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【物語】遠吠え

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「愛情の鎖」に繋がれ 苦しむ「シロ」と友の物語
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【物語】遠吠え #最終話~胸騒ぎ~

【物語】遠吠え #最終話~胸騒ぎ~

その夜
私はなぜだか胸騒ぎが止まらなかった
「しろ」のことが頭から離れず
とうとう朝まで眠れなかった

夜明けて辺りがうっすらと明るくなった頃
「しろ!」
私は走り出した!!

「しろ」の顔が見たかった
なぜだかわからない
とにかく無性に

「しろ もうすぐ行くから待ってて!」
息を切らして私は走ってゆく

「しろ」がよく話してくれた公園を抜け
駆けてゆく

赤い屋根「しろ」の家が見えてきた!

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【物語】遠吠え #2~親友シロとの思い出の日々~

【物語】遠吠え #2~親友シロとの思い出の日々~

私は野良犬
寒空に震えながらも
餌を得て
ねぐらを探し
自分の力で生きている

私には親友がいる
「しろ」という名の
綱につながれ
いつもうなだれている雑種の犬が

私は「しろ」に会いに行く
私を見つけると
「しろ」は悲しそうな顔にぱっと笑顔を
咲かせ
つながれた綱を精一杯ひっぱって
私を迎えてくれる

「しろ 元気かい?」
私の言葉に「しろ」はしっぽをちぎれるほど振ってくれる

私は「しろ」に昨

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【物語】遠吠え #1~シロの詩~

【物語】遠吠え #1~シロの詩~

寒空の中遠くの山へむかって
一心に飛んでいく鳥を
僕はここからじっと見上げている

どうしてあの子は
自由に行きたいところへ飛んで行けるの?
どうして僕は
ここにずっと綱につながれたままなの?

僕は「わんっ!」と空に向かって吠えた
どんなに吠えても
その声は空と空気の中に虚しく消えていく

飼い主は僕を愛していると抱き締めるけど
それはほんの束の間のこと
ほとんどこうして外に放置されている
綱に

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