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地味な主人公になった


 2023年の大きな変化。それは「脇役」から「主人公」へ。

 子どもの時から地味で引っ込み思案だったので、学生時代から、そして仕事の上でも、ずっと脇役でした。

 でも、それはあくまでも、一つの舞台の上での配役に過ぎないでしょう。

 会社など組織で社長だった人も、いずれ若い世代に譲り、脇役にならなければならないのです。

 大事な点は、組織の論理に忖度するかどうか。社会の価値に縛られるかどうかではないでしょうか。私も社会で暮らしているので、ある程度は周囲の動きは意識します。

 でも評価の軸が向こう側にあるか。それとも自分の側にあるかは結構大切なことです。私は長年、教員として他人を評価しながら、なんでこんなテストの点数で成績の上下を付けなければならないのか、ずっとストレスを感じていました。

 いっそ、学ぶ人が自分で決めたらいいとも思いました。でも学校の中で、評価の軸を取り返すことはほぼ不可能です。

 さて、2023年の後半。私は「小さな主人公」になるべく、生活を変えました。


米粉スコーンづくり

 前半期、インターナショナルスクールで働いていたのですが、電車の混雑を避けるため早めに出勤。駅近くのドトールでBBCドラマ「ブリティッシュ・べイクオフ」を毎日見ていました。

 お菓子の種類や歴史も興味深いのですが、感動したのはアマチュア・ベイカー同士の交流や彼らの温かい家庭の支え、そして何よりもお菓子が人と人を優しくつなぐものになっていることです。おばあちゃんのレシピを参考にしたお孫さん。日々の暮らしの中でお菓子のさりげない存在に心が動きました。

 そんな中、クリスマスに職場のイギリス人女性が「ミンスパイ」を持って来てくれました。初めて食べたのですが素朴な味でした。イギリスのべイク文化にほっこりして、「これだ!」と思ったのです。

 私はグルテンが苦手でお砂糖もできるだけ控えたいと思ったので米粉のスコーンを作り始めました。これが本当に難しかった。レシピ本や米粉スコーンのお店で話を聞いたりしました。

 そして資格を取り、ラベルも作り、商品として売るところまで行きました。たまたま、親戚の人がマーケットに出店していたので一角をお借りして売ることができました。

 身体に優しい成分と素朴な味という、あくまでも私の基準で作りました。これからも小さく作っていきます。

プレーン味と抹茶味

文学との出会い

 趣味は?と聞かれたら一応「読書」と言ってきたのですが、専門書や限られたジャンルの本しか読んできませんでした。少し読書の幅を広げて海外小説、エッセイ、詩なども読むようになりました。

 NOTEにも書いたのですが、本を読んで「やっぱりよかった」という読書ではなく、「なんだかよかった」という読書に惹かれます。物語に裏切られて自分が変化していく。なんだか、よくわからないという状態が続くことのソワソワとかワクワクがいい

 小説とは何か、という大きなテーマを改めて考えるきっかけになったのは小川洋子さんの文章でした。対談エッセイに刺激を受け、そして『密やかな結晶』という作品との出会いはまさに衝撃でした。

 また鴻巣由季子さんの『文学は予言する』という本からは翻訳というテーマから多くを学びました。歴史を専門としていた時代、論文の翻訳は直訳がすべてでした。それは文明が作った概念の翻訳だからです。

 しかし、文学の翻訳はそうではありません。そこで使われることばは個人が発するつぶやきです。それを翻訳するためには、人生の「奥行」や「水脈」といったものを自ら探索に行かなければならないと思います。

 翻訳に興味をもったので、英語絵本を翻訳するワークショップに初めて参加しました。絵本というのはまず絵が大切な要素だと教えられました。子どもは文字は読みません。そして、その次に音を聴きます。リズム感を楽しみます。最後にストーリーなのでしょう。

人生は更新できる

 なんだか、今までNOTEで書いてきた内容を確認するようなかたちになってしまいました。

 まだこれといった創作をするには至っていないです。でも一歩を踏み出せた年でした。文学フリマや独立系本屋を訪ねるようになりました。

 「主人公」になるということは、いろいろな舞台があることを知ること。そこで新しい能力に気づくこと。そして、自分を信頼すること

 一人暮らしをしていると気分がふさぐことが時々あります。

 でも、このNOTEに文章を書くことで世界が広がりました。いろいろな人のことばに触れることができ、人生は更新できると思いました。

 ことばの不思議をかみしめて。


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