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旅は人情、おれの惨状 │ 京都旅行 天橋立編

「お待たせしました!ゲソ天です!」隣のテーブルに皿が運ばれた。
お婆ちゃんは黄金色に輝くそれを見て喜ぶどころか困惑している。どうやらお腹がいっぱいで下げてもらいたいらしい。それは困ると店員さん。

「あ、ぼくちょうど注文しようと思ってたんで、もらいますよ!!」
爽やかに男は言った。

店内は拍手喝采。詰め掛けたオーディエンスが居酒屋を揺らす。黄色い声で包まれた優しい世界。ゲソ天もうまかった。

一時間後、男はほろ酔いで店をあとにした。帰ってレシートを見るとそこにゲソ天の姿は無かった。

こんにちは、昼杉です。

まじでごめんなさい!!!!!!!
いや、もらう言うたら俺のテーブルで注文したことにしていいよって意味じゃん!
え?腹一杯?じゃあ隣の席の俺に奢ってよ。ってなる?そりゃね「あ、ぼくが代わりに払いますから」って言ってもいいけどさ、当たり前だし、敢えて言うことでもないと思うし、カッコ悪いし。

はからずもカツアゲじゃん。
異議はないな検察官。無実ですよね裁判長。

そんなわけで京都旅行に行ってきました。紅葉撮ろうぜ!

で、まずは天橋立あまのはしだて
京都の北側。日本海。
日本三景に選ばれてるすごいところ。
蟹がうまい。ブリがうまい。イカがうまい。

前日の天気予報は朝から小雨&小雨。

砂州(さす)。何千年かけて砂礫が堆積したらしい。

当日は~~~、晴れ!

こういうことなんですよ!日頃の行いをお天道様は見てるぞと。あー、逆に晴れすぎると写真が白飛びしちゃって撮りづらいんだよなー、とか言ってみちゃったりして。

で、これが30分後。1枚目の写真と同じ景色ね。
もう真っ白。ブリザード。メッチャ寒い。全然写真撮る気にならない。
首から下げたカメラ、なんか雪積もってるし。

紅葉×雪っつー写真好きとしては夢の対極コラボが叶ったので、一応歩いてみたんだけど、寒いのか眠いのか分からなくなってきたので退散。

成相寺

このお寺さん、自分で願い事を書いて完成させる御守りを配ってるんだけど、願いが叶ったら納めにまたお寺に帰ってきてねーって素敵なことしてるのよ。億万長者とか不老不死とか色々考えてたんだけど、またここに帰ってくる動機が欲しいよねーとか考えた結果「元気いっぱい」。もう迷いなし。いつか元気になりてぇよ。願いが叶ったらまた来たいね。

凍えながら下山。
待ちに待ったお昼ご飯。ふもとにはご飯屋さんが並んでるんだけど、どこも美味しそうで結局迷ったのが向かい合って建ってる「よしのや」と「まつや」。いや牛丼じゃないから。「よし乃や」と「松屋」。絶対わざとだろ。どっちが先か知らんけど。

今回は「よし乃や」さん  <京都府宮津市大垣48>
地イカの贅沢丼(税込2000円)

もうイカまみれ。全てを受け入れてくれる真っ白なキャンパスのような純白のイカ刺しが所狭しと敷き詰められ、そこに割って入るはボイルされたゲソ。淡く覗くピンクの脚は恋の色。
刺身は濃い旨味を含んだねっとりとろけるような舌触り。歯ごたえのあるゲソは噛むたびに芳醇な香りが漂います。卵に箸を入れ醤油をふたまわし。軽くかき混ぜ、あとは喉にかき込めば約束された最高のひと時 ~the promised best finale~。


肝心の天橋立を渡ってみた。1枚目の写真のビャーって長いところ。歩いて渡れるのよ。時間が遅めだったので行きはフェリー、帰りは徒歩で往復することに。

フェリー出発!湾になっているうえ、砂州(長いところ)が横切っているので、海にいながら四方八方を山々に囲まれている不思議な光景。砂州には黒松が6700本も生えているらしい。まさに壮観。「生えてるのは黒松だけどねー、赤松だったらマツタケがあったかもしれないんだけどね。フサヒゲサシガメって伝説のカメムシも赤松にいるらしいんだけど。なんか賞金とかもあるらしいよー。」とかウンチク垂れてる奴だけが雑音ノイズ。まぁ俺なんだけど。

いや、海鳥えぐいって。

誰もいないデッキでのんびりしようと思ってたら、カモメやらウミネコやらに取り囲まれた。鳥だけに。こいつら全然逃げない。テンパってると追い打ちをかけるように船内から続々と出てくるヒト・ヒト・ヒト。窓が結露で号泣してるほど寒いのにみんな出てきた。どうやら船内で餌が売ってるらしい。幸せそうなカップルがぶん投げた餌に俺が飛びついたらどんな顔するかな、とか想像してたら対岸に到着。

ここから徒歩。天橋立は砂浜で海水浴ができたり、レンタサイクルで爽やかな海風を感じられるとか。松林の緑と海の青のコントラストはまさに絶景。昭和天皇の句碑や与謝野晶子の歌碑なども点在していて自然も文化も楽しめるまさに幸福の架け橋といえるのではないだろうか。

右を見ると海。左を見ても海。
後ろは暗闇。前も暗闇。
波の破裂と木々の揺らぎ音だけが耳に届く静寂の世界。

ここから3.6km。文字通り一本道。


だーーーれもいない。雨も降ってきた。


日本海に来たらやっぱり蟹っしょ!!!

夕飯!宮津といえば松葉ガニって図鑑に書いてあったので、万札握りしめて料亭に駆け込んだら蟹コースは6万5千円って言われたので、急いで帰って宿のオバちゃんに地元に愛される居酒屋を問い詰めた結果がこちら!

富田屋」さん  <京都府宮津市鶴賀2066-56>
カニ定(税込2000円)※撮影後に揚げたての天ぷらが3つ追加で来た

もう大繁盛。賑やかなオバちゃん軍団がホールを回す、自然と声が大きくなっちゃうタイプの店。メニューを見てたら「あら煮定食 540円」。ごごごごご540円!?メニューだけでビール飲めるわ。
壁に貼り付けてある「カニ定」の札と目が合う。そうだ、俺は蟹を食べに来たのだ。それは蟹の定食なのか、どうやって蟹でご飯を食べるのか、疑問と期待が脳裏を駆け巡る。

ぼく「すみません、カニ定って蟹の定食ですか!?」
そうだよ!冷凍だけど良い!?

!?!!!?!?!!!?

なんて正直な店なのだろうか。たしかに俺は蟹の時期に合わせて日程を組んだ。"蟹漁解禁"のニュースも確認した。6万5千円の店も一瞬食べてもいいかも?って思った。楽しみにしていた。

でもね、旅は人情なんですよ。最高だよアンタ。
もう言ってやったよ「カニ定で!!!」

時間がかかるというので、賑やかな店内をツマミにビールを飲む。ガラガラ、いらっしゃーい、続々とやってくる仲間たち。しゅぽん、とっとっと、…お酒をグラスに注ぐ音。ジョッキを弾き宴を始める老若男女。宮津で一番の景色はここにあったのだ。

それから間もなく。「お待たせしました!ゲソ天です!」隣のテーブルに皿が運ばれた。


京都旅行 1日目 -宮津 天橋立編- 完

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