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【毒親】『親という傷 幼少期の心の傷をとりのぞけばあなたの人生は好転する』◇まとめ その12【トラウマ】

 本書のまとめの12本目。今回は「Chapter9 コミュニケーション」の中半です。
 読んでくださっている皆さん,いつもありがとうございます!
 不覚にも流行りのインフルエンザに罹ってしまい,ダウンしてました…
 無理せず読みながら,進めていこうと思います!

 全部の目次は,こちらの記事に記載しています。


Part3 人との関わり方を変える

Chapter9 コミュニケーション(中編)

明白で,親切で,穏やかで,好奇心があり,しっかりとした,率直なコミュニケーションを阻害しているものは何だろうか。」(p.287)

コミュニケーションの邪魔なものをなくす

 私たちが望んでいるのは,喧嘩ではなく,諍いでもなく,相手との健全なコミュニケーションをとり,それを継続することです。

 著者が言うには,健全なコミュニケーションをとるためには,邪魔なものを見つけてなくしていく必要があります。

 その「邪魔なもの」と,重要なポイントを,事例を通して4つ見ていきましょう。今回は,以下の2つの事例を読んでいきます。


  • 1,自分の声を大切にする(再びアリー(仮名)の事例)

 恋人として気になる人と出会うことができたアリーは,彼が自分のことをどう思っているのか,関係を次のステップに進められるのか悩み,著者のもとを訪れていた。
 アリーは著者に彼との関係は「なりゆきにまかせたほうがいい気がする(p.288)」と言っていた。
 数日間なりゆきにまかせてみたが,アリーはさらに煩悶し,苦しくなってきた。著者は彼女の話から,彼女の中の,母親に罵られたために生じた「安心の傷」が,気になっている彼に対して「受動的なコミュニケーション」をとらせる原因となっていることに気づいた。
 そして,著者はアリーの「安心の傷」が,「あなたのことが大好きで,私はあなたと次のステップに行きたいと望んでいる」と,率直に話すことに不安を感じさせているのだと分析した。

受け身の姿勢が,話を聞いてもらい,見てもらい,わかってもらうのを妨げているだけでなく,自分自身をしっかり見て認めるのも妨げていると気づく必要がある。(p.291)」

 そこで著者は,アリーとロールプレイを行ないました。著者が気になっている男性役で,「自分の気持ちを伝え,彼の気持ちを尋ね(p.292)」ることを練習しました。

 ここで,著者はアリーに実際に施した,「自分の声を強めるためのワーク」を載せてくれています。

 段階としては3段階で,それぞれを一つずつ,じっくり考えながら答えていきます。

 著者の示してくれるこのワークのコツは,「あなた」ではなく「わたし」という言葉を使うようにすることだと言います。
 この「わたしは~」という言葉を使うだけで,自分自身が本当に伝えたい「自分自身の声」を明確にしやすくなります。

 少し脱線しますが,この話を読んで私は,良いコミュニケーションの方  法として,「Youメッセージ」と「Iメッセージ」の話を思い出しました(本書にこの2つについての言及はありません)。前者は「あなたは○○だ」と,「あなた(You)」を主語にすることで,自分が相手のことを聞かずに一方的に決めつけやすいメッセージやコミュニケーションになりやすいのに対し,後者は「私は○○のように思う。あなたは?」と,「自分(I)」を主語にすることで,相手の反応を尋ねやすいメッセージを送りやすいというものです。

 話を元に戻しましょう。著者の示す「自分の声を強めるためのワーク」の3段階を見ていきましょう。本書には箇条書きする箇所が3つずつ存在します。ここでは重要なものを1つずつ載せます。(全部気になる方は,本書をぜひご覧ください)

① 大切にしたいのに,口にすることを避けてきたことを見つけ,自分が望んでいるものを明確にする

●わたしが口にするのを避けてきたことは(   )で,望んでいることは(   )だ。(p.293)

② ①のことを今まで制約してきたものは何かを明確にする。

●過去において,大事なことを言ったときに起こったことは(   )で,今わたしが起きるのを恐れていることは(   )だ。(p.294)

