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発想に悩む方へ ~濱口秀司さんと「発想資本主義」~

1、USBフラッシュメモリとイオンドライヤー

USBフラッシュメモリ。PCなどにつなぐ記録媒体。世界中に普及して、毎日使われています。私も昨日使いました。

このUSBメモリの生みの親の方をご存知でしょうか?

イオンドライヤー。髪にイオンを届けてまとまりやすい髪にしてくれる。適度の保湿効果もあり、髪に潤いを与える。

このイオンドライヤーの生みの親の方をご存知でしょうか?

ビジネスデザイナー、濱口秀司(はまぐちひでし)さん。どちらもこの方の発想だそうです。人呼んで『伝説のイノベーター』。

他にも、企業内イントラネットを考案・構築したり、KUUM(クーム)という積み木を開発したりした方で、まさに「イノベーション」(変革)の申し子のような方。京都大学を卒業後、松下電工(現パナソニック)に入社して数々の企画を手掛け、今ではアメリカ合衆国のポートランドでmonogotoという会社を立ち上げて、ビジネスデザインを行っておられます。

今では当たり前に使われるモノも、誰かが発想しないと作られない。

いったいどのように0→1を発想していけばいいのか? そのヒントとなる「論文集」が、2019年6月27日に発売されました。こちらです↓。

電子書籍版です。…少し価格がお高い? 二の足を踏んでいる方へ。

まずは彼の考えの一端を、ご紹介できればと思います。

2、発想資本主義という第四の時代

こちらの記事から、濱口さんの考えの一部をご紹介していきます↓。

「発想資本主義」。ええと、初めて聞く言葉ですね…。

濱口さんによると、資本主義は、これまでに4つの段階があるそうです。

①商業資本主義…時間や場所の差異で稼ぐ(例:ブラジルのコーヒーを日本に持ってくれば、日本では珍しい商品なので売れる)

②産業資本主義…製造プロセスの差異で稼ぐ(例:最新のテクノロジーと体制で製造して、速く大量に質の良い商品を作れるので売れる)

③情報資本主義…情報と資金の集積と速度で稼ぐ(例:優れた有益な情報や資金を集めて、いち早く世に出すことで売れる)

④発想資本主義…今ココ。新たな発想が大事。

①は、「大航海時代」を経て全世界に植民地を広げた西欧が有利でした。日本も真似をして追いつこうとしましたが、結局勝てなかった。しかし、②では、ソニーのウォークマンやトヨタ自動車など、日本の技術が世界に認められていきました。「日本アズナンバーワン」の時代ですね。ところが③になると、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)など、アメリカ合衆国発のIT企業にやられっぱなし。一勝二敗

しかし、濱口さんは、次なる④の発想資本主義では、日本が優位ではないか、と言います。発想、新しいモノの考え方。世界をあっと言わせるアイデアを生むこと。つまり旧来の考えにとらわれない、USBフラッシュメモリのようなモノを生むことが大事な段階です。

詳細については、引用元の記事をじっくりと読んで頂きたいのですが、一言でまとめてみます。西欧よりも、米国よりも、中国よりも、日本はポテンシャルがあるとのことです。なぜか。それは、「多様性を見つめつつも」「道を究める」文化を持っているからです。

西欧=「二者択一で」「道を究める」。米国=「二者択一で」「全部ほしがる」。中国=「多様性を見つめつつも」「全部ほしがる」。一神教(キリスト教など)か多神教(八百万の神々など)か、ゼネラリスト(総合力)かプロフェッショナル(職人)かの違いもある思いますが、この4地域のポテンシャルは、明らかに特徴が異なるというのです。

この部分を読んで、確かにそうだ、とうなずく部分がありました。

ここから少し、世界史的な私の考察も加えて、①~④の資本主義の段階と、この4地域の特徴の話をまとめていきます。

まず、①の商業資本主義の時代には、「二者択一で」「道を究める」西欧が、全世界に進んでいきます。キリスト教を広める(例:はるばる日本まで来たザビエルなど)。本国のために貿易をして稼ぐ。稼いで何が悪い。それが神の御心にかなう。西欧イズナンバーワン。マニフェスト=ディスティニー(明白なる天命)。疑わない。シンプルだからこそ破壊力があった。英語を話し、スーツを着て、会社組織で動く、西欧発の文化が世界を席巻し、いまだにその影響力が強く残っています。

次の②の産業資本主義の時代には、「多様性を見つめつつも」「道を究める」日本が台頭していきます。文明開化。和魂洋才。西欧式のビジネスルールを全否定するのではなく、そういうのもあるよねとのっとりつつも、職人的なテクノロジーと製造体制(トヨタのカンバン方式・カイゼンなど)を作り上げて、世界を席巻しました。プロジェクトXの世界です。株価も上昇。1980年代、バブル以前の華やかな時代がありました。

