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新編 木漏れ日の下で

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1999年に発表した電子ブック『木漏れ日の下で』(FDに収められたttzファイル。2001年には増補改訂版を『ひとりの夜の愉しみは』として発表)の新版を編もうとする試み。今日まで… もっと読む
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記事一覧

フクを追って

 本を読んで、その著者を祝福したくなるときがあります。地方出版の場合などは特にそうですね。著者はたいてい、忙しい本業のかたわら何年も地道な調査を重ね、場合によっては金銭的な苦労をも乗り越えて、ようやくの思いで艱難辛苦(オジンくさい言い方!)の成果を世に問うのです。読む前から「すごいなー」と思ってしまいます。

 さて、地方出版というわけではありませんが、吉澤れい子さん(「れい」は月に令)の書かれた

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アン、再読

 心に疲労を感じると、ぼくはアン・シャーリーに会いたくなります。またいつでも傷付いたぼくたちを待っていてくれるのが、グリン・ゲーブルスのアンなんですね。

 快活でいつも前向きな夢想家・アンの話を聞くのは、マシュウでなくっても愉快でたまりません。それに彼女を取り巻く世界のなんと美しいこと。アンはマシュウやマリラ、彼女と出会う島の人びと、彼女の目に留まる木々や湖水のすべてに魔法をかけ、プリンスエドワ

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マシアス・ギリの失脚

 いや、難しい小説でした。池澤夏樹さんの『マシアス・ギリの失脚』(新潮文庫)。解説でも「柄の大きい」と形容されていたけれど、混沌とし、かつ奔放でもあり、それでいてなかなか論理的な小説なんです。

 ぼくの貧相な読書歴の中ではガルシア・マルケスに近い位置を占めそうなんだが、ぼくは『百年の孤独』1冊以外はラテン・アメリカの小説世界を知らないんで、断定は出来そうにありません。でも、分厚いながらも一気呵成

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わが家の家電元年

 16日のテレビ番組(NHK)「プロジェクトX」を見て、わが家(実家)の家電元年を思い出しました。今回の番組の主役は洗濯機だったけど、そうだ、ウチだって昔は、小学校の低学年頃までは、ろくに電化製品なんてなかったぞ。ラジオくらいなもので。

 昔話の「桃太郎」は、「おばあさんは川へ洗濯に……」で始まります。我が家だって同じ。鶴岡市のやや外れにあった実家の裏は一面の田圃で、幅の狭い農道を少し行くと小さ

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さあ、どうする?

 デスクトップピクチャー(壁紙)をまたまた変えました。由良で取ったデジカメ写真の一枚なんだけど、今回は遥かな海原と青空だけを撮った写真です。エメラルドグリーンの海面も良かったけれど、目を遠くに泳がせたくなったものだから。

 さて、先日から本当に久しぶりにサラ・パレツキーのヴィク・シリーズを読みはじめています。単行本で買って今まで読まずにいた『バースデイ・ブルー』。いったい何年眠らせてたんだろう。

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W杯

 サッカー・ワールドカップに関連して、ふたつ。

 中韓両国政府の反日政策(?)を大仰にわめき立てる、郷里出身・某「知識人」の本を偶然立ち読みしてしまった後だけに(アホなワタシ)、共感するものがありましたね。(2002.05.31)

応援しよう

「自虐的」という言い方をよく耳にします。歴史教科書では、日本の侵略戦争にこだわると「自虐的」。最近の亡命事件では、領事館員のお粗末な対応の真相を追求すると「自虐的」。クサいものにはふたをしろってわけですね。でないと、自分(の国)に自信がもてない。

 さて、サッカーのワールドカップもいよいよ目前だけれど、近づけば近づくほど、サッカーに詳しい(ハズの)人たち、自信なくまた落ち着きなく、なってきてるん

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「殻」あるいは「もの」

 池澤夏樹さんの小説は、寝ころんで読むことが出来ませんね。サン・テグジュペリのそれにも似て、「物語」としてのおもしろさ・ダイナミズムなどよりも、哲学的な空間・遠い眼差しを感じさせるんですよ。だからぼくは、ラインマーカーなしには読み進むことが出来ない。

 たとえば『花を運ぶ妹』(文藝春秋)。哲郎とカヲルの独白? が交互に掲げられ、頁を繰るにつれてようやくその全体像が起きあがってくるこの作品はいかに

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パレスチナの行方

 過日の河北新報社説が指摘するように、中東情勢が泥沼化した原因は、シャロン・イスラエル首相の政治信念である武力信奉にあります。

 イスラエルによる「報復」は無差別の様相を呈し、一般市民や救急隊員をも殺傷している。パレスチナ過激派のテロ行為を擁護するつもりは毛頭ないが、侵略者に対する抵抗は、歴史の常識でしょう。すべての前提は、被侵略者の屈服ではなく、侵略者の撤退なのです。

「今や絶望的な状況」と

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サラ・ブライトマンを聴く

 良いんです! サラ・ブライトマン。

 まずもって「声」がすばらしい。女神か妖精のそれだね。アルバム「LA LUNA」には妖気が満ちてる。ぼくは思わずケルトの神秘を感じてしまったのだけれど、ライナー・ノーツを読むと、サラ自身、「彼(プロデューサーのフランク・ピーターソン)は、私の声の中にあるケルティックな要素を引き出せる曲を必ずひとつは選ぶべきだというの」と語っているではないの。最近不勉強なぼく

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卒業式

 良い卒業式になりました。卒業式の後に開かれた謝恩会で同窓会長がおっしゃっていた「県下一の卒業式」という賛辞も、あながち大げさではなかったかもしれません。

 卒業式、それも高等学校ともなると、子どもたちに義務教育過程のときのようなあどけなさが残っているわけでもなく、また進学や就職が決まっていない子などは感慨を抱く余裕もない。どこか乾いた雰囲気になりがちです。

 事実、わが子の卒業式も次第にそっ

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図書室にて

 娘の受験に付き添い、ある看護学校に行って来ました。父兄の待合室は特に用意されていなかったものの、職員から図書室での待機を許され、父兄は看護・医療関係の書籍に囲まれて数時間を過ごすことに。

 図書の閲覧も自由。持参の書物も読み終えてしまったし、何か面白そうな本はないかな。……手に取ったのは、看護学生たちの卒業論文集。なかなかの力作揃いです。

 時代を反映したものか、昨年の文集には終末期看護をテ

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文明は野蛮である

 パウエル米国務長官はこう言い放ったそうだ。「アフガニスタンの子どもたち、貧しい人々、米国を憎む連中に対して戦争を仕掛けてもかまわない。なぜならわれわれは文明人であり、やつらはそうでないのだから」と。(ジョン・ゲラッシ「泣くのは誰のため?」、『非戦』所収、27頁)

 ぼくは文明の野蛮を思う。何十年も、何百年も、いや何千年も昔から、文明人は野蛮だった。「未開」な人々と「文明」社会の人々の出会いは友

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ステージ101ベスト

 な、なんと! 「ステージ101ベスト」(CD二枚組)が発売された、ですと!? 「MAC POWER」誌(2002年1月号)で見つけた貴重な情報に狂喜乱舞(ちと大げさだが)。即座に注文しました。

 ただしこのCD、一般のCDショップには置いていないようです。ぼくも最初はネットCDショップで検索したけどヒットしなくて、次に検索サイトのGoogleでサーチ。NHKのオンラインショップでの販売をキャッ

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