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大規模修繕工事とは?工事内容やメリット、実施目安などを解説

どれだけ頑丈に造られたマンションでも経年劣化は生じます。このため、適切な時期に大規模修繕工事を実施して住民の安全性や資産価値を守っていく必要があるのです。

この記事は以下のような方におすすめ

  • 大規模修繕工事が何なのか詳しく知りたい

  • 前回の大規模修繕工事から10年以上経過している

  • 自分のマンションで大規模修繕工事が必要か知りたい

本記事では「そもそも大規模修繕工事とは何なのか?」という疑問から、費用や期間、具体的な施工内容について詳細に解説。

また、大規模修繕工事に設計監理方式を導入するメリットについても一級建築士という立場からご紹介します。




大規模修繕工事とは

大規模修繕工事とは、マンションの築年数が経過することで発生する経年劣化などを直すことを目的として行われる工事を指します。

ただし、小規模の修繕工事は含まれず、基本的に足場を組んで行われるような大規模な工事を大規模修繕工事と呼びます。

現代は建築基準法が整備され、マンションには最低限の防水性や耐水性が保証されているものの、風雨などによる劣化を完全に防ぐことはできません。

修繕と改修の違い

マンションを保有していると、修繕工事・改修工事という言葉を聞いたことがあるでしょう。

業者においても、この2つを分けて提案することが多く、今後大規模修繕工事を考えている場合には言葉の意味を理解する必要があります。

そこで本項では、修繕・改修の意味について説明をします。

修繕工事

修繕工事とは、建築当時の水準にまで建物の性能を回復させることを目的として工事です。例えば、傷んで使えなくなった扉を直して問題なく使用できるようにするような工事を指します。

改修工事

改修工事とは、建築当時の水準以上に建物の性能を向上させることを目的とした工事です。

建築時から十年も経過すると住宅における技術革新も生じるでしょう。そのような進歩的技術を新たに取り入れるなど、マンションをグレードアップすることは資産価値の向上にも繋がるのです。

大規模修繕工事の費用

国土交通省の調べによると、大規模修繕工事における一戸あたりの費用は以下のようになっています。

  • 75万円~100万円:30.6%

  • 100万円~125万円:24.7%

  • 50 万円~75万円:13.8%

参考:マンション大規模修繕工事に関する実態調査 – 国土交通省

この結果から、大規模修繕工事を検討しているマンションの概ねの予算が計算できるでしょう。

大規模修繕工事の期間

大規模修繕工事の期間は、大きく分けて以下2つに分けられます。

  • 計画から着工:最大2年

  • 着工から修繕完了:3〜4ヶ月(50戸以下)、4ヶ月〜1年以上(50戸~500戸以上)

計画から着工

大規模修繕工事は共用部を対象とした工事です。このため、住民全体に影響を与えるので、住民からの同意が必要となります。

住民から同意を得るためには、下記の過程が求められます。

  1. 大規模修繕工事の計画作成

  2. 大規模修繕工事の計画の説明会開催

  3. 計画に対する住民の同意獲得

着工から修繕完了

工事期間はマンション周囲に足場が組まれ、作業員が建物内に出入りします。この際バルコニー使用など日常生活に制限がかかることがあるので、住民から理解が得られるように周知徹底を心がけましょう。


大規模修繕工事のメリット

大規模修繕工事は住民の安全を守るための義務的な側面もありますが、実施にあたりメリットもあるのです。本項では、大規模修繕工事のメリットについて解説をします。

日々の暮らしが快適になる

大規模修繕工事の恩恵を最大に受けるのは、マンションの住民です。

経年劣化により性能が低下した給排水システムの回復、電気容量不足の解消など、日々の生活で実感できる改善を肌で感じることができます。

住民の満足度向上は、結果として居住年数の長期化にも繋がります。つまり、大規模修繕工事は貸主・借主にWin-Winの関係をもたらします。

安全性の向上

大規模修繕工事によって、耐震性・防水性の向上など、生活安全性の向上を実現することができます。

また、修繕工事と共に改修工事を行う場合も見られます。この場合、セキュリティシステムの導入やバリアフリー化、宅配ロッカーや共用倉庫の設置など快適性の向上も行うことができます。

修繕工事が定期的に行われることで、マンション性能が担保されていることが伝わり、住民の安心感にも繋がります。

資産価値の維持

大規模修繕工事によって建築当時の性能に回復することで、マンションの資産価値を維持することができます。建築当時は同程度のマンションであったとしても、修繕頻度が低いものと高いもので比べると時間が経つにつれてグレードの差は大きくなります。


大規模修繕工事の内容

大規模修繕工事と一口に言っても、いくつかの作業に細分化することができます。

仮設工事

仮設工事とは、現場事務所や足場、メッシュシートなどの設置を行う工事です。これらは施工に必要な設備であり、住民・作業員の安全性を確保するために必要な作業となります。

下地補修工事

下地補修工事とは、外壁・内壁・天井などに生じた劣化(ひび割れなど)を補修する工事です。下地工事の出来は、マンションの耐久性・防水性などにも直結します。

タイル補修工事

タイル補修工事とは、壁面のタイルの状況を目視・打診で確認し、補修を行う工事です。タイル補修を行うことは、外観の整備以外にも雨水の侵入防止やタイルの落下防止などにも寄与します。

シーリング工事

シーリング工事とは、外壁の間やサッシ周辺に使用されるシーリング材を交換する工事です。シーリング材を交換することで、雨水の帽子や断熱性の向上などが期待できます。

外壁塗装工事

外壁塗装工事とは、下地の上から新たに塗料を塗る工事のことです。現在塗られている塗料の状態によって、重ね塗り・除去後に塗装のどちらかを行います。

鉄部塗装工事

鉄部塗装工事とは、階段や手すり、扉などに使用されている鉄部の錆を落とし、新たに塗料をぬる工事を指します。塗料を塗ることで外観が整備されることはもちろん、耐久性の向上にも繋がります。

防水工事

防水工事とは、マンションのあらゆる箇所において水の侵入の可能性がある部分に必要な防水施工を行うことを指します。防水加工を行うことで雨漏りなどを防げるとともに、浸水による劣化を防ぎマンションの寿命を大幅に伸ばすことが期待できます。

また防水工事には塗膜防水やシート防水など、様々な種類がありますので、設備点検報告書などを確認しながら最適な方法で施工しましょう。


その他

大規模修繕工事は10年、15年に一度の大掛かりな工事になるため、劣化箇所の修繕に加えて機能の改善・最新設備の導入なども検討しましょう。

近年では、バリアフリー化やオートロックの導入、宅配ボックスの設置などが人気です。このような改修工事は費用がかかりますが、マンションの資産価値を高めてくれます。

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