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金利と経済を読み解く② -アメリカ-

今回は現在のアメリカの金利政策と今後の展開に関して考察します。
前回、金利の基本を簡単にまとめましたので一読頂けると嬉しいです。

前回の記事は下記リンクからどうぞ
金利と経済を読み解く① -基礎-

本日の内容
1. アメリカ金利政策の仕組み
2. アメリカ金利政策の歴史
3. 現在のアメリカ金利政策と今後の方針
4. 今後のアメリカ経済予想

1. アメリカ金利政策の仕組み
アメリカの中央銀行はFRB(Federal Reserve Board)と呼ばれます。
その傘下には連邦準備銀行地区連銀)があります。

(https://www.m2j.co.jp/market/monthly_column.php?id=41より)

アメリカの重要な金融政策(金利政策も含む)は、このFRB理事および地区連銀総裁からなる理事が話し合いを行い、決定されます。ちなみにFRB理事は7名で、任期は14年と長めです。連銀総裁は12名です。

その話し合いの場はFOMC(Federal Open Market Committee)と呼ばれ、世界経済に大変な影響力を持ちます。年間8回実施されます。

そして、このFOMCを牛耳るFRB議長がパウエル議長です(2019年4月現在)。
大統領の次ぐ権力者とも言われます。

(Jerome H. Powell)

またFOMC参加メンバーの内、利上げ賛成派(利下げ反対派)を「タカ派」、利上げ反対派(利下げ賛成派)を「ハト派」と呼びます。

さてこのFRBですが、「物価の安定」と「雇用の最大化」を目標に、主に政策金利の上げ下げによる金融政策を実施します。政策金利はFF金利Federal Funds Rate)と呼ばれます。FF金利は民間銀行間でお金の貸し借りを行う際に適応される金利で、市中金利に直接的な影響が出ます。

分かりやすく言うと、FF金利が下がれば市中にお金が出回り景気が良くなる、上がればお金が出回らなくなり景気が悪くなる、です。

ちなみにFF金利は年8回も変更されるので短期金利とも呼ばれることもあります。

まとめ
アメリカの金融政策    = FRBがFOMCでFF金利を変動させる
FF金利 ≒ 短期金利

ちなみにアメリカ国債には、償還までの期間が1年以下、2年、5年、10年、30年があります(30年債は新規発行は既に終了)。一般に2年債などはFF金利と相関性が強く、こちらも「短期金利」と表現されることもありますが、金融業界で「短期金利」はFF金利を一元的に指すことが多い。一方で「10年債」は「長期金利」と呼ばれます。これら短期金利と、長期金利の関係性が経済状況を読むカギになります(後述)。

2. アメリカ金利政策の歴史


さて、まずはざっくりアメリカ金利政策の歴史を振り返ります。



(1)戦後から景気がどんどん右肩上がりで、1982年頃まで金利は上昇

(2)2008年リーマンショック: FF金利を0~0.25%に引き下げ(ゼロ金利政策)

(3)それでも市場にお金が出回らない(超不景気)ため、FRBが直々に証券や国債を買い入れ、現金を市場に回す量的緩和政策(QE)を実施

(4)2015年 : FF金利0.25~0.50%にようやく上昇

(5)その後、現在に至るまで徐々にFF金利は上昇

まとめ
FF金利は2008年リーマンショックで0%と過去最低に、その後は徐々に上昇


3. 現在のアメリカ金利政策と今後の方針

リーマンショック後、じわりじわりとFF金利は上がり(=景気が回復してきた)、直近(2019年3月)のFF金利は2.25~2.50%です。今後もパウエル議長は緩徐な利上げを続ける方針で、FOMC参加メンバーも下図のようにFF金利は推移していくと予想しています。

(https://en.wikipedia.org/wiki/History_of_Federal_Open_Market_Committee_actionsより)

※下記数字はFOMC参加メンバーによる予想
2020年は年1回の利上げで2.625%へ
2021年は 2.625%のまま

リーマンショックから約10年、アメリカはじわりじわりと景気回復を達成し、FRBはFF金利をもとの水準に戻していく「出口戦略」を達成してきました。遂にはアメリカ経済(NYダウ平均)は過去最高水準も達成しました。このまま経済成長を続けられるのが理想的で、パウエル議長のFF金利方針もそれを伺わせます。金利が上がる=景気拡大の最中、の一つの指標ですから。なおFRBは安定的に経済成長を達成できるFF金利は3.0%前後と考えています

まとめ
・リーマンショック後のアメリカ経済回復は順調(史上最高潮とも)
・現在(2019年3月)のFF金利は2.25~2.50%
・FRBはFF金利を引き続き緩やかに上昇させる方針(3.0%前後目標?)

4. 今後のアメリカ経済予想
ここまでを読むと、アメリカ経済はリーマンショックを乗り越え、金融政策も正常化(出口戦略)を経て、過去最高の経済成長を達成していることが分かります。

しかし、アメリカ経済成長の限界点が近づいているのではないか、という不安要素がいくつもあります。

経済成長の終焉は、過去のほとんどが「株価の暴落」「通貨価値の暴落」を原因としています。株価や通貨は世界中の投資家が売買を繰り返していますので、世界中の投資家が「やばい」と一斉に感じた時に暴落が始まります。

アメリカは現在、①北朝鮮問題、②中国との貿易摩擦問題、③ドル高による輸出低下、④トランプ政権の不安定性など多くの危険因子をかかえております。さらには英国のEU離脱問題で、欧州市場は絶賛大混乱中です。

2008年のリーマンショックもそうでしたが、一つの経済問題が大きく波及し、経済成長の終焉を呼びます。過去の大不況の始まりには一定のパターンがあると言われていますが、今回もそのパターンに当てはまる可能性が高い。

(参考) 「2019~2020年に通貨危機は来るか

そう考える投資家が増えれば増えるほど、市場にもそれが醸し出されます。

例えばアメリカ国債も市場で売買される金融商品です。FF金利と違い、投資家が売買を繰り返す国債は日々価格が変動します。投資家が欲しがれば値段が上がり、不要と判断すれば下がる。

国債には2年国債や10年国債などがあると述べたが、一般に短期国債よりも長期国債の方が利回り(金利)が高い(直感的にもわかりますね)。

しかし、多くの投資家が「今後のアメリカ経済に期待が持てない」と判断した場合、国債の価格はどうでしょうか。国債は「発行時点から〇〇年後に元本と利息を返済する」ものなので、長期国債の価値(価格)が上がる(=金利低下※)ことになります。なぜなら短期よりも長期の方が、より長期的な安定価値を保証する債権だからです。繰り返しですが、短期国債はFF金利に変動を受けやすい性格があります。

※一般に長期国債価格と長期国債金利は反比例する

一般に、2年物国債利回り(A)の水準が10年物国債利回り(B)の水準を上回ることを「逆イールドカーブ」と呼びます。下図の青色グラフは(B)-(A)です。

2001年ITバブル崩壊(▼)、2008年リーマンショック(▼)のいずれも、上の青色グラフがマイナス%になっています。

さらにこんなWSJにはこういう社説も出ています。

米国債のイールドカーブが逆イールド化した例は1960年以来で9回あるが、そのうちの7回はその後、景気後退に陥っている。
(THE WALL STREET JOURNAL)


そして、2019年3月下旬、再び逆イールドカーブが発生した


これからのアメリカ経済はどうなるか、金利変動とともに注視しないといけない。

まとめ
今後、アメリカ経済(当然、日本経済も)は暴落リスクが少なからずある


おわり

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