③ これまでで,いちばん快適で,心地よく,自由な空間や場所,および,これまでで経験した「恐ろしいもの」の2つを別々に想像し,感覚を身体で識別する。「ここで,その環境や相手が実際に安全かどうかを判断する。(p.294)」

●心地よいもの・・・(   )を想像すると,身体に(   )を感じる

●恐ろしいもの・・・(   )を想像すると,身体に(   )を感じる

 さて,アリーと彼との関係はどうだったのでしょうか? 本書に書かれている段階では,アリーが彼に自分の気持ちを打ち明け,彼にもアリーと付き合いたい気持ちがあることが分かり,上手くいったということです。

繰り返すことで,あなたの声を聞きたい人がいて,その人に打ち明けることは安全だと学べるかもしれない(p.296)」

  • 2,他者を尊重する(再びトリシュ(仮名)の事例)

 脳性麻痺を患い,両親からそのことをずっと認められずに過ごしてきたトリシュは,色々なことで相談にきた友人たちから,「話しかけても彼女が,心遣い,思いやり,心配,共感を示さない(p.297)」と言われてしまうことが気になり,著者のもとを訪れました。
 トリシュは著者と共に,過去の家族関係を掘り下げていきました。聞いていってみると,自身の脳性麻痺をずっと認めず,率直に自分と関わってくれない両親のもとで育った彼女は,「両親のようにはならない。率直に,ストレートにコミュニケーションが取れる人間になってやる」と決めてきた
 両親とは180度真逆の人間になるように意識してきたのだと言います。これは,彼女の「帰属意識の傷」の疼きからきた「声なき宣言(p.298)」だったのですが,これが原因で,彼女は友人たちと極端なコミュニケーションをとってしまっていたと分かったのです。

 さて,トリシュの中で疼いていた「帰属意識の傷」が,友人との健全なコミュニケーションを妨げていることが分かったところで,この対処についてはどうすればよいでしょうか。

 著者はトリシュに,このように伝えました。
子どもの頃にとても傷ついたのは,あなたの経験をないがしろにされたからです。両親には,彼らに必要なことではなく,あなたに必要なことを考えてほしかった。でも,ある意味ではあなたも同じことをしていると思いませんか。(p.299)。」
 著者は,彼女の「両親にしてほしかったこと」つまり「両親がトリシュの経験を,否定したり見ないふりをするのではなく,認めて,受け入れること」という望みが,「帰属意識の傷」の疼きとして出た際に,自分の大切な友人たちに対して,「自分が両親にされたこと」つまり「不当な態度」をとるという行動として表れてしまっているのではないかと伝えました。


続けて「友人たちはもっと思いやりを求めています。ここで成長することは,ずっと前にあなたが望んでいたように,相手にとって必要なものを大事にしなければいけません。(p.299)」とも伝えました。

 この言葉を,トリシュは納得し理解できたようでした。この時の彼女に必要だったものは,友人たちに,なぜ思いやりのない辛辣なコミュニケーションをとってしまっていたのか,帰属意識の傷をどのように活性化させていたかを伝えることでした。

 そして,結果的に,友人たちはトリシュの帰属意識の傷について理解を示し,支えてくれる存在になったのでした。

 少し分かりづらかったかもしれませんが,トリシュの事例で重要なのは,「心の根元にある傷」が活性化するとき,自分では意識していなくとも,他者を辛辣に扱うようなコミュニケーションをとることもあるということです。

著者は,そのときに大切なのは,「(心の根元にある傷が)自分のコミュニケーションにどう影響しているか考えて(p.301)」みることであると言います。その際に「大人たちがどのようにコミュニケーションをとっていたか,そのコミュニケーションのスタイルが(トリシュの事例で言えば帰属願望に)どう影響したか,それをもっと探ってもいい(p.301-302)」とも述べています。


さて,中編ですが事例を掘り下げて見てきました。

次回は,「Chapter9 コミュニケーション」の後編を読んでいきます。

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