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子どもの自発性を尊重したい。絵本作家さんの本を読んで考える、子どもどの関わり方。

先日、「児童書研究コーナー」という私の大好物が詰まった場所を、近くの市立図書館に見つけて大興奮した話を残しました。


その時にも触れた、五味太郎さんの書籍と、加えて一緒に借りてきたジョン・バーニンガムさんの自伝も読み進めているのですが、その中で共通したテーマについてすごく考えさせられることがあったので、記事にしながら思考を整理したいと思います。

そのテーマとは、これも私の大好物、
子どもの教育、幼少期の子どもとの関わり方についてです!



ジョンバニーガムさんの自伝『わたしの絵本、わたしの人生』


このジョンバーニンガムさんの自伝では、冒頭から幼少期の過ごし方、またどのような学校でどんな教育を受けてきたかが記されていました。
学生時代を振り返るページの最後に、このような文章がありました。

1953年に、わたしはサマーヒルを卒業した。 英文学だけは、全国統一中等教育修了試験にパスし、 たが、それ以外は、美術をふくめて、ことごとく不合格だった。 サマーヒルでは、毎日楽しく、陽気にすごした。
良い教育とは、どういうものなのだろう? わたしにはいまだによくわからない。わが子の学校選びに頭を悩ますという経験を経ても、やはり答えは見つからぬままだ。 学校生活はそこにいるあいだは永遠のように思えるが、実は本当に短いものだ。

正直、意外に感じました。
バーニンガムさんほどの才能と感性あふれる方でさえ、いやだからこそなのか、良い教育がどういうものなのかわからないと、おっしゃっていることが、意外だったのです。

この「いまだによくわからない」という言葉の中に、バーニングムさんの全ての思いが詰まっているのかなと思いました。

バーニンガムさんは、幼少期に多くの学校を転々としたそうです。戦中戦後の揺れ動く時代、現代のようなある程度統一された教育がない中で、様々な教育方法を教授してきた。

そうやって様々な教育を受けて生きてきたけれども、結局、その教育が今の自分に生きているのか、わからない。
もっと他の教育を受けたら、もっと良い人生があったのか?それともそうではないのか?ということを検証することは不可能だし、実際あまり意味もない。

きっとご自身についてだけでなく、ご自身のお子様についても、同じように感じてらっしゃったんだと思います。

そうした長年の経験を経た上で、先日した文章の最後にある『学校生活はそこにいるあいだは永遠のように思えるが、実は本当に短いものだ。』という言葉に、バーニンガムさんの教育への期待と落胆が、込められてるような感じがしました。


五味太郎さん『絵本を読んでみる』


五味太郎さんの『絵本を読んでみる』では、『よわむしハリー』の解説の中で、このような文章がありました。

ぼく、かねがね思っ ているのだけど、たとえば「30÷5」という問題がわからない子がいるとするでしょ。 6 という答えが出ない子がいるとするでしょ。その子を「割り算のできない子」と一般には するわけだけど、ぼくに言わせると、その子は「できない」のではなく、「やらない」の だと思う。

割り算をやらない子。跳び箱もそうだ。跳べる子・跳べない子ではなくて、 「跳ぶ子」「跳ばない子」だと思うんだ。 割り算する必要がない子、跳び箱跳ぶ必要がない子ととらえるべきだろうと考えている。だってそうでしょ、必要、必然があれば、30なんて5ですぐ分けられるんだし、犬に追いかけられれば塀ぐらい跳びこえちゃったりする んだ。 そしてあくまで必要性、必然性というのは当人の中にあるものだし、まさにそれは 個人のキャラクターというやつだよね。すべての子どもに30÷5をわからせたい、跳べるようにしてやりたい、という「教育的熱意」というやつはいったい何なんだろう、 と思うのね。それでいて「個性の尊重」もへちまもないよ。 個のあらゆる質をとりあえず 認めるという大前提がないかぎり、 それ以後の学習も訓練もないわけだ。

「割り算をする子」が30+5に飽き足りず 186875028 を 3326で割ろうが、0を1で割り たくなってしまおうが、それはその子の必要というやつで、発展的泥沼と表現すべきなん だけど、「割り算をしない子」が居残り授業で涙をうかべて30÷5に挑戦させられている 図は地獄絵としかいいようがないよね。
そのくらいのことがわからなければ社会人として 通用しないぞ、という教師の言い草は、まったくの嘘だものね。 跳び箱にいたっては、それこそ何の役にも立たないものね。
「割り算をする」のも能力なら「割り算をしない」というのもまた能力だ。 そこまで言 い切っていい。ハリー君の弱虫は能力である。

『絵本をよんでみる』よわむしハリー


うんうんそうだよね、そうなんだよね!!
と何度も頷きながら読みました。

大人は子どもの能力を決めつけてはいないか?
教育は、その子どもの能力を殺してないか?

