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【短編小説】顧客顔識別サービス促進法

「昨年成立した顧客顔識別サービス促進法が来月から施行されます。
 我々レストラングループでは対応第一弾として、誕生日のお客様へデザートにクッキーを追加サービスすることとしました。
 誕生日はお客様の申告ではなく、顔識別装置が判定した上で店員に情報が提供される仕組みとなっております。
 これをチャンスとして更なるサービスの向上、顧客満足度の充実を目指して頑張っていきましょう。」

「来月から顧客顔識別サービス促進法が施行されます。
 私共コーヒーチェーンでは対応第一弾として、誕生日のお客様に提供するドリンクカップをバースデーデザインのものとします。
 店内用とテイクアウト用、各サイズを用意します。オーダー時に顔識別装置が判定する仕組みです。
 これをチャンスとして更なるサービスの向上、顧客満足度の充実を目指して頑張っていきましょう。」

「顧客顔識別サービス促進法が施行されます。
 当コンビニチェーンでは対応第一弾として、誕生日のお客様が入店の際、入店チャイムをハッピーバースデーのメロディに切り替えます。
 顔識別装置が判定した上で自動で切り替わります。店長以下、店員の皆さんへの対応は発生しません。今まで通りの顧客対応をお願いします。
 これをチャンスとして更なるサービスの向上、顧客満足度の充実を目指して頑張っていきましょう。」

「来月、顧客顔識別サービス促進法が施行されます。
 私達スーパーマーケットチェーンでは対応第一弾として、誕生日のお客様が利用するセルフレジの画面に誕生日おめでとうメッセージを表示します。
 これをチャンスとして更なるサービスの向上、顧客満足度の充実を目指して頑張っていきましょう。」

「顧客顔識別サービス促進法施行日の始発より、鉄道グループ全社の対応第一弾として、自動改札を利用するお客様が誕生日の場合、自動改札モニターのICカード残額表示が誕生日おめでとうバージョンのデザインに変わります。残額不足の場合のデザインも変わります。
 これをチャンスとして更なるサービスの向上、顧客満足度の充実を目指して頑張っていきましょう。」

 サービス事業者や店舗の店員、顧客、殆どの人達の予想通り、第二弾の対応はどこも行われなかった。


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