しかし今はどうでしょうか。③情報資本主義の時代になると、「二者択一で」「全部ほしがる」米国が圧倒的になっています。情報は、いかに多く集め、いかに素早くユーザーにシンプルに届けて、訴えられるかがカギだからです。道を究めていると、遅れをとります。あのフェイスブックが、「どちらの女性が好みですか?」の二者択一の質問から始まったのが、象徴的に思えます。アマゾンで買い物すると、「この商品もオススメです」と出てきます。白黒はっきりさせるデジタル文化に、何でもほしがる米国文化が相まって、今のこの状況が生まれていると思います。

では現在、④発想資本主義の時代はどうでしょうか。「多様性を見つめつつも」「全部ほしがる」中国もからんでくるのでしょうか?

これはもう、記事から一部を引用してしまいます↓。

たとえば、米国人はブレインストーミングなどでアイデアを出し合った後、すぐに投票してどれが一番いいか決めてしまいがちである。でも、それでは本当に革新的なアイデアは生まれない。偶然生まれることはあっても、連続して斬新なアイデアを生むのは難しいだろう。だからこそ、すべての面白そうな切り口だけを集めて構造化し、新たなアイデアを合理的に生み出すSHIFTの方法論を実践すべきであるし、妥協しつつバランスを取りながらシンプルに突き詰める日本人こそが、この方法論の効果を最大化する最強のポテンシャルを持っているのである。

「妥協しつつバランスを取りながらシンプルに突き詰める日本人」。まさに発想資本主義の時代にぴったりのように思えます。しかし、濱口さんのようなビジネスデザイナーが希少な存在だということも事実。そこまで突き抜けられない人や会社が多い。なぜなのか? それは、

「世界にインパクトを与えるようなビジネスを仕掛けるうえで、日本の企業はポテンシャルこそあるのに方法を知らない」

「いかに一〇〇年以上にわたって儲かる仕組みを敷くか、といった戦略を大枠で真剣に考えることに、歴史的にも慣れていない」

からだと濱口さんは言います。つまり、知らない、慣れていないだけ。

だからこそ、濱口さんは『SHIFT:イノベーションの作法』を世に出して、まずはみんなにも知ってほしいと思われたのではないでしょうか。

道を究めることに喜びを感じる特性がある日本人にSHIFTの方法論を伝えれば、きっとこれを究めようと励み、世界を動かすほどのイノベーションを起こせるだろう。

ぜひ、イノベーションを起こし、USBフラッシュメモリのように全世界で使われるようなモノを生み出す人が、どんどん日本から生まれてほしい、と感じました。私も及ばずながら、挑戦していきます。

3、イノベーションを生み出す条件

…すみません、ここまで書くのにだいぶ時間をかけてしまったので、まとめに入っていきます。とにかく1つ1つの文章が納得と驚きにあふれており、私も咀嚼するのに時間がかかりまして…。

「イノベーションを生み出す具体的な条件」については、こちらの記事もヒットしましたので、興味のある方はご一読ください↓。

少しだけ書き出してみると、次の「3つの条件」が必要とのことです。

①先入観を壊すこと ②実行可能であること ③議論を生むこと

先入観を壊しても、実行できないファンタジーではダメ。実行できても、議論して練らないとダメ。厳しいが本質を突いていると思います。

…これ、一番誤解されているところですね。つい私たちはイノベーションというと、とにかく荒唐無稽なアイデアを出していけばいいと考えがちですが、地に足がついてないとダメです。独りよがりでもダメです。

個人的な脳内で完結させればいいのなら、いくらでもアイデアを生み出せる人はいるでしょう。しかし、それを全世界に問うとなると、②実行可能か、③議論を生むか、を意識しなければいけない。

そのための具体的なアプローチ方法が、記事に載っています。『SHIFT:イノベーションの作法』にはてんこ盛りで書かれています。よろしければぜひともご一読を!

4、武器はCOCOROの中にある

最後に、濱口さんの名言を、1つご紹介します。

情報量が少ないほうがイマジネーションも湧く。カラー写真より白黒写真のほうが想像力を刺激するのと同じです。それは脳が色を補完しようと働くからで、情報の欠損率が高いほどイマジネーションをフルで使える。

イマジネーションするためには、情報が多ければよい、というわけではないそうです。情報の欠損率が高ければ、逆に発想できる余地がある。

こちらはご参考までに。「天才」レオナルド=ダ=ヴィンチを、かわぐちかいじさんが描いた『心<COCORO>』です。孤独こそがイマジネーションをかきたてる、という一例です↓。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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