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親切な暗殺 #毎週ショートショートnote

身寄りのない私がある男に拾われたのは年端も行かない頃。
その後私は男の元で腕を磨き、今では依頼の絶えない立派な暗殺者になった。

しかし、それも今日で終わりだ。


「私、この仕事から足を洗うわ。でもその前に殺したい人がいるの」

「暗殺者は自分の意志では殺さない」

「じゃあ、これは10年前の私からの依頼」

「ほぅ。誰を殺れと?」

「私を拾った男。もう誰にも頼らずに生きていけるようになったから、暗殺するの」

「暗殺者を暗殺か。面白い」

「この業界にも、この社会のどこにも存在しないくらい綺麗に暗殺者としてのあなたを消すことができたら、あなたのこの先の人生、私にくれる?」

「ははは、職も存在をも失った俺をどうする」

「家族にする。暗殺者は弟子は取るけど家族は作らないんでしょ?だから悪いけど、あなたには暗殺者として消えてもらいたいの」

「なるほど、なかなか強欲な依頼主のようだ」

「依頼主は強欲だし、請負人は凄腕よ」

「ふん、師匠が一流だからな」


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