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輝く星のように。

一昨日の夕方頃からだろうか、少し熱発。

今日は微熱のまま仕事を終わらせた。
夜になってもまだぼーっとしている感じで、どうやら、まだ熱は下がっていないようだ。
火照った身体を冷やそうと外へ散歩に出てみた。

秋の夜長、雲の合間の澄んだ夜空。空にはたくさんの星。

自然のプラネタリウムが広がっていて、澄んで冷えた空気が、熱を帯びた身体にすごく心地好かった。

熱のせいなのか、疲れのせいなのか、ぼんやりしながら星空を眺めていたら、急に幼い頃のある風景を思い出した。
それは父方の祖父が亡くなった日。

その日もこんな風にひんやりとした冷たい空気漂う日だった。
祖父は俺をよく可愛がってくれた人だったが、幼かった俺はまだ人が亡くなることを理解することができてなくて、祖父が亡くなったことに対して悲しいという感情を感じることはなかった。

火葬を終えた夜。

涙を堪えながら夜空を眺めていた父親が、俺に人が亡くなることを説いて聞かせてくれた。
父親の話を聞いても人が亡くなることについてまだ理解できなかったけれど、大好きだった祖父に二度と会えなくなってしまったことは何となく理解できた。

そして、それを理解した途端、俺は急に寂しさや悲しさが込み上げてきたのか、大きな声をあげて叫ぶように泣いた。

「小太郎、じいちゃんはあの星になったんだよ」

泣き出した俺をなだめるように、父親が夜空に光る星の一つを指差して、俺にそう言った。

だけど俺は、

「違う」
「あの星はじいちゃんがいたときから光ってた」
「じいちゃんと一緒に見たことがある」

そう言って夜空に向かって、大声で泣いた。
泣き続けた。
大声で泣く俺の横で僕の父親は、涙を押し殺しながら一緒に泣いていた。

たぶん、4歳か5歳くらい記憶だと思う。
きっと僕の父親も、僕と同じように大声で泣きたかったのかも知れない。

そんな記憶が、星空をスクリーンにすごく鮮やかに再生された。

なぜそんなことを思い出したんだろう。
熱で侵された頭が、忘れてしまっていた古い記憶を甦らせたのかも知れない。

夜空に瞬く星。

俺もいつか死んだときには、あの数多に輝く星の一つになれるのだろうか。
もしその一つになれるのなら、俺は一番輝く星になりたい。

星空を眺める君が、いつでも俺を見つけられるように。

数多に輝く星の中からでも、
すぐに君が、

俺を探し出せるように。



「一場面小説」という日常の中の一コマを切り取った1分程度で読めるような短い物語を書いています。稚拙な文章や表現でお恥ずかしい限りではありますが、自分なりのジャンルとして綴り続けていきたいと思います。宜しくお願いします。