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『スタートアップ・ウェイ』で新しい本の読み方を試してみた

編集を担当した『スタートアップ・ウェイ』本が、まもなく発売になる。この本は、うまくいったスタートアップが規模が大きくなると保守的なイケてない組織になったり、成功した大企業がイノベーションを起こせなくなったりするという課題に、答える本だ。

© hiromi

著者のエリック・リース氏は本の最初に、イケてない「古くさい企業」と成長し続ける「先進企業」という言い方で、両者を対比させている。その中の一説がこれだ。

古くさい企業は大がかりなことをしたがる。先進企業は実験をすばやく繰り返す。

こういう内容の本『スタートアップ・ウェイ』だったら、新しい実験をやらなきゃね!

そこで開催したのが最近話題となっている「読書会」だ。会場は、今回共催を引き受けてくれた要約サービス「フライヤー」の大賀さんが、親会社のメディアドゥホールディングスのセミナールームを使わせてくれた。皇居近くのビル、クールなオフィスの中にある会場に40人近くが集まり、読書会が始まった。

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この読書会、読後の感想を話し合うというものとは違う。なにしろ本はまだ発売されていない。参加者のみなさんは3~4人のグループに分かれて、印刷前の原稿(これを「ゲラ」と呼ぶ)を読み始めた。1章を読むグループ、2章を読むグループといった具合に1グループ1章、全11章の11グループに分かれる。

そう、この読書会で一人が読むのは1章分だけなのだ。

でも、安心してください。担当以外の本はほかのグループの参加者の人たちがプレゼンしてくれるのである。

プレゼンに備えて、各チームはA4の紙に要点を書き込んで、貼り出しておく。当初は何を書けばいいのかなど戸惑っていた方もいたが、ファシリテーター、小室勝裕さんのアドバイスをもとに作業をどんどん進められていった。

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この読書会の醍醐味は、参加者みなさんのプレゼンを聞くことで本の全体像が2時間程度で理解できること、みんなで一冊を読むことで一体感が生まれて盛り上がるということだ。さらに、時間の都合で詳しく説明してくれなかったところが気になり、「もっと説明して~」という渇望感が生まれ、むしろ本を読みたくなってくる。

私は担当編集者なので『スタートアップ・ウェイ』を5回以上は読んでいるのだけれど、それでもそんなふうに思う魅力がこの読書会にはあった。そしてなにより、金曜日の夜にみなさんが集まって、ビールも飲まず、お肉も食べず、ひたすら本を読み、要点をまとめ、プレゼンしてくれるなんて、ありがたくて涙がでそう。

実はこの読書会のやり方は、『スタートアップ・ウェイ』のオリジナルではなく、増えてきている方法だ。ABD(アクティブ・ブック・ダイアローグ)という方法だ。このABD読書会が各地で実施されており、中でも『ティール組織』(英治出版刊)という分厚い本はABD読書会が数多く開かれ、ベストセラーにつながっているようだ。

本はひとりで読むとは、もう限らない。

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