりでキャーキャー思いながら観てました。 さまざまな角度から映画「ゴールデンカムイ」については語られていると思いますが、ドレスをつくる仕事をしているわたしはやはり、「衣装」の面から映画「ゴールデンカムイ」のすごさをみてみたいと思います。 また、博物館学芸員資格を学ぶわたしは、今までゴールデンカムイやアイヌに関連するさまざまな博物館展示

映画 PERFECT DAYS

PERFECT DAYS 良かった。映画館で観てほしい映画だった。 エンドロールの最後までぜひ見てほしい。 余白を感じさせる映画だが 冒頭で彼の職業がよく分かる会社名の入った作業着の背中を写し出す、観る人への配慮 The Tokyo Toilet (スリーT良い…) 作業着の青色がとても良い絶妙な青で ダサさを感じさせない真っ青なブルー むしろカッコよさを感じさせる青さ。 彼が使用するバンも同じ青 この青色は緑(自然)の多い中でも人混みでも良く生えていた。 セリフが少

2023年 映画ベスト10! <日本映画編>

あけましておめでとうございます。 2023年の映画ベスト10、<外国映画編>に続いて、<日本映画編>です。 こちらもかなり観た中からの厳選10作品となります。 では早速どうぞ。 10位 『首』 北野武監督による待望の新作! 本能寺の変に向かう戦乱の世を秀吉、光秀など跡目を狙う面々がしのぎを削り合う。 中でも加瀬亮の信長がセクハラにパワハラという完全なるブラック企業の社長という感じで狂っててかなり良かったです。 秀吉については相当調べたらしく、曽呂利新左衛門など落語の始

一番好きな映画に出逢った2023

「一番好きな映画は何?」という質問は非常に難しい。なので人生で一番観てる『コブラ』や『ローマの休日』とかは殿堂入り的別枠にしている。 芝居を始めてから観た作品の中で「一番好きな映画」として挙げていたものが一つあった。その映画のポスターを10年近くずっと携帯のホーム画面の画像に設定している。 その設定は今も変わらないけど、今年観た55本の映画の中でこれから「一番好きな映画」を聞かれたらこれを言おうと思う作品に出会った。私の中ではかなり衝撃的な出来事なので、その映画を今回言葉

ウォンカとチョコレート工場の始まり🍫

チャーリーとチョコレート工場の工場長・ウォンカがチョコレート工場を始める前までのストーリーが、映画「パディントン」の監督・ポールキングさんによって、描かれました🍫 チャーリーとチョコレート工場📙を読んだ時のように、ページをめくる度にチョコレートの香りがしてきて、チョコレートを食べたいと思い、チョコを食べながら、あっという間に、マジシャンのようなウォンカの世界のとりこになってしまいました。彼のチョコレートへのあふれるばかりの情熱と語り尽くされる夢の数々。チョコを片手に、ぜひ読ん

ひとり、の渦に呑まれる

 手を奥へできる限り伸ばすと、ヒヤリとした冷風に突き当たる。使い始めてから早15年が過ぎていて、とっくに標準的な耐年数は超えているのに、いまだに微かな呼吸音を立てながら室内の果物や野菜、私が作った料理などを冷やし続けている、健気なやつ。日常的に、私が生きていくために、そっと息を吐き出している。 *  相変わらず、少し前から朝方の日が昇らない時間帯に目を覚ましてしまう。真っ暗闇の中で突然夢から放たれて、なぜかわからないけれど、再び眠ろうとしても途端に瞼が軽やかにパチパチと振

『螺子を巻く』、あと『首』

 例年と比べてあたたかい秋が続くなぁ……と油断している皆様、さきほど知ったのですが、明日から寒波到来とのことですよ! もし周知の情報であるならば、情弱が過ぎるKH、今日も薄着で美しき四季を想ふ──。  と、どうでも良い前置きではございますが、この度『文章・創作のサークル様』にお力添えをいただき、電子書籍を発売いたしました。  短編ではなく一作品として完結させた本作ですが、予めあらすじを言ってしまえば「父が娘を連れて高野山、奥之院を歩く」という、ただそれだけの小説です。勿論