[連作短歌]ダーク

地球には飽きてしまった舟が出てすぐ窓際に写真を置いた

大気圏内シェルターが外れてもふりきれないでいる逡巡が

火星はいま砂嵐らし 屈強な男の憂い、娘の棲む街

街灯のない宇宙では星がより白いよ、天国からもみえるか

ニゲダシと呼ばれてもなおおそろしくある泣き顔のままの死に顔

完璧なるダークのなかで幻の君を視る。まだ息をしてゐる。

くだものと朝がまた来て遊離したような土曜日は夢の中で

5回目の最後の喧嘩きゅうくつ、の声ふるえだす5回目の夢

この宙に満ちていく君 終わりまでみつめておくれおろかな僕を

着陸用シェルター、轟音、さよならを告げる和声、纏わりつく光り

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