ブルックナーと秋

アントン・ブルックナーが
作曲した10番目のシンフォニー、
第8番の第3楽章、アダージョが
涼やかな秋にいいと聞いた。

夜暗いうちから散歩に出かけると
徐々に明るく群青色になってくる。
さすらうように歩くのは私であり、
その姿はシューベルトに似ている。

弦の音はとても小さくて、
霞がかかりぼんやりしている。
すると突然に金管が鳴りだし、
真っ赤な朝日が昇ってきた。

輝く陽の光が草花を照らし、
さすらい人は眠気が一遍に覚める。
が、心の中は晴れることはなく、
物憂い孤独に苛まされている。

やがて晴れ間は雲に覆い隠され、
雨が降ってきそうな雰囲気。
風が吹きだし木の葉が揺れ、
さすらい人の心も揺れ動く。

不安と怖れが溢れ出てきて、
涙がこぼれ落ちてしまう。
どうしようもない不条理に、
生きていて良いものかを問う。

張り詰めた思いが遠い山に響く、
ホルンの音によって安らいでいく。
今日も生きる続けなければいけない。
自然の赴くままに歩みをとめず。