マガジンのカバー画像

読書感想文

33
ファンタジーが多め。装画に対する感想あります。 2023年10月よりにわかにSFブーム
運営しているクリエイター

記事一覧

『アクロイド殺し』

『アクロイド殺し』

THE MURDER OF ACKROYD
アガサ・クリスティー、羽田詩津子・訳/ハヤカワ文庫(小説)

名探偵ポアロシリーズ三作目。
村の名士アクロイド氏が殺されててんやわんやする話。

ポアロはケネス・ブラナーの映画『オリエント急行殺人事件』を観た程度(面白かった)。
でも外見のイメージはテレビ版のデヴィッド・スーシェ(ヘッダーは宗像教授のよう…)。
原作を読むのは初めてです。

あの人が犯人

もっとみる
『渚にて 人類最後の日』

『渚にて 人類最後の日』

原題:ON THE BEACH
ネヴィル・シュート・著 佐藤龍雄・訳
創元SF文庫(小説)

4700個以上の核爆弾が炸裂し、人類が死滅する日が刻々と近づいている。
何をするか、どう生きるか。誰かに何かを残してやる必要もない。何かをやり遂げる意義もない。
自分が死んだあと自分の悪口を言う人間もいないから、人に嫌われることをしたっていい。
買い物をしたり、釣りをしたり、カーレースをしたり、畑を耕した

もっとみる
絵本児童書の類

絵本児童書の類

中学3年の時に猫を飼うまで猫が苦手だった。

毎週のように遊びに行っていた祖父母の家の猫にも怖くて近寄れなかったし、兄と幼なじみ達とで手なずけた野良猫も、空気を読んで「かわいいね」と言いながら、撫でたり抱き上げたりは出来なかった。

そんな頃にもきつね(と鳥)は好きで「きつね本」を見つけてはよく買っていたし、きつねのオリジナルキャラクターを描いたりもしていた。

ところで、我が家はほとんど絵本のな

もっとみる
『スピリット・リング』

『スピリット・リング』

原題:THE SPIRIT RING
ロイス・マクマスター・ビジョルド・著 
梶元靖子・訳
創元推理文庫(小説)

2023年12月15日読了。
物語終盤の展開に触れています。

15世紀末、北イタリアの小国が舞台のファンタジー。
魔術の才を持つ少女フィアメッタの恋と冒険の物語。

女であるがゆえに魔術師の父に跡継ぎとして認めてもらえなかったり、憧れる結婚も自分の意思だけではままならない。そんなフ

もっとみる
『久遠の島』

『久遠の島』

乾石智子/創元推理文庫(小説)
オーリエラントの魔道師シリーズの何作目か。

本を愛する者だけが入れ、世界中のあらゆる書物が読める久遠の島。
その島が宝を奪われ沈んだ。
生き残った島の子供ネイダル、ヴィニダル、シトルフィの三人は、お互いが生きていることを知らぬまま宝を奪った者への復讐を誓う。

文字や書物が力を持つことが多い、オーリエラントの世界を象徴するような話と、夜の写本師やウィダチスの魔道師

もっとみる
『宇宙戦争』(読書感想)

『宇宙戦争』(読書感想)

H・G・ウェルズ 著 中村融 訳/創元SF文庫(小説)

2023年11月29日読了。
言わずと知れたH・G・ウェルズの傑作SF。
もしも地球に火星人がやってきたら…の話。

1898年発表。昔の作品は、人の考え方とか話し方が偉そうに感じられて読むのがすごく苦手だけどこれは面白かった。
新訳版(2005年)というのも大きいのかもしれない。

文筆を生業とする「私」が火星人襲来のコトの顛末を回想する

もっとみる
『夏への扉』【読書感想】

『夏への扉』【読書感想】

ロバート・A・ハインライン 著、福島正美 訳/ハヤカワ文庫SF(小説)

なんだか久しぶりな気がする読書感想文。
今は自分で選んだ本の他に、兄から借りたSFを色々読んでいるところ。
これは古典だからおさえとけ的なものを読んでいただけで、そんなには読んでいないらしい。
それぞれに「これはいまいち」とか「最初良かったけど後半普通」という書評も頂いて、若干読む気失せましたし、古いものの文章は読みづらくて

もっとみる
自分が出た【#私の最愛海外文学10選】

自分が出た【#私の最愛海外文学10選】

Xで「#私の最愛海外文学10選」というのがあるらしい。
noteで相互になってる方がやっていて、面白かったので自分もやってみることにした。
私はXやってないけど、エクスシストじゃないけど、いいのかな。

シリーズものは、中でもコレってものをひとつ選ぶべきかとも思ったけど、選んだり選ばなかったりになった。

いざ!

