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【週刊少年マガジン原作大賞】『ヘイアンリリック』振り返り




はじめに


 以前から私の記事を読んでくださっているあなたはお久しぶりです。この記事が私とのファーストコンタクトだというあなたは初めまして。中山翼飛です。

 この記事が投稿される頃には既に発表されている、という間抜けなことになっている可能性が大きいですが、『週刊少年マガジン原作大賞』の中間発表が近づいてきましたね。

 私は『ヘイアンリリック』と『スターシードのなり損じ』という二作品を応募したのですが、この記事では前者について振り返っていきたいと思います。

 なぜ今さらこんな記事を書いているかというと、私の性格からすると中間発表で掠りもしなかった場合にこの二作について永遠に語らないことが予想されるからです。


 『ヘイアンリリック』を読んでくださった方、あるいはネタバレ上等のタフな方はこの記事をより楽しめると思いますので、初見の方は上記リンクに飛んでいただくかこのまま突き進むかのどちらかをお選びください。

 それでは、長ったらしい前置きはこの辺りにして、本題に参ります。


製作経緯


 まずは製作経緯からです。

 当然原作大賞のために書いたんですが、そういうことではなく『なんでこんな作品になったの?』という話ですね。

 書き始める前に、こんな話を聞きました。



「少年マガジンは伝統的にスポーツものが多いよ!」

「マガジンならラブコメが強いよ!」

「ファンタジーならマガジンに入り込む余地があるよ!」


 
 ふむふむ、なるほど。貴重なアドバイスをありがとうございます。

 確かに『恋愛小説コンテスト』にパニックホラーを投げつけたら、間違いなく論外でしょう。

 参加する大会の傾向を把握するのは大切ですよね。



 うるせえ。好きなもん書かせろ。



 ということで、スポーツでもラブコメでもファンタジーでもない文系オタク戦闘狂の妄想をぶちまけた作品が生まれた訳です。

 こういう心情が第一話の安里のモノローグに反映されていますね。

 しかし、拙作を読んだ葦原という友人に「何言っとん?ウケるために自分を曲げるのは当たり前やろ。安里こいつ嫌いやわぁ」的なことを言われてしまいました。泣いちゃった。

 まあ葦原は少なくとも私の百倍は漫画や映画を知っているので、素人の甘ったれた考えに反感をもつのも致し方ありません。

 とはいえ、私にだって素人なりにちょっとだけ作戦もあります。

 ジャンプラ原作大賞のグランプリ作品が、めっちゃざっくり言うと『魔法少女×麻薬組織』という「あ、こりゃ勝てねえわ」とわからせられる作品でした。

 どういう環境で育って何を食ったらそんな面白そうな組み合わせを思いつくんだよ。

 これに衝撃を受けた私は、自分の好きなもので勝負したいなら二通りの方法があると考えました。

その1 意外な組み合わせにする。

その2 内容をめっちゃ面白くする。

 生憎私はジョジョやとあるで育った異能大好き戦闘狂なので、好きなもので勝負しようとすると『能力バトル』というよくある話になってしまいます。

 さらに、たった三話、たった18,000文字、しかも文章だけで内容をめっちゃ面白くする技量は私には無いので、意外な組み合わせを使うことにしました。

 といっても、下手なものと組み合わせれば行き詰まってしまいます。やはり自分が得意なものと組み合わせるしかない。

 そうなると、必然的に和歌と組み合わせるしかないですよね。

 そうはならんやろ。

 なっとるやろがい。

 私は高校二年生の文化祭のクラス演劇で『平安貴族のしむでれらが御歌合で帝に見初められる』とかいうトンチキ脚本を書きました。

 そのときに『歯茎』を隠し題にした縁語と掛詞マシマシのオリジナル和歌を二つ作り、クラスメイトからドン引きされました。

 ですがこのオリジナリティが功を奏して、我らがクラスは優勝しました。私が優勝に導いたと言っても過言です。

 私は分析系・創作系・布教系でいえば分析系のオタクというのもあって和歌の意味をあれこれ考えるのは好きですし、こういった経験もありましたから、『能力バトル×和歌』でいくことにしました。

 余談ですが、「能力バトルと他ジャンルを組み合わせた作品の最高傑作は何?」と訊かれたら私は『仮面ライダーW』を挙げます。

 これは『能力バトル×探偵ドラマ』という組み合わせを十四年前に発明しためちゃくちゃ面白い作品です。

 プライムビデオで全話配信されていますので、皆さんもぜひ観てみてください。


基本設定とキャラクター

 さて、和歌で戦うという方向性は決まりました。

 和歌の内容から超常現象を引き起こす。

 人によって解釈が違うから、同じ歌でもその超常現象は異なる。

 基本的な文法に沿ってさえいれば自由な解釈ができるのが和歌の強みですが、強引な解釈では弱体化する。

 人間どうしで和歌を詠唱し合うのはちょっとシュールすぎるので、バケモンと戦うことにする。

 長いこと戦闘狂をやっているだけあって、ここまではすぐに思いつきました。

 バトル設定の次は、ストーリー設定です。

 私は能力バトル、それも現代ものが好きなのですが、現代の能力者が和歌で戦うというのは不自然ですよね。

 だったら、和歌全盛の平安時代を舞台にしてしまおう。

 お、主人公を平安京でバケモンを倒す武官にすれば、自然とバトルにもっていけるぢゃん!

