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ギフト

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#学校

[小説]ギフト ~豊中~

[小説]ギフト ~豊中~

 みんなの視線がおれに集まっているのがわかる。おれは草をむしり続けていた。

「橘~?お前に聞いてんだけど。無視しないで~」

豊中は首を伸ばし、おれの方を向いておどけた感じで改めて聞いてきた。

「・・・兄貴がいる」

おれは草をむしりながら、ぼそっと答えた。

「へぇ~!お前も兄貴いるんだ?ひとり?いくつなんだよ兄貴は」

豊中はおれの横に場所を移動してさらに質問してくる。めんどくせぇと思いな

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[小説]ギフト~渡辺陽太~

[小説]ギフト~渡辺陽太~

 あいつと同じ掃除場所になるなんて・・・、と一瞬落ち込んだものの、さっさと終わらせて帰ればいいだけだと気持ちを切り替える。メンバーはおれとあいつと他に男子2人、女子2人だった。場所は中庭。暑い中で外の掃除はさらに気分を憂鬱にさせる。

「具体的に何やればいいんだ?中庭の掃除って」

みんなで移動する中、豊中が両手を頭の後ろに組んで伸びをしながら言う。

「とりあえず掃いときゃいいんじゃないの?」

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[小説]ギフト ~出会い~

[小説]ギフト ~出会い~

 あいつを見かけたのは中学の入学式。母親に制服の裾を直され、髪の毛を手ぐしで直されていた。あいつはそれを当たり前のように受け入れていて、なんなら少しうざそうにしていた。

 ムカつく。

 あいつの第一印象。

 そんなムカついたやつとクラスが一緒だと気づいたのは教室に入った時。あいつは一番前の席に座るやつの前に立ち、他数人と談笑していた。なんだかその笑った顔さえもムカついた。

 そうか、おれは

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[小説]ギフト~上から3番目のあいつ~

[小説]ギフト~上から3番目のあいつ~

 なんか鼻につくあいつはどうやら6人キョウダイの上から3番目らしい。一番上は姉で高校2年生。二番目は兄でこの中学の3年生だそうだ。他の同級生の真新しいカバンと違い、薄く、カバンの下の角は茶色い部分が見えていた。制服も少しくたびれていて、おしりや膝の部分が少しテカっている。あいつはお下がりなんだと文句を言っていた。でもそのつぶれたカバンも少しくたびれた制服も、真新しい物を纏った同級生には「なんかかっ

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[小説]ギフト〜サッカー部〜

[小説]ギフト〜サッカー部〜

 この中学に帰宅部はない。みんな何かしらの部に属さなければいけない。入学してしばらくすると仮入部の申請ができる。おれは小学校の頃からサッカーをやっていたから、サッカー部に入ろうと思っていた。

 仮入部の申請を出しにいざサッカー部のグラウンドに行くと、あいつがいた。内心、チッと思いながらもどうやら仮入部の人数は30人を超えてる。あいつと関わることはそうないだろうと思った。

「ゆーうと!!」

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[小説]ギフト ~続くイライラ~

[小説]ギフト ~続くイライラ~

 気がつけばあっという間に毎日は過ぎ、6月。もう梅雨を吹っ飛ばして夏が来たのかと思うぐらい暑い。ワイシャツの下の白Tを日に3回くらい着替えたいほどだ。
 同じクラスといえど、関わろうとしなければあいつとは何の接点もない。サッカー部でも特に組まされることもないから穏やかに過ぎている。ただ、やっぱり視界に入るだけでイラつく。なんであいつのことがこんなにイラついてしまうのかわからない。ただただイラつく。

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