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大野和士さんが語る「ヴェルディが作曲したオペラの魅力」_2018年4月15日

2018年4月15日、大好きな指揮者である大野和士さんが語る、「ヴェルディが作曲したオペラの魅力」という講演会に行ってまいりました。しかも、ピアノ演奏つき。

大野さんのオペラ解説を聞いたら、誰もが、たちまちオペラを好きになると思います。
  
今回はヴェルディの「椿姫」と「リゴレット」について。
それぞれのキャラクターの背景や性格などを丁寧に掘り下げながら、なぜこの人物がここでこのセリフを言うのか。そして、その言葉がなぜこの音(音型おんけい、旋律、調性、楽器)であり、この音量なのか。なぜ演者がこの表情で歌うのかなど、“言葉と音楽の関係”について、丁寧かつ尋常じゃなく楽しく、教えていただきました。
  
講演中は、大野さんご本人がピアノを演奏しながら、プロのソプラノとバリトンの方がほぼ出ずっぱりで歌ってくださった。そのうえ大野さんも歌って、ステージ上や下を動き回って実演していらした。
最後の1秒まであっという間に過ぎて、震えるほど面白かった!
  
大野さんいわく、
同時代に活躍した作曲家ワーグナーのオペラは、神話や伝説をモチーフにした神々の物語であったことに対し、ヴェルディのオペラは非常にヒューマニティに溢れている、とのこと。

たとえば、
高級娼婦である「椿姫(ヴィオレッタ)」が、ヴィオレッタを好きだと言う青年貴族(アルフレート)に自分も恋をしていると自覚するシーンは、
1回目の「まさか」に続く2回目の「まさか」は響きが違い、
2回目は、「バカバカしいわ。自分の人生にこんなことが起こるわけないじゃない」と、やるせない気持ちになる。
 
ここの調性は、日本の演歌歌手である藤圭子さんの曲『新宿の女』の、「バカだな……バカだな……」とまったく同じだそう。

また、完全な箱入り娘として育てられた「リゴレット」の娘ジルダが、王様と色々あって誘惑に対する興味を持ち、純真無垢な少女から女性に変貌していくときの、それぞれの段階で返す、
「お父様(ミオ・パードレ)」
という返事について。
 
「リゴレット」の中には3回出てくるけれど、響きも意味合いもまったく違う。
この違いこそ、「リゴレット」の聴きどころとのこと。

このところ私は小説『桜の園』を書いていて、創作の過程で、性別や年齢のちがう登場人物たちの生い立ちを掘り下げて、感情や人格を瞬発的に大きく動かすことを続けています。
そのため、誤解を恐れずに言えば、集中してたぐりよせた想念や映像から気を逸らしたくないため、できれば人に会いたくないし、あまりまともに話せない時期。ですが、感受性が剥き身な今だからこそ、このように魂が震えるほど上質な刺激とインプットができたのかもしれないと、心から感謝しています。
   
神様、アリアとう。


ちょうど執筆していた「桜の園」(刊:光文社)。撮影:川田雅宏

ききみみ日記】というマガジンを作り、ここ数年のオペラ・クラシック演奏会の感想を毎日UPしています。
直近の演奏会はもちろん、ここ数年のSNSへの投稿を遡りながら、微調整しています。 よろしければお越しいただけますとうれしいです。
(2022年10月10日開始)


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