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布の芸術祭2

布の芸術祭では、メイン会場である旧山叶(最近まで稼働していた工場)がやはり一番見応えがありました。

去年北杜市明野町にできた「ガスボンメタボリズム」さんともちょっと似ている。廃工場とアートは本当に相性が良いなあと思います。

そして私は古民家より廃工場が断然好きだなと思う。何かを観に行くというスタンスであれば、そこに残された生活感より無機質な寂しさを愛でたいのだなと思いました。

工場に残されていた社長室と応接室(?)では、歌人の木下龍也さんと伊藤紺さんの、布にまつわる短歌の展示がそれぞれ1部屋に2首ずつありました。

短歌って、その向こうに無限の世界が広がっていくような感じがして、本で読んでいるとそこに没頭していけるのだけれど、この素晴らしい一首それぞれに、図らず(いやものすごく図られているんだけど笑)物理的背景が用意されていることで、より歌の世界が広がっていきます。

天気や時間帯によっても印象が変わるのだろう。

これって何かが少しずれたら全てが台無しの、実はすごく緊張感のある展示だなあと思います。でもほんとうに、いかにも感が皆無。

すこし寂しい奥行きのある歌と、古い社長室と、外に見えるキリッとした冬の吉田の風景がとても絶妙で、ずっと歌を味わいながらそこに留まりたくなる贅沢な時間でした。(続く)


折りたたみ慣れてしまったかなしみをしわくちゃのまま渡してほしい / 木下龍也

かしゃんかしゃんと織られてゆくその悲しみのはじめて出会う模様と思う / 伊藤紺

いろいろな方にインタビューをして、それをフリーマガジンにまとめて自費で発行しています。サポートをいただけたら、次回の取材とマガジン作成の費用に使わせていただきます。