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総編集…コリン・ソルター 日本語版監修…奈良信雄『美しい人体図鑑 ミクロの目で見る細胞の世界』

 「人体図鑑」と聞くと、まず骨格や内臓を想像するかもしれません。

 しかし、この本はそれらよりもずーっと小さな細胞たちについての図鑑。

 光学顕微鏡、電子顕微鏡、X線、血管造影、シンチグラフィ、CT/MRI、樹脂注入法、染色といった技術を用いて撮影された写真がずらり。

 ミクロな世界がダイナミックに写し出されています。

 特にグロテスクな写真があるわけではないので、血が苦手な方にも比較的安心して読めます。

 ウイルスや細菌の写真なのに、まるで前衛的なアート作品を見ているかのよう。

 わたしはこの本を読んでいて、時折、映画やドラマで聞く「人間は孤独な生き物だ」というセリフを思い浮かべました。

 あれは本当だけど嘘だな…と気づいたからです。

 人間は60兆個以上の細胞によって生かされているのですから、本来なら寂しさを感じる瞬間なんて一秒たりとも無いはず。

 でも、辛い時にマクロファージやグリア細胞やニューロンが「元気出せよ!」なんて肩を叩いて励ましてくれるわけではないので、人間は本当は孤独ではないのにどうしても孤独を感じてしまう生き物なのかも。

 さて、この本は、細胞、血液、脳、器官、病気、医薬品について写真付きで詳しく解説しているので、ページをめくる度に「こ、こんなに沢山の人たちのおかげで自分は生かされているのか…!」と息を呑みます。

 …厳密に言えば人ではなくて細胞なのですが。

 この本を読んでいると、だんだんどの細胞のこともまるで昔からよく知っている人たちであるかのような親近感を覚えてくるから不思議です。