 それがわかると、「平安時代の和歌とかいう一般的ではないテーマなら、『ゴールデンカムイ』みたいに読者の知識がちょっと増えるような作品を目指そう」という色気が出てきました。

 金カムには杉元や白石といった読者と同じ目線でアイヌの知恵に触れてくれるキャラがいるから、この作品にもそれが必要です。

 だったら、現代からタイムスリップしてきた人をヒロインにしよう。

 平安文化に触れるために、ヒロインには内裏で宮仕えをしてもらうことにしました。

 そうすれば後宮女官ものっぽい雰囲気も出て、女性人気も狙えるかもしれません。

 突然現れた女の子の宮仕えを斡旋できるんだから、主人公はそれなりの家の人物でなくてはいけません。

 ここまで決めたら、次はキャラの行動理由です。

 主人公が出世レースに興味が無い、単なる正義感で動くヒーローだと話の幅が広がりません。

 しかし、個人の出世欲のみを理由にするとかっこよくなりませんから、『落ち目の家勢を出世して立て直す』ということにしました。

 さて、ヒロインの方は当然『現代に帰る』というのを目標にするでしょう。

 でも平安文化を紹介して後宮女官ものもやるんだったら、彼女はヒロインではなくもう一人の主人公という位置づけで話の軸にした方が良くね?

 そうなると、ヒロインは宮中で活躍できるほど光る何かがあると良い。

 『宮廷女官チャングムの誓い』でチャングムは料理の腕前を。

 『イ・サン』でソンヨンは絵の才能を。

 『薬屋のひとりごと』で猫猫は薬学の知識を。

 『瓔珞エイラク〜紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃〜』で瓔珞は刺繍の技術を。

 そして、和歌を扱う拙作でもう一人の主人公は作詞と楽器の経験を活かすことにしました。

 私はいつもキャラの名前をパッと思いついた音に漢字を当てて付けているんですが、今回もそれです。

 こうして『ヘイアンリリック』の主人公、霞城行平と上江安里が生まれました。

 後のキャラは流れです。

 行平の同僚武官、安里のバンドメンバーと宮中での仲間、敵役である妖魔。

 上述の『瓔珞〜紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃〜』で主人公の瓔珞は乾隆帝時代の清の皇后に仕えるんですが、その皇后と二人の先輩女官から拙作に登場する富子、明玉、慈晴の名前を借りました。


タイトルと構成


 後宮女官ものやタイムスリップものなどの要素をタイトルに入れようかと思いましたが、簡潔に『ヘイアンリリック』でいくことにしました。

 『平安時代に和歌でバトル』という真ん中にもってくるものを、疎かにしてはなりません。

 そうしたらなんと!



 タイトルの中に『安里アンリ』が入っているではありませんか!!!!!



 運命かな?運命ですねこれ。

 この興奮に浸りながら、ようやっと第一話を書き始めることができました。

 このときに気をつけなければならないのは、第一話は第一『話』であって『第一』話ではないということです。

 つまり、その後の展開の布石として第一話を丸々使うのではなく、第一話だけでも成立しているストーリーにする必要があるのです。

 何の受賞歴も無い素人の持論なので全ての作品に当てはまる訳ではありません。

 ですが、今回のように完結していない作品を対象としたコンテストでは、この点を見落としている方が意外と少なくないように感じました。

 まず第一話でやらなければいけないことは、前半で平安ゆきひら現代あんりを描き、後半で両者がクロスオーバーするということ。

 そして第一話をストーリーとして成立させるためには、『行平と安里が出会うことでそれぞれが抱えている問題が解決する』ということが必要です。

 それを考えた結果生まれたのがあの第一話なんですが、皆さんを楽しませることができましたでしょうか。もしそうなら嬉しいです。

 第二話では『宮中での人間関係を構築する』こと、第三話では『新しい情報を出す』ことが必要だと考え、あのような内容になりました。

 バトルものなのに序盤三話で戦闘が無い回を入れてしまう、というのが怖かったんですが、それを回避したらやや駆け足の戦いになってしまったのが反省点ですね。

 また、引きが壊滅的に弱いのも反省点です。どうすればいいんだ。


おわりに

 こんなことを言っていたらそろそろ4,000文字に達してしまうので、この辺りで切り上げようと思います。

 ただの素人の受賞するかもわからない作品を振り返った記事をここまで読んでくださったあなたは、紛れもなく人格者です。胸を張って生きてください。

 最後まで読んでくださりありがとうございました。また何かの作品を通じてお会いしましょう。

 

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