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星野リゾートのマーケター牧場を作る②"同志"との出会い

星野リゾートのマーケター牧場を作る①からの続編になります。

2017年4月12日に東京から北海道トマムにした私は、雪解け混じりの旧ゴルフ場を2週間後には「ファームエリア」という名称のエリアとしてスタートさせなくてはいけない直近の課題に直面していました。

直近の課題の為に、すぐに「アクティビティーチーム」と合流し行動を共にするのですが、このタイミングで星野リゾート トマム"ファーム事業"のもう一人の立ち上げメンバー「海野泰彦さん」と出会います。

前記事でも触れた会社が予め私のトマム赴任前にファーム事業に関して決めていた事2つの内の1つが、この「海野さん」でした。

海野さんは元々、北海道の帯広畜産大学を卒業後、2年の農協勤務を経て、道東の浜中町で酪農で新規就農。
その後農場併設のレストラン「ファームデザインズ」をオープンさせ、スイーツ事業などでも成功を収めた実業家であり、日本の6次産業界のパイオニアでもあります。出会った当時で56歳。

私、大学の卒業論文のテーマが「新規就農の受け入れ制度の現状と課題」(みたいな感じの内容)だったのですが、その2002年当時でも農家子弟以外が(婿入り等以外で)"農業に就職"する「新規就農」がチラホラと増え始めたという時代だったのです。

その20年近く前、「新規就農」というワードも存在しない時代に縁もゆかりもない、今よりもはるかに閉鎖的とされていた農村部に飛び込み、後に続く「農家子弟以外が農家になる」と言った職業の選択肢を作った、黎明期世代の一人が海野さんです。
その点、マジでリスペクト。


新規就農当時の海野さん
若い!!

浜中町での牧場事業を息子さんに引継ぎ、新たな事業フロンティアを求めていた所、前述の「自己紹介文」でも紹介した星野リゾートの"Sさん"と、「リゾートに牧場を作りたい」「農業と観光が密接に関わり、双方を盛り上げたい」という話で盛り上がり、両者が意気投合して、海野さんはトマムファーム事業に参画する事になったのです。

2015年頃から、海野さんはリゾート内に「ファームデザインズトマム店」をテナントとして運営しながら、時に牧草を植えるトライアルをしたり来るべきタイミングを待っていた、という事でした。

さすがに牛という命に関わる仕事を、未経験の一社員にゼロから全てを委ねる、という「無理ゲー」には会社もしなかった訳です。

酪農のスペシャリストで、6次産業経験も豊富、フロンティアスピリッツを持つ海野さんは、トマムファーム事業の立ち上げに最適な人材だったのです。

私自身は、本プロジェクトへのアサインが決まる当初からSさんから海野さんの事や、これまでの成り行きも聞いていたので、初対面はドラマチックにしたいと思っていました。

これから始まる壮大(にしたい)なプロジェクトの門出を特別なものにしたいのと、尊敬と敬意を評する為にも、トマム赴任前にサプライズで会いに行こうと決めてました。

今後トマムで一緒に仕事をする人と現地で初対面を果たすのは能が無いので、どこか第3の土地で、、、、具体的には当時ファームデザインズは北海道物産展等で全国の百貨店などに期間限定で出店していたので、そのタイミングに絞っていました。
海野さん自身も全国を飛び回っているという事で、このタイミングを狙い撃ちしてアポなしで会いに行こうと考えた訳です。
こういう事は第一印象がとても大事だ、という確信がありました。

関東近郊の主要百貨店の北海道物産展のスケジュールや出店店舗を確認し、「出会いは突然に計画」を進めるのですが、まあ微妙に遠かったり、スケジュールが合わなかったり、たまたま行ってもそれらしき人は不在だったりする訳です。

ドラゴンクエストⅡのローレシア(青)とサマルトリア(緑)の王子状態。

例えが古すぎるのですが、要するにすれ違いで会えなかったのです。

結局は、チャンスは無く私はトマムに赴任し、トマムグリーンシーズンのオープン2日前に、ファームデザインズトマム店の再オープンに向けて慌ただしく準備する海野さんにふつうに会いに行く事になりました。

「はじめまして、この度ファーム事業の担当になり東京から赴任して参りました宮武宏臣と申します。海野さんのお話はSさんからかねがね伺っています。今後宜しくお願い致します。」

と、挨拶しがっちり握手を交わしました。
私にしてみればようやく会えた瞬間です。
30年酪農を生業とした歴史と、実業家として成功した自信と、人を包み込む安心感をその逞しい手から感じ取りました。

その後、海野さんと開店準備作業の手を止め、しばらく話し込みました。
海野さんは想像通り"熱い"人でした。

「これからこの人と苦楽を共にして、牧場を作っていくんだな。」

としみじみ実感しました。

当時ファームデザインズトマム店があったのは"ミナミナビーチ"内。
オープン前なのでもちろんスタッフ以外は無人でしたが、館内は常夏。
汗をかきながら、話し込んだ記憶があります。

海野さんは、私にとって酪農の師匠であり、乳製品製造のアドバイザーであり、トマムファーム事業を共に運営する同志であり、双方事業に深く関わり合うビジネスパートナーになる訳です。

ここから、ファーム事業は「計画をしっかり立ててきっちり事を進めたい」私と、「どうにかなるべ」な海野さんのコンビで事業は進んでいきます。

この先、私が星野リゾート星野佳路代表のアシスタント時代に習得していた"癖の強めな経営者"への対処方法、が大いに役立ちます。

ひょっとしたこのスキルが、トマムファーム事業に私がアサインされた最大の要因なのでは?と自分でも思う程なのですが、何はともあれ事業の立ち上げメンバー2人が揃い、事業の一歩を踏み出した訳です。

海野さんと私。
意識した事はないのですが、立ち位置が微妙に決まっている

===
今回も長文を最後まで読んでいただきありがとうございまいした。

もう「春なんじゃないの?」という暖かな日が続き、トマムも一気に雪解けが進んでいましたが、昨日の雪でトマムも再度冬らしくなりました。

星野リゾート トマム公式HPの「A FARMER’S DIARY」では雪の中で生活する牛の様子なども紹介しております。
是非そちらもご覧ください。

今年も滑れずに終わるのかな、、、と思っていた矢先の天からの雪の贈り物。冬はまだまだこれからです。








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