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今、苦しんで生きている人のための読書のすすめ

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記事一覧

今苦しんでいる人のための読書のすすめ其の六

竹中平蔵氏は、今や諸悪の根源とされる格差社会の生みの親のような言われようだが、2000年に出版された、「経済って、そういうこと、だったのか会議」という本は印象深く、その後ビジネスに勤しんだ僕に深い影響を与えた。確かまだ、竹中氏は政治の世界に首を突っ込む前だったと思う。団子さん兄弟の生みの親の、天才、佐藤雅彦氏との対談形式でわかりやすく、噛み砕いて、経済学の基礎の基礎を語った本書であるが、全くそんな

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今苦しんでいる人のための読書のすすめ其の伍

高野悦子女史の「二十歳の原点」は孤独な青春を生き延びるために僕には必要だった本だ。18歳の時に高円寺の古本屋で百円で買ったが、たった百円が僕の命を救ったと言っていい。
当時、東京、特に僕の住んでいた杉並区は、猛威を奮っていたカルト宗教集団、「オウム真理教」の巣窟であった。比較的インテリの若者が、恐るべきカリスマ麻原彰晃こと松本ちずお、に盲信し、人の命を奪った陰惨な事件を、その後起こすことになる。オ

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今苦しんでいる人のための読書のすすめ其の四

他人の足、という大江健三郎氏の短編小説がある。
なかなかの暴力的な攻撃的な作家で、十代のころは大いに影響を受けた。
「特別な人間」という存在は実際にある。そして、そくな存在と出会うたびに、自分が「特別」ではないことに否応なしに気づかされ、自身の限界を感じ、過酷な現実との歩み寄り、こそが、苦しい青春期の仕事である。
それはとてつもなく残酷な体験なので、ある程度は先送りされなければならない。幼少期に親

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今苦しんでいる人のための読書のすすめ其の三

銀色夏生の「つれづれノート」一巻目には衝撃を受けた。
青春詩や80年台のポップカルチャーを築いていた偉大な作家だが、当時では珍しく、人間「銀色夏生」を剥き出しにした、本当の日記だった。しかし、偶然のなせる技か、この本一冊の中に起承転結があり、当時プルーストの圧縮版を同時に読んでいたが、「失われた時を求めて」と、この本がコンセプトが同じである、と感じ、読んでいて涙が止まらなかったのをよく憶えている。

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今苦しんでいる人のための読書のすすめ其の壱

村上春樹さんが書いたノルウェーの森という小説がありますがこの小説はできるだけ18歳から20歳までに読むべき本だとぼくは思っております。ちょうど子供から大人に変わるその重要な時期でにおいて青春を生きる人々は恋愛や社会の過酷さをガラス越しから少し見て孤独に苦しんでることだと思います。この日本という国は不思議なことに本当のことを言わないという文化があります。察しろということと思います。その日本の独特なコ

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今苦しんでいる人の読書のすすめ其の二

「限りなく透明に近いブルー」は其の昔、センセーショナルな内容と、22歳という当時としては若い村上龍さん、という天才が書いた小説です。内容は、ドラッグとセックスに溺れ、グダグダな私生活を送る若者「りゅう」が狂気に落ちていく、というものですが、ストーリーはあってないようなものですね。しかし、この小説には不思議な魅力というか中毒性があり、読んでいるだけでラリって来るような効果があります。なぜなら、本人の

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