「戦国時代」は、日本史の転換点の一つです。

鉄砲とキリスト教が伝わった。
織田信長は「鉄砲の大量使用」と
「キリスト教徒の国との貿易」を行い、
天下布武に向けて、大きく前進した…。

戦国時代が終わることに
影響を与えた出来事ですよね！
ただ、もう少し広いスパンで考えた時、
この二つの出来事は、その後の日本史にも、
また世界史的にも大きな意味を持っている…。

本記事では、鉄砲とキリスト教の伝来と
「フィリピン」での事例をからめて、
少し広めに解釈してみます。

早速ですが、フィリピンについて。

東南アジアの島国です。
この国の名前の由来をご存知でしょうか？
フィリピンは「フェリペ」から来ています。
「太陽の沈まない国」とも言われた
スペイン最盛期の国王フェリペ２世。
彼の名前にちなんでいるのです。

彼が生きていた頃のスペインは、
それはもう、すっごく勢いがありました。
『大航海時代』～『植民地獲得』の時代。
16世紀頃のお話です。

「世界一周」で有名なマゼランも、
1521年にこの地に到達しています。
ところが「ラプラプ」という部族長に
マゼランが討ち取られてしまう。
（ラプラプは侵略者の先鋒である
マゼランを討ち取ったため、この地では英雄）

ただ、スペインの進出（侵略）の手は、
その後も全くゆるみません。

その約20年後の1543年、
日本に鉄砲が伝来した年に、
ビリャボラスという探検家の
スペイン船団が、この地に到着しています。
彼は（当時は王子の）フェリペの名にちなんで、
この島々を「フィリピン」と名付けた。

1600年「関ケ原の戦い」の前あたりまでには、
島々の多くがスペインの植民地になっていました。

日本で信長・秀吉・家康などが
天下統一へと邁進していった頃、
同じ島国のフィリピンは
スペイン人に占領されていた…。

ということは、
「日本もスペインの植民地になっていた」
その可能性はあった、ということ。
もしそうなっていた場合、日本は
「ノルテ・フィリピン」（北のフィリピン）と
呼ばれていたかもしれない…。

フィリピンは占領され、日本は占領されなかった。
この違いの理由は？

様々な理由が、考えられます。

ただ、一番の大きな理由は、
日本が「キリスト教」を拒絶したこと。
これが大きいのでは？

一説によると、
秀吉は九州征伐の時にキリシタンたちが
「人を奴隷として輸出している」ことを知り、
宣教師コエリョに質問したそうです。

コエリョは答えた。

…これはコエリョの恫喝、脅し、ですよね。
事実、当時の九州にはキリシタン大名が多く、
キリスト教がおおいに広まっていました。
同時にこの頃、フィリピンも占領されている。
スペインの統治下に入りつつある…。

秀吉は、これらの背景を考えた上で、
「バテレン追放令」を出した。

もしポルトガルやスペインが
武力で日本に攻めてきたとき、
宣教師たちと結託してキリシタン大名たちが
自分に歯向かうかもしれない…。
ノルテ・フィリピンにされるかもしれない…。

ただ、貿易は続けたい秀吉は、
貿易禁止まではしませんでした。
しかし、その後の江戸幕府は、
徹底的にキリスト教を禁止します。
貿易を制限、幕府の手で独占していく…。

貿易相手に選ばれたのは、オランダでした。

元はスペインの一部。
実はフェリペ二世、国外では成功したものの、
国内では致命的な失敗を犯していた。
オランダ（ネーデルラント）の独立です。
オランダはプロテスタント。宗派が違う。

1556年に即位したフェリペ二世は
プロテスタントに対して
血の審判所と呼ばれる異端審問機関を作り、
恐怖政治を行っていたのです。
この弾圧に対して、1648年までずっと
「オランダ独立戦争」が行われていた。

敵（スペイン）の敵（オランダ）は味方。
新興国オランダが日本と貿易を行う…。

こうして江戸幕府は、
日本社会からキリスト教を締め出したのです。
江戸幕府の治世は1867年、
「大政奉還」まで続いていきます。
（幕末のあたりでようやく「開国」）

同時に「鉄砲」も、戦国時代には
ガンガン作られていましたが（ガンだけに）
江戸幕府の平和の世の中になると、
無用の長物となっていく。
鉄砲鍛冶は新しい時代に適応すべく、
花火職人などにジョブチェンジしていく…。

戦国時代に日本に伝来し、
おおいに広まったこの宗教と武器は、
戦国時代を否定する江戸幕府によって
明確に否定されていった。

現在の日本では、どうでしょう？
キリスト教は国教ではありません。
銃の所持に対する忌避感も強い。

…その一方で、スペインの統治下に入った
フィリピンは、というと
1898年に独立するまで、植民地でした。
独立後、すぐの1899年に「米比戦争」、
すなわちアメリカと戦争して負ける。
「桂・タフト協定」で日本は
アメリカから朝鮮半島の
支配を認められる代わりに、
アメリカのフィリピン支配を認めます。

スペインからアメリカへと
フィリピンを統治する相手が変わった。
太平洋戦争時には日本軍が攻めてきて、
日本の占領下に置かれる…。
（この時のフィリピンの司令官がマッカーサー。
後に日本の占領政策を指導することになります）

…現在のフィリピンが成立するのは、
実に「戦後」の1946年なのです。

最後に、まとめます。

フィリピンのドゥテルテ大統領は、
国名について2019年の演説で
こう述べた、と言われています。

現在の国名は、植民地時代の名残。
「いつか変えたらいい」と…。
マハルリカとは
「気高く誕生した」という意味の言葉。
将来、他の国名が
「気高く誕生する」可能性もあります。

16世紀の「鉄砲伝来」と「キリスト教伝来」！
これは日本とフィリピンの歴史を分けた分岐点、
なのかもしれません。

以上、私の主観で取捨選択した上で、
だいぶトリミングして書いてみました。
読者の皆様は、どう思われますか？

※16世紀頃の「スペイン帝国」はこちら↓

※本記事は以前に書いた記事のリライトです↓
『鉄砲と、キリスト教と、フィリピンと』

※大航海時代あたりのスペインと
日本の戦国〜江戸時代あたりの
歴史をもっと知りたい方は、
以下の書籍もぜひ！↓
『戦国日本と大航海時代
-秀吉・家康・政宗の外交戦略』

※著書の平川新さんへの
インタビュー記事はこちら↓

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