あの日のダメージジーンズは未来につながっていた、のかもしれない。

あれは確か小中学生くらいの時のこと。
私はあるものを欲しがっていた。
ダメージジーンズだ。

当時、世間ではダメージジーンズが流行っていた。流行に乗っかりたい年頃の私は、服屋の前を通る度に「こういうのが欲しい!」と母にねだる。

しかし母は言う。

「ジーパンなんて家にいっぱいあるでしょ」

違う。違うのだ。
家にあるのは普通のジーンズ。
私が欲しいのは、膝や腿あたりのデニムがほつれてるやつ。中でも欲しがっていたのは、とある店で見かけたダメージの奥にチェックなどのカラフルな布が見えてるやつ。
当時、当て布が施されたタイプなども流行っていた。

「こんなのわざわざ買わなくたって家にある布で作れそう。これが流行ってるの〜?」

母には流行もおねだりも通用しなかった。
しかし、この言葉から私はひらめいてしまう。

実は店の服を欲しがっていたものの、私にはちょっと不満があった。
この田舎町で人々が服を買う場所なんて限られている。
大体皆同じような所で購入するため、友達とかぶってしまったり「これ〇〇の服でしょ」なんて買った店までわかってしまうような環境だった。

それなら...履き古したジーンズに自分でダメージを施して好きな布を当てれば、お金もかからず自分だけのダメージジーンズができてしまうのでは?
私はこっそり動き出した。

「ねぇお父さん、これ使っていい?」

「え?あぁ、気に入ったならどうぞ」

「ねぇお兄ちゃん、このパジャマまだ着る?」

「着る。お前には大きいしあげないよ」

ほぅ、そうですか。

数日後、私はお手製のダメージに色々な所から入手した布を裏から当て、母に手伝ってもらいながらオリジナルジーンズを作り上げた。
ウキウキ履いているとしばらくして、父と兄が気づく。

「おや、あんなところに私のハンカチが」

「あ!それ俺のパジャマの胸ポケットじゃん!なんか変だと思ったら」

ふふふ。
何のことでしょうかと逃げる私。
いいじゃん。ハンカチも使ってなかったし、ポケットがなくてもパジャマは着れるよね。
私のジーンズについてる方が、かっこいいもん。

「お父さん、お兄ちゃん、これもSDGsだよ」

あの頃はまだそんな言葉はなかったけれど、今ならそう答えたかもしれない。

無理に買わなくたって、今あるものからよいものは作れる。
父と兄には優しくない私だったが、今思い返すと地球には優しかった、のかな。
もしかするとあなたの周りにも、未来につながる小さなことがあるかもしれない。

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