徒然だいすけ

1児の父でサラリーマンです。資格維持に向けた読書や映画等の鑑賞、子供との思い出、その時…

徒然だいすけ

1児の父でサラリーマンです。資格維持に向けた読書や映画等の鑑賞、子供との思い出、その時々に思いついたことなどを記録していきたい思います。

最近の記事

【読書】死者の奢り・飼育

著者:大江健三郎 6つの短編が集められた作品で、本のタイトルになっている”死者の奢り”と”飼育”は短編のタイトルになります。 “死者の奢り”は、医学部で使用するための死体を管理するアルバイトをしている大学生の話、”飼育”はとある集落に墜落した戦闘機に乗っていた敵兵の生き残りを捕虜として飼う村民達の話でした。 いずれの話も、特殊な環境下における”ヒト”の扱い方と、扱う者たちの日常が描かれているのですが、その様子が特別な情景もなく淡々と当たり前のように描写されており、”人”

    • 【読書】壁

      著者:安部公房 自分の名前を失ってしまった男性が、非現実的な世界の中でさまざまな怪現象に巻き込まれる物語です。 冒頭、主人公の男性は目覚めた時から違和感を覚えており、それが自分の名前にまつわる記憶と記録の一切がなくなっていることに気がついてから物語が始まります。 そこから後は、独特の口調の人物やキャラクターとクセのある世界観が入れ替わり立ち替わりで登場し、主人公がそれらに翻弄されていくというストーリーになっています。 私は本作を予備知識なしで読んだため、冒頭から異質な雰

      • 【読書】ポトスライムの舟

        著者:津村記久子 ライン工で働く女性が、職場に貼られていた世界一周旅行のポスターをきっかけに、旅行代金を貯めるため過ごした1年間を追いかけたお話です。 1年間貯金をするといっても驚くような節約するわけではなく、むしろ学生時代の友人との付き合いに参加したりなど、ごく普通の生活がのんびりと続いていきます。 本作の主人公は、目についたものに興味が惹かれ、そこに思考が奪われていくような事が多くあり、まさにのらりくらりといった緊張感のない緩い空気感で最後まで満ち溢れてました。

        • 【読書】苦役列車

          著者:西村賢太 人付き合いが上手でない男の子が、小学生の時に父が性犯罪で逮捕された事がきっかけで更に人との関わりが希薄になり、中学卒業後に家を離れて日雇いの仕事をして食い繋いでいくところから物語が始まります。 主人公の貫多は幼少からの育ち方が影響してか暴力的で卑屈であるため、日雇いの仕事をしてからも誰とも友好関係を築けぬまま月日が経ってしまいます。ところがある日、仕事場に向かうバスの席が隣になったことがきっかけで同年代の日下部と話をするようになっていきます。するとだんだん

        【読書】死者の奢り・飼育

          【読書】ブラックボックス

          著者:砂川文次 自転車便のメッセンジャーとして働く男性の生活と自身の人生観について追いかけた物語です。 本作は、前後半で大きく場面が異なる構成で物語が語られております。前半ではメッセンジャーとして活躍する日常を詳細に描写し、毎日を忙しくも過ごしながらも保証のない将来に漠然とした不安を感じている内容でした。また、主人公は何かしらのきっかけがあった時に暴力的な衝動を抑えることができず、それが理由で職を転々としてきたと言う過去があります。もともと実家を離れたのも家庭環境の悪さか

          【読書】ブラックボックス

          【読書】共喰い

          著者:田中慎弥 セックスと暴力に溺れる父を持つ男子中学生が、自らも父と同じであることに気がつき自らを呪う物語です。 父のことを悪だと思いつつも、恋人との関係において自分の中にも父と似た欲望が存在していることを認識するようになります。その後、生みの母、育ての母など様々な人たちとの関わりながら、恋人を守りたい気持ちと自身の欲望との狭間で苦しく、もがく姿が描かれております。 重たい背景の中、中学生という多感な時期も重なり、段々と自分への恐怖心が強くなる構成になっており、終盤か

          【読書】共喰い

          【読書】爪と目

          著者:藤野可織 感情の一部が欠落したかのような思想・思考を持つ人物の物語が3つ収録された作品です。最もボリュームのある作品が本の名前にもなっている”爪と目”でした。 “爪と目”は、幼少期に母を亡くした女の子が、父と共に同棲している女性を日々観察して感じたことを語り続けていく話です。 女の子は3歳の幼稚園児でありながらも考え方や言葉遣いが不自然なほどに成熟しているため、一見するとこの話は大人になった女の子が過去を回想しているものなのかとも取れました。しかし、この点について

          【読書】爪と目

          【読書】スクラップ・アンド・ビルド

          著者:羽田圭介 要介護の祖父と同居する20代後半の男性が、祖父が「死にたい」と口にすることを受けて、苦痛と恐怖のない尊厳死を実現させるために日々様々な工夫と努力を続ける物語です。 男性は同居する母とともに祖父の痴呆と体力の回復を目指して、自律的行動を起こせるようにと我慢強く介護をおこなってきました。しかし、この方法では介護をする人の負担が大きく、母と主人公は「祖父が死んだならばどれだけ楽な事か」と考えるようになります。 加えて祖父が口にする「死にたい」という言葉を聞いた男