特に『すべての子どもに30÷5をわからせたい、跳べるようにしてやりたい、という「教育的熱意」というやつはいったい何なんだろう』という部分に激しく共感しました。

私は先日、小2息子の個人面談で、彼の字が丁寧でないという話題になった時、ずっと考えていたことを先生に聞いてみました。

「これから先、字を『書く』ことよりタイピングしたり、音声入力したりすることが今よりもっと増えることが予想できるから、ひらがなや漢字を一生懸命練習することに、どれぐらい子供も親も時間をコストをかけるべきか悩んでいます」

と。すると先生からは

「綺麗に書いて欲しいというわけではなくて、誰かに伝わるように書いて欲しいと思っています!」

という、的を得ているのか得ていないのか、微妙な返答をいただきました。

もちろん私も国語力はすごく大切だと思っていて、特にこれからの時代、自分の考えをしっかり言語化して、誰かに伝えることはとても大切な能力の一つだと思っています。

だからといって先生や親から「誰かにしっかり伝えるために丁寧に書きましょう」と言われても、子どもからしたら何で?って感じですよね。
そこに必要なのは、子どもが自分から丁寧に字を書きたいと思うような環境を作ること、子供の自発性を促し、内的動機づけを促すことだと思うのです。

具体的には、どうしたら息子が自分から字を丁寧に書こうって思うかを考える。例えば息子はゾロリとか恐竜とかに今夢中だから、その魅力を誰かに伝えてもらうのはどうかな?見に行った恐竜展の魅力を伝えてもらうのは??
こういうところまで落とし込んで初めて、息子の個性や能力に寄り添った教育ができるようになるんじゃないかと思うんです。

面談の時の先生のその会話からは、息子に寄り添うということよりも、とりあえず字は丁寧に書こう、教科書通りやっていこう、という一斉教育にありがちな『教育的熱意』を強く感じて、少し残念に思いました。

子供は一人一人全く別の存在で、それぞれの個性をもち、能力を持ち、それぞれに発達していきます。
現在の学校教育は基本的に一斉教育なので、子供一人一人への配慮が充足しているとは言えないと日々感じます。

だから私は、五味さんの『それでいて「個性の尊重」もへちまもないよ』に大賛成!!と思ってしまいます。

脳科学者澤口俊之さんの『幼児教育と脳』へと繋がる、子どもの自発性の重要性

最後にご紹介するのは絵本とは関係ないですが、同じように幼少期の教育について述べられている、脳科学者澤口俊之さんの『幼児教育と脳』から。

理想的な幼児脳教育についての結論を、以下のように述べられています。

エッセンスは「自発的な英才教育」である。

多重性の各々をまんべんなく育てるという基本の上に立って、押し付けではない英才教育 をほどこすこと――それが「自発的英才教育」だ。つまり、好奇心に駆動された目的志向性を 育みながら行なう英才教育である。この教育は、子どもの自発性を重んじるので、少なくとも 子どもに苦痛を与えないはずだ。 そして、その子どもの最もよいところ好きで得意な知性 フレームを伸ばすことができる。

子どもたちは人類の宝である。その宝を磨き、輝かせる要件は、子どもたちそれぞれの最も よいところを豊かに育むことにある。そうしてこそ子どもは人類の宝として輝き、人類に貢献 できるにちがいないのだ。

幼児教育と脳 第4章いかに育てるかより


読んでいただいてお分かりの通り、
1つ前に紹介した五味太郎さんの文章の内容は、実はすでに最新の脳科学でその通りだと立証されているのです。

つまり、子ども一人一人が自発性・主体性を持って好奇心を発揮して過ごすことが、脳の知性フレームをの成長を促進し、結果、それが英才教育になっていくと、脳科学において解明されているのです。

ここまで有名な作家さんや、脳科学者の方が子ども自発性を指摘しているにも関わらず、学校教育が依然として変わっていけないことに、私は疑問を感じずにはいられません。

ただ現場の教師の方々は、日々子供にまっすぐに向き合い、子供たちのために身を粉にして奮闘してくださっていることも重々承知しております。
本当に頭が下がります。ありがとうございます。

それでも私は、子供たち一人一人の個性や能力を存分に活かすような関わり方を一人でも多くの大人が実行していくことが、子どもたち一人一人の人権を尊重し、健やかな成長を応援することができると信じています。



今日は2人の絵本作家の方々の教育や子供への関わり方への考え方から、私が常々考えていることにもつなげて残してみました。

だいぶ長文になってしまいましたが、最後までお読みいただいたあなたに本当に感謝いたします。


ありがとうございました!!!


で はまた、noteでお会いいたしましょう!


hona


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