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分けること、について
暑い日も混じってきましたね。
ご覧の通り、わたし自身はこんな感じでやっておりまして、数年前に話題になった表現を借り「在野研究者」を自認することもあるんですけど、そうすると、実は海外の在野研究者とも多少つながりがあったりするんですね。
昨日も、微妙に知っていたドイツのひととメッセージのやりとりがあって、聞くと「ジャック・デリダについて修士論文を書いたことがあって、96〜97年のセミネールに参加し
マクルーハン『グーテンベルクの銀河系』より
「急変する時代とは、ふたつの文化にまたがる時代であり、相剋する技術が併存するフロンティアのうえにある時代である。また時代意識とは、いついかなる時をとってみても、これら対峙するふたつの技術、ふたつの文化のうち一方を他のものに翻訳するときに芽生える意識である。今日われわれは五世紀間にわたって続いた機械装置の時代と新しい電子時代、そして均質性の強調と同時共存性が境を接する場所に住んでいる。これはわれわれ
もっとみるエリック・A・ハヴロック『プラトン序説』より
「口誦詩は、集団的アイデンティティの保存をその究極目標とするような、文化的教育の道具であった。口誦詩がこの役割のために選ばれたのは、書かれた記録がないところでは、口誦詩の韻律と定型表現が想起と再利用のただ一つの装置を提供したからである。プラトンが関心を示さなかった技術にかんするこの事実は、ヘシオドスの寓話のうちに直感的に読み取れる。彼の讃歌も、神々へのすべての讃歌と同じく、神の誕生をほめたたえねば
もっとみる鈴木宏昭『類似と思考』より
「〔…〕ある領域やその中の現象、問題一般に適用可能なルールを教示されたとしても、人はそれをうまく場面に適用できないことが多い。したがって人間の知識は汎用性に乏しく、状況や文脈に強く制約されているということになる。
この文脈依存性は決して実験室の中で人工的に作り出された現象ではない。このことは現実の教科の学習場面を考えれば即座に了解できる。一般に、理数系の教科では公式、法則、解法がまず例題とともに
佐良土茂樹『コーチングの哲学』より
「数年前、英国のリヴァプールでコーチング関連の国際学会に参加したときのことだ。その学会の懇親会がリヴァプール大聖堂という壮麗な建物で開催された。その聖堂へとつづく道に「No coaches beyond this point(コーチたちはこれより先に入るべからず)」という看板が立っていた。それを見かけたとき、コーチたちが多く集まる会合で、一瞬これは何を意図したものか考えたが、そこより先に"coac
もっとみる李舜志『ベルナール・スティグレールの哲学』より
「プラトン(ソクラテス)が『国家』で詩を批判したことはよく知られている。吟遊詩人たちが歌い継いできた音声表現である詩は、声の文化においてコミュニケーションの中核を担ってきた。たとえば古代ギリシャ人は教育を音楽(mousikē)と呼んでいた。というのも彼らは数学や詩や修辞学を、踊ったり手をたたいたり、声に出して歌ったりしながら練習したからである。それはイメージやリズムを活用し聴く者の感情に訴えること
もっとみるブラウン/ローディガー/マクダニエル『使える脳の鍛え方』より
「矛盾しているようだが、往々にして、少し忘れることが新しい学習にとって不可欠になる。パソコンをWindowsからMacに替えたり、Windowsのバージョンを別のものに替えたりすると、新しいシステムの構造を憶えるために多くのことを忘れて、マシンの操作方法を気にせず仕事ができるように、新しい使い方に慣れなければならない。米軍空挺学校での訓練も一例だ。パラシュート降下隊員の多くは、退役後に森林消防降下
もっとみる池谷裕二『記憶力を強くする』より
「電話番号でも似たようなことがあてはまりますが、ここでは少しおもしろい現象が観察されます。電話番号は市外局番を除けば八桁以内です。これはもう短期記憶の限界に近い桁数です。したがって、市外局番まで入れてしまうと、たとえば53-9046-7281のように10桁になってしまい、覚えるのが困難になります。しかし、途中に入る「-」が短期記憶を助けてくれるのです。「-」がないと、5390467281となって、
もっとみる皆川直凡『俳句理解の心理学』より
「日本語を話す人にとって、リズムとしての快さに加え、五・七・五はたいへん記憶しやすい形である。俳句を作る人ならば、たいてい何十句かを覚えている。加齢と共に記憶力が衰えるというが、80歳代の人から「この花を見たら必ず思い出す句がある」というような話を聞き、実際に諳んじてみせられることもしばしばある。かくして類想や模倣のない句が次々と生まれるのである。いま学校では知識の詰め込み教育の弊害が問題視されて
もっとみる逸身喜一郎『ラテン文学を読む』より
「ルクレーティウスの『事物の本性について』は、本書「はじめに」でも少し言及したが、万物の生成やエピクーロスの原子論を詩であらわしている。こうしたいわば「学問詩」とでもいうべき流れがギリシャ以来続いているのである。「はじめに」で分類の恣意性をたとえて岩波文庫を引いたが、今後、かりに翻訳されたならどれも岩波文庫の青帯に入りそうな作品の系譜である。従来、これらは「教訓詩」と呼ばれてきたが(これは英語のd
もっとみる友野典男『行動経済学』より
「行動経済学にとって心理学、特に認知心理学からの影響は計り知れないが、現実の人間行動を対象とせず経済人だけを扱っている標準的経済学は、当然ながら心理学的分析とは縁が遠かった。
しかし、そのような傾向は標準的経済学が確立された比較的最近のことであり、経済学はもともと心理学とはなじみ深いものであった。経済学が確立した18世紀には心理学はまだ科学としては独立したものではなく、当時の経済学者は心理学者を
山鳥重/辻幸夫『心とことばの脳科学』より
「山鳥:そこで、この反省意識ですが、これは心という現象すべてを貫く構成原理のようなものだと考えられます。もっともあいまいな程度からもっとも鮮明な程度までさまざまなかたちで心という現象を可能にする働きです。もっとも低い段階では「あ、痛い」といった、有害刺激によって引き起こされる痛みへの気づきのようなものがあります。もっとも高い段階ではデカルトの「すべてを疑っている自分というものだけが確実に存在する」
もっとみるホラーティウス『詩論』より
「詩人が狙うのは、役に立つか、よろこばせるか、あるいは人生のたのしみにもなれば益にもなるものを語るか、のいずれかである。
どのような忠告をあたえるのであれ、簡潔でなければならない。すみやかに語られる言葉は、心がすなおに受けいれ忠実に守るだろう。余分なものはなんであれ、いっぱいになった心のなかに入らず、そこから流れ出す。」
アリストテレース『詩学』・ホラーティウス『詩論』松本仁助/岡道男訳、岩波
From POETRY by Bernard O'Donoghue
"Shelley's Romantic claim for the transcendent authority of poetry can be widely paralleled in other eras ever since the classical past. The most authoritative classical predecessor in raising the que
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