          【読書】スクラップ・アンド・ビルド

          【読書】むらさきのスカートの女

          著者:今村夏子 街中で”むらさきのスカートの女”と言う名で噂になっているとされる女性に興味を持ち、ひたすら追いかけ続ける1人の女性の物語です。 最初に見かけた時の”むらさきのスカートの女”は髪がボサボサで、無口で、いつも公園のベンチに1人で座っているという特徴から暗い性格のイメージがありましたが、その後仕事を見つけてからは職場での経験や人との繋がりによって少しずつオープンな性格に変化していきます。 一方で、本作は主人公の女性目線で物語が描かれているのですが、客観的に主人公

          【読書】むらさきのスカートの女

          【読書】勝手にふるえてろ

          著者:綿谷りさ 経理部で働く恋愛未経験の女性が、中学時代から同級生の男の子に寄せ続けている思いと、自分に好意を抱いた同僚男性への思いの間で揺れ動く話です。 主人公は俗に言う“拗らせた人”で、とてもクセのある思想を持っており、物語の開始直後からその主人公の思考を特徴的な言い回しで表現しています。 また、物語は現実の時間で見ると大したボリュームではなく重要な出来事も少ないのですが、前述の通り事あるごとに主人公の思考の世界に誘われるため、どちらかと言うと主人公の頭の中がメインの

          【読書】勝手にふるえてろ

          【読書】酒に溺れた人魚姫、海の仲間を食い散らかす

          著者:酒村ゆっけ 身の回りにあるものを主役として創作した物語の短編集です。 ふとした時に目についた口紅や花、寝転んでいる飼い猫、乱雑に並べられた酒など、様々なものたちを独自の世界観の登場人物にして描いたストーリーはユーモアに富んでいる一方でどこか物悲しかったり、陰鬱でゾクッとする雰囲気を漂わせるお話が多かったです。 どの話も独特な世界観が広がっており、中には最後の最後で驚くような展開になる話もあり、空想物語の幕の内弁当のように一冊でさまざまなジャンルの短編作品を楽しめま

          【読書】酒に溺れた人魚姫、海の仲間を食い散らかす

          【読書】推し、燃ゆ

          著者:宇佐美りん 自分の生活を捧げて追いかけるアイドルである“推し”が、ファンに暴力を振るったことがきっかけで世間からバッシングを受けてしまいます。それでも主人公の女子高生は“推し”を知り、解釈するために追いかけ続けるという、かなりディープなアイドルオタクの話です。 主人公は“推し”を推すことのみが生き甲斐であり、そのための費用を稼ぐために限界までアルバイトをしているからか、学業は疎かになっており、その影響で家族との関係も良くありません。 そんな生活を続けた果てに学校を中

          【読書】推し、燃ゆ

          【読書】木になった亜沙

          著者:今村夏子 主人公が何かしらに転生する話の短編集です。 どの話もそれぞれ独特の世界観があり、転生先も無機物から人間以外の哺乳類になったりとさまざまな視点で物語が描かれていました。 この本の中では、一貫して我々人間の生活にある程度近い距離の何かに転生しており、それ故に同じ世界であっても少し目線を変えるだけで全く違う見方ができる気がしました。 一見すると“変”であるものこそ、じっくりと観察することで今まで知り得なかった新たな気づきが得られることがあるという事を教えてく

          【読書】木になった亜沙

          無料の大型アスレチック公園@山梨

          施設名:桂川ウェルネスパーク 娘と、日帰りで、高速道路を使って、目一杯外で遊べる場所に行こう!! ということでいろいろと調べたところ、山梨県大月市にある公園を見つけました。 こちらの公園は西・中央・東でエリアが分かれております。 西にはレストランと大型遊具、中央は里山体験施設と少し範囲度の高いアスレチックや芝生・運動広場、そして東はバーベキュー場と山の中を通る散策路があります。 エリアが分かれていると言ってもすべて無料で無制限なので、時間と体力があれば遊び放題な場所です。

          無料の大型アスレチック公園@山梨

          【読書】コンビニ人間

          著者:村田沙耶香 幼稚園児の時から倫理観が欠如していて、周りから言われたことに対して非道徳的な発言や行動をしてまったために集団から外れてしまった女の子の物語です。 大学一年になってコンビニ店員のアルバイトを始めたことがきっかけで、”マニュアルに従って他人に求められる仕事をこなすこと”を身につけるようになるのですが、その後18年間の自身の生活の全てをコンビニの仕事に捧げてきたため、勤務時における信頼は高いものの、偏って屈折した考え方に凝り固まったまま36歳を迎えます。 更に

          【読書】コンビニ人間

          【読書】星の子

          著者:今村夏子 主人公の女の子が幼少期に病気を患ったことが理由で両親が宗教にはまってしまい、自身も何の疑いもなく親の信仰に従ってしまうところから話が始まります。 しかし、中学生になってから徐々に周囲とのギャップを認識し始め、いろいろな出来事を経て中立的な目線で物事を捉えようと足掻くようになります。 本作は全体を通して情景描写が少なく、また核心をつかない表現がされているため、常に不穏な雰囲気を感じ取れます。 また、中盤以降では会話や地の文から主人公が疑心暗鬼なっている様子が

          【読書】星の子