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娘の卒業式に思うこと

本日3月9日、長女の高校の卒業式があった。あれこれ考えるところがあったので、備忘録もかねて書きとめておく。

「116期生」ってことは…?

長女は東京都立両国高校の116期生にあたる。
116期ってことは、つまり学校としては116年目ってことで、つまり1期生の卒業式は115年前ってことで、それは1904年だってことで、1904年ってことは明治37年ってことだ。
平成が終わろうとしているというのに、昭和どころか大正どころか、余裕で明治である。「なんだそりゃ」という感じだ。

両国高校は1901年(明治34年)設立の旧制東京府立三中が前身で、いわゆる都立ナンバースクールの一角を占める。タイトル画像の「三高」の校章に名残がある。著名なOBはゴロゴロいるが、一番の有名人は芥川龍之介だろう。
最寄り駅は錦糸町で、生粋の江戸っ子の知人によると「下町の秀才が行く名門校」という位置づけらしい。全盛期には毎年数十人という単位で東大に進学していたそうだ。
東京は偏差値の高い学校は「真ん中あたり=文京区周辺」と西側に集中している。東側に住んでいると、両国高校か千葉の有力校あたりが選択肢になる。子どもが「逆サイド」の名門校に受かると引っ越す人もいる。
名古屋出身の田舎者からすると、東京って、いろいろ大変です。

化石のような歌詞

卒業式で面白かったことその1は「卒業式専用の式歌」だ。何が面白いって、こんな歌詞なのである。

在校生斉唱パート3行目の「行くか益良雄(ますらお)」、一同斉唱の2行目「友がき」あたりが、実に良い味を出している。長女を含む「手弱女(たおやめ)」たちも、妙に荘厳な伴奏にあわせ、一緒に歌っていて、それもおかしい。作歌(作詞)の吉丸一昌は、Wikiwandによると、なんだかすごい人のようだ。
校歌の歌詞はよく耳にしていて、「明治臭、すげえな」と思っていたが、卒業式の歌は初めて聞いたので、笑ってしまった。
ちなみに校歌はこんなんである。

「山はさけ 海原は あせんなんも」ってところが、Stand By Meの "If the sky that we look upon should tumble and fall, or the mountains should crumble to the sea" みたいな感じなんだけど、歌い上げるのは愛ではなく、「志」と「節操(みさお)」である。で、「いざや、いざや 道の為に 国の為に 勉めよ」と来る。アレンジもここでグッと盛り上がるようになっている。
もう、「坂の上の雲」そのままの世界である。化石かよ。
個人的に気になってしょうがないのは、卒業歌が先にできてることだが、まあ、それは放っておこう。

一番感謝されていることは…

面白かったことその2は、「卒業生から保護者へのメッセージ」なる配布物だった。この2日ぐらいで突貫工事で作ったもののようで、匿名というかクラス別でひたすらコメントが羅列してある。こんな感じだ。

5クラス194人分、ただひたすらの羅列なのだが、これが面白い。当たり障りのないコメントにまじって、味があるものがちょいちょいあるのだ。匿名だから差しさわりはなかろうと思うので、いくつか拾ってみよう(一部は部分引用)。

・ママン、パパン、I LOVE YOU
・良いことばかりではありませんでしたが「この家に生まれなければよかった」と思うことは一度もありませんでした。
・毎日、あんな変な水筒に氷を入れてくれたお母さん、ありがとう。本当に大変そうでした。
・私を可愛く産んでくれてありがとう。
・母へ 女手一つで育ててくれてありがとう。
・Q 旅立つ果物ってなんだ? A スダチ(巣立ち)
・美味しいご飯を作ってくれてありがとう。「今日はからあげよ~」
・もうちょっと実家暮らしっぽいので、もうちょっと育ててね!

型通りの卒業式的な挨拶が続く間、これを読んでニヤニヤできて、とても良い企画でした。

さて、このメッセージ集には、ある頻出単語がある。
「お弁当」である。
もう、どいつもこいつも、お弁当への感謝のオンパレードなのだ。
高校生、腹減り過ぎ(笑)自分もそうだったから、おかしかった。
教室で娘の担任が「8割ぐらい、お弁当への感謝でしたね」と言っていたが、実際、大半がご飯とお弁当が感謝のポイントになっている。
「動物飼育で最も重要なのはエサやりと健康管理だ」という事実がよく分かる。
我が家は全面的にお弁当は奥様が担当している。お疲れ様でした。

意外と多い塾通い

メッセージ集でもう1つ、面白いというか意外だったのは、塾・予備校に通っていた生徒が多いことだ。「塾に通わせてくれてありがとう」「高い予備校代を払ってくれて感謝しています」といった言葉がちょいちょい出てくる。

意外感を抱くのにはワケがあって、両国高校は「予備校不要」ともいわれる手厚い指導で知られている。実際、高校に通う長女、附属中に通う次女の話を聞いているだけで、普段から熱心な先生方から高レベルで密度の高い授業を受けているのが分かるし、かなりの分量の課題が出て、テストの頻度も高い。
私の目から見ると「学校だけであんな大変なのにいつ寝るの?」と思ってしまうが、両立させている生徒がけっこういるようなのだ。

私立大学進学の経済的負担についてのコメントも多く、これには考えさせられるものがあった。
「私立を認めてくれてありがとう」「私立でお金かかってごめん」というものもあれば、私立を認めてもらえないことに言及したコメントもある。

私は娘たちに「勉強しろ!」と言ったことは皆無だが、「公立でお願いします!」というのは三姉妹は「耳タコ」だろう。寛容だが、ケチなお父さんである(だって、私立、高すぎですよね?)。
まあ、半分冗談で、公立なら有難いけど、私立に行きたいならどうぞ、というつもりなわけだが、これからはあまり強調しないようにしようと反省しました。

「節目感」のない卒業式

最後に、自分の感じ方が意外で、面白かった。
どうにも「節目感」がなかったのだ。三姉妹の卒園式や長女の小学校の卒業の際にはけっこう「何かが終わったなあ」と感じたものだが、我が子の初めての高校卒業というイベントに、それはなかった。

それはおそらく、この春から高1に内部進学する次女に続き、先般、三女も附属中学に合格したことが影響しているのだろう。
三姉妹ベースだと、一匹抜けたけど、新たに一匹入り込むので、差し引きゼロ。
選手交代しただけみたいな感じである。

ちなみに、長女は附属中学には3年間通い、高校では2年生を私のロンドン赴任の関係でスキップして1年、3年と隔年で通う変則的な形で合計5年在学した。
次女は中学入学後1カ月だけ通って休学し、2年後に中3で復学するという荒業を使ったので、このままいくと約4年間通うことになる。三女は何もなければ中高と6年通学するだろう。
三姉妹合計で、15年も両国にお世話になる計算だ。
いや、これは、足を向けて寝られませんな、と今、書いてみて、本当に現在の就寝状況だと誰も足を向けてないことに気づいた。
どうでもいいですね(笑)

何はともあれ、長女様、ご卒業、おめでとうございました。

(昨春の帰国後、たった3度目というレアなスーツ姿)

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