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林檎の恋

目が合ったのは、朝日がまぶしい市場だった。手に取った私をまじまじと見つめ、家に連れ帰ってくれたあなた。

きゅっきゅっと、白いシャツの裾で丁寧に私の身体を磨いてくれたあなたは、うれしそうに私の頬に口をつけた。

一瞬の刺激のあと、私の左頬の感覚はだんだんと遠くになっていく。でも、あたたかく、少し湿っぽいところをゆっくりと落ちていくのがわかる。

あなたの唇が、再び私に近づいた。

もうすぐ、すべて一緒になれる。

そう思ったとき、突然玄関のチャイムが鳴った。

あなたは私を、朝食の汚れがこびりついた皿の上に乱暴に置くと、玄関の方へ駆け寄って行った。ドアのぞき穴から顔を離したあなたの口元が緩んでいた。

意気揚々とドアを開けたあなたの陰から現れた。

女だ。

長く美しいまつ毛が、皿の上の私の姿をとらえた。

「あら、美味しそうな林檎ね」

真っ赤な唇から覗かせた白い歯が、綺麗に並んで笑っていた。

・・・

先日参加したクリエイティブ・ライティング講座にて、テーブルゲーム「Dixit(ディクシット)」のイラストカードを使った物語創作のワークをおこないました。1枚のカードを見て、5分ほどで創作をするというワークでした。私はこの林檎のカードを使いました。

講座で作品を発表したところ、みなさんに好評をいただいたので、再編して掲載してみました。

「Dixit」は抽象的なイラストカードを限られた言葉で表し、カードを探り当てるといった趣旨のゲームです。偶然にも私はスペイン留学中に遊んだことがあり、かなり気にいって自分でも購入し時々遊んでいましたから、まさか創作の練習に使う方法があったとは!と驚きました。またやってみたいと思います。

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