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#エモいってなんですか?〜心揺さぶられるnoteマガジン〜

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理屈ではなく何か感情がゆさぶられるそんなnoteたちを集めています。なんとなく涙を流したい夜、甘い時間を過ごしたい時そんなときに読んでいただきたいマガジンです。
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#恋愛

ラブホテルに愛なんてないよ

相方は眠ってしまった。コンビニで買った、小さな日本酒の瓶を抱えて。ここら辺の相場よりちょっと高いよ、と言っていたラブホテルの一室。換気扇の音がうるさくて、スイッチを探した。 ラブホテルは、とても素晴らしいと思う。ラブホテル、という響きに、人々はあまりいい顔をしないけれど、今まで彼氏との貧乏旅行で泊まってきたホテルを思い出すと、あれならラブホテルの方がよかったな、と思ってしまうことが多々。ちなみに、彼氏と泊まった部屋のことは全く覚えていないくせに、毎回違うラブホテルの場所も、

つかまらないタクシー、六本木。13Fからの安っぽい夜景の秋

気づくと君が座ってたソファのはじっこを見てしまう、少し肌寒くなってきた朝。ベッドでふわふわの白い毛布にくるまったままの私は密やかにミントの息をしている。息していいの?頭の中の自分にときどきそんなことを聞いてみたりする。 返事こないって分かってるのにまたLINEしてしまった。誰にも読まれないメッセージが宙に消えていく。赤や黄色になった葉が地面の方へふわりふわりと舞うように、一個ずつバラバラに空中分解していく文字。 毎年秋はこうやって始まる。 スタバのチョコレートマロンフラペチ

【小説】桜木町で、君の姿を

私の名前は「あみん」 変わってる名前だ。 親が昔はやった歌手から名づけたのだ。 一番ヒットしたのは『待つわ』という曲。 サビの歌詞はこう。 両親的には 忍耐力のある子に育つようにとの思いをこめたらしい。 そのせいもあってか 私は待つのが得意だ。 今日も私は待っている。 何を? 私の“運命”の人を。 私の運命の人は この桜木町のどこかにいるかもしれないのだ。 範囲広すぎ? そうかもしれない。 それでも私は待ち続ける。 奇跡が起こるのを。 * あれは今から三年前

「許すこと」が正解でなくてもいいだろう

クズ男に夢中だったあの頃、わたしは「いい女」になりたくて仕方がなかった。言われたこと、されたこと、ひとつひとつに一喜一憂しては、彼が惚れるに値する女になりたくて、彼のタイプになることだけを考えていたように思う。恋に傷ついた女というのは、夜になると昼間の何倍もめんどくさくなりがちで、それは理屈では説明ができないひとつの習性なのかもしれない。嫌なことがあったときこそ、早寝早起きをして三食きちんと食べることにしてはいるものの、ダメージを受けた直後に限っては順守してきたマイルールが通

いとしき隣人へ

ずいぶん前のことだけれど、そばにいてくれるだけでいい人がいた。 話を聞いてくれるだけでいい。 ご飯を食べるときに同じテーブルにいてくれるだけでいい。 横断歩道のないところを一緒に渡ってくれるだけでいい。 泣いてる私のとなりに座ってくれるだけでいい。 文句の止まらない私に大量の副流煙を吸わせても、やる気が出なくてもだもだしている私にスマホゲームの音を聞かせても、締め切り前に必死にレポートを終わらせようとしている私の目の前で寝ていてもいい。 そこにいてくれるだけでいい。 私に

タバコと万華鏡

我々は、心の通った人たちの落とした欠片を拾い集めた集合体に過ぎない。 元恋人が貸したまま譲ってくれた部屋着のパーカーを今も着ている。 ウォークマンに入れられた、自分では聞かないようなロックを今も口ずさんでいる。 使っていたいい匂いのする柔軟剤。ピアス。電話ぐせ。思いの伝え方。 上手な別れ方。 人は裏切るということ。 小さなころは世の中の嫌なことに逐一傷ついていた。 人は生まれながらにして、誰かに教わるでもなく裏切り方を知っているが、裏切られることに対して我々はあまりに

わたしの二番目の恋の話をしよう

わたしの二番目の恋。それは小学一年生の頃。「恋」なんてたいそうな言い方をしてみたけれど、何てことない子供の記憶。 幼い頃のわたしといえば、クラスで分からないと困っている人の宿題を全てやってしまったり、誰も進んでやりたがらない人前に立ってやる仕事をずっとやり続けすぎて先生に「一度やった人は出来ない」とルールを書き加えられたり、クラスのガキ大将に歯向かってカチューシャを割られたりしていた。ちょっとした問題行動として親が担任に呼ばれたのは今だから分かる話だ。コーヒー牛乳が飲めなく

クリスマスが近づくといつも

好きかどうかわからない時、たいていの場合好きじゃない。好きじゃないことを受け入れたくなくて、わからないとかいってるだけだ。 はじめて人を好きになったのは、中学3年生のころ。15歳だったけど、ちゃんとこれはほんものだってわかった。クリスマスが近づいて、毎年思い出す。 * * * 塾が終わって、駅からバスに乗った。一番後ろのはじっこの席に座って、大きな公園のそばの終点まで。イルミネーションなんてない街を眺める。ダッフルコートのトグルを上まで留めて、フードまでかぶって、バス停

エイトビートの恋人

「この小説の主人公が君にすごく似ているんだよね」 あのひとにそう言われて、学校が終わったあとすぐにJR名古屋高島屋の8階にある三省堂へと走った。愛知の田舎町から電車で1時間かけて名古屋の私立高校へ通っていたわたしにとって、こことタワーレコード近鉄パッセ店は心のオアシスのような場所だった。 真っ先に文庫本コーナーへと向かい、食わず嫌いしていた大人気作家の名前を探す。出版社ごとに分けられ、所狭しと並んだ背表紙を目で追う。 ここじゃない、ここでもない、置いてないかもしれないな…

何より憂鬱なのは、秋が終わってしまうこと

打ち合わせ先からオフィスに戻る途中、突然雨に降られた。雨降るなんて聞いてない。打ち合わせ中に窓の外が暗くてああもう日が暮れたんだな、日が短くなったな、なんてのんきに考えてた。なんで雨雲だって気づかなかったんだろう。外にいたら絶対に匂いで分かるのに、とちょっと自分の衰えた野生の勘を恨めしく思った。もちろん折り畳み傘なんて持ってない。最悪だ。あの日と同じように突然雨に降られて私の前髪は早くも台無しになった。でも今日はもう帰るだけだから別にいいんだ。全然可愛くない私で君に会うよりず

深夜2時、首都高の下で愛を

当たり前のように振られた彼女は、それはそれは穏やかに恋をしていた。私からみれば、穏やかではない恋だった。でも、彼女はあくまでマイペースに、穏やかに恋をしていた。 それにしても勇気ある行動だった。呼び出して告白なんて。しかも、深夜の首都高の下で。告白して、簡単に言えば振られた。彼女はせいせいした顔をしていた。多分、いちばん終わらせたかったのは彼女自身だったのだと思う。はっきりすっきりさせた彼女は賢かった。私と違って。 私ならそんな人好きにならない。彼女の話を聞きながら何度も

誰かに髪の毛を乾かしてもらうとき、目を閉じると君にしてもらってるみたいで好き

ドライヤーが壊れたのは3日前だった。髪の毛を乾かしているとどんどんモーター音が大きくなってきて、なんと火花まで飛ぶようになった。増税前に買い換えるんだった、と少しだけ後悔して新宿ビックロに行き、モデルチェンジで安くなってたパナソニックのナノケアを買った。マイナスイオンの1000倍以上の水分を含む「ナノイー」なるものが発生するらしい。おかげで私の髪はするんするんのまとまりのあるサラサラ髪へと生まれ変わった。 私は髪の毛がコンプレックスだった。くせ毛で細くてふわふわしてすぐに絡

それはもう、ただの好きな人だよ

そんなことない。そんなことないと何度も何度も自分の中で答えを探す。けれども、私が欲しい答えは見つからなくて、ただただどろっとした黒いかたまりが心から漏れ出ているだけだった。ぐるぐると回る回る回る… そうやって考えている時点で答えは出てるじゃんか、と友人は言う。まだ割り切れるもん、と壊れたおもちゃのように繰り返す私に、彼女は何度も食い下がる。 ずっと未読だったLINE。勇気を出して再送した私のメッセージには、仕事が忙しくて返信できないとの返事があった。そうしてそれから、返信

君のことなんか、大好きでしかない

「で、これからどうするの?」 君が静かに、探るように放った一言に私は何も言えなかった。私はどうしたいんだろう。私は君とどうなりたいんだろう。目の前にはただ君が好きっていう刹那的な感情と君に抱かれたいっていう欲望が綺麗に二つきっとほとんど同じ大きさあるいは質量で並べられている。でもそれは目の前にしかなくて、数メートル先には何もなかった。暗闇、違う、そんなネガティブすぎる表現じゃなく、空虚あるいは煙に近い。見えそうで見えないもの、形のないもの、実態を掴めないもの。君のことなんか