フランク・シェッツィング
『黒のトイフェル』

16世紀のドイツ・ケルンが舞台のミ

もっとみる
『虐殺器官』〔新版〕

『虐殺器官』〔新版〕

伊藤計劃/ハヤカワ文庫(小説)

自分の中でSFが流行り始めてから三冊目のSF。
初の長編。
お噂はかねがねという感じの有名な著者と作品名。
「読みたい読みたい」なってたのでとても楽しく読んだ。
物知りな人が読むと違うのかもしれないけど、いい意味でラノベのようで良かった。本当に。いい意味で。

時代的には(書かれた当時の)少し先の、技術的には今より進んで(色々実用化されて)いる、そんな未来のお話。

もっとみる
『パワードスーツSF傑作選 この地獄の片隅に』

『パワードスーツSF傑作選 この地獄の片隅に』

J・J・アダムス 編 中原尚哉 訳/創元SF文庫(小説)

『自生の夢』(飛浩隆)と一緒に買った本。
我ながら両極端な良いチョイスだったと感心する。

パワードスーツの定義には、アイアンマンのようなものから巨大人型ロボットのことまでも含まれるのだとか。
FF6の魔導アーマーぐらいの大きさのものだけだと思っていたので意外だった。
アイアンマンはわりとほっそりピッタリしてますよね。C-3POほどじゃな

もっとみる
『アリス殺し』

『アリス殺し』

小林泰三/創元推理文庫(小説)

春ごろから気になっていたミステリ作品。
この著者がSFも書いてる人だと最近知ったり、続編の『クララ殺し』の装画の方が好みで浮気心が芽生えたりしたけど予定通りこちらから読んでみた(アリスの装画も好きです)。

下手なあらすじを書くと、作中のトリックを台無しにしそうで怖いですねえ。
そうかぁ、確かに…ずるい気もするけど、嘘は言ってない!という見事なトリックでした。

もっとみる
『自生の夢』

『自生の夢』

飛浩隆/河出文庫(小説)

SFです。
すごくフレンドリー(SF)な人々に見守られながら、立派なSF者になるべく第一歩を踏み出したところ。
すっかり長くなってしまった感想を、温かい目でご覧ください。

海の指

灰洋と呼ばれる謎の流体で覆われた地球。
灰洋に触れた物質は分解され灰洋の一部になる。
生き残っている人々はある方法で灰洋の中から、灰洋に溶けた物を取り戻して生活している。
灰洋に触れて分解

もっとみる
『神々の宴』

『神々の宴』

乾石智子/創元推理文庫(小説)

オーリエラントの魔道師シリーズの短編集。

セリアス
運命女神の指
ジャッカル
ただ一滴の鮮緑
神々の宴

の、五篇収録。

いぬいっさんが長編より短編の方が向いてるのか、私の頭が短編向きなのか、このシリーズは長編より短編が分かりやすく、説明もしやすく、面白い。
特に『ただ一滴の鮮緑』がすごかった。

死にかけた人をこの世に連れ戻すことのできる女性、チャファ。

もっとみる
『五龍世界WOOLONG WORLD Ⅱ 雲谷を駈ける龍』

『五龍世界WOOLONG WORLD Ⅱ 雲谷を駈ける龍』

壁井ユカコ/ポプラ社(小説)

『五龍世界WOOLONG WORLD Ⅰ 霧廟に臥す龍』の続編。
主人公が一巻のユギから碧耀に交代。活発で熱血なユギが気に入っていたので、碧耀が主人公では話が重くなるのではないかと危惧。しかし変わらずひょうきんな話で面白かった。

碧耀は歳若い祇女。ゆえに世を儚んでいたり自分の意志というものに乏しかったりする。
それを人に責められ、自分でも悩んだりして、そんな部分

もっとみる