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21世紀は、技術的課題(Technical Challenges)から適応課題(Adaptive Challenges)の時代へ。

さて、少しテーマを変えて、私が専門にしているリーダーシップ関連の連載シリーズ第1段になります。

今回は、リーダーシップの大家であるRonald Heifetz教授(ハーバード大学)が提唱している、技術的課題(Technical Challenges)と適応課題(Adaptive Challenges)という概念が、社会課題解決に当たっての貴重な示唆を与えてくれると私にとっては感じましたので、紹介させていただきます!

1. 技術的課題(Technical Challenges)とは

技術的課題(Technical Challenges)とは、ある課題に対して、新たな知識やスキルを身につけることにより、特定の「正解」を導き出すことができる課題のことです。
産業革命時代〜20世紀にわたるまでは、このような課題として捉えられていたものも多かったと思います。

2. 適応課題(Adaptive Challenges)とは

これに対して、Heifetzは、21世紀における様々な課題は、技術的課題よりも適応課題(Adaptive Challenges)が主流を占めるようになってきたと主張します。

では、適応課題(Adaptive Challenges)とは何かといえば、正解はもとより、問題が何かということ自体についても、容易に特定が出来ない課題です。したがって、それに対処するには、単に知識やスキルを身につけるだけでは不十分であり、自らの「価値観」や「物の見方」を問い直す必要がある、ということです。

3. 同じ課題も、見方によって技術的課題にも適応課題にもなる

ここでポイントとなるのは、「ある特定の課題が、関係者の見方によっては技術的課題にも適応課題にもなる」ということです。

例えば・・・・
・困ったことを学校に言ってくる保護者に対して、クレーマー対応のマニュアルに基づいて対応することは、「技術的課題」としての対処ですが、「その保護者がどう困っているか」聞き出すことは、「適応課題」としての対処です。
・頭髪の校則違反をした生徒に対して、校則を単純に適用して厳しい指導をすることは、「技術的課題」としての対処ですが、「なぜその校則にそもそもなっているのか?」を問い直すことは、「適応課題」としての対処になります。

このように、技術的課題と適応課題の2つの完全に分けられるものではなく、混在している。そして、どちらの課題として捉えられるかは、関係者の解釈次第。とも言えることになります。

4. リーダーシップと現在の課題

これらを踏まえると、21世紀に求められるリーダーシップとは、不確定要素だらけの適応課題に対して、関係者による議論を巻き起こし、共に課題や解決策を見出していくことと考えられるのではないでしょうか。

他方、現在の政策を見ていると、適応課題に対して、「新たな知識・スキルを身につける」であったり、「人・モノ・カネを提供する」といった、いわば「技術的な解決策」で臨んでいることが多いと感じます。
もちろんそれは、(単にそういったものを提供すればいいだけなので)不確実性は少なく、また関係者も自分の価値観のアップデートを迫られることもないため、いわば「居心地の良い解決策」であると思います。しかし、本当にそれだけでいいのでしょうか。適応課題として目の前の課題を捉え、「居心地の悪い」変革に向けた一歩を踏み出すことが、複雑な課題を解決する上では必ず必要になってくるのだと思います。

ではどのように適応課題に対処していけば良いのか?次回以降はそれについても述べたいと思います!

<参考文献>
R. A. Heifetz & D. L. Laurie. (1997). The Work of Leadership. Harvard Business Review
R. A. Heifetz & M. Linsky. (2002). Leadership on the Line, Harvard Business School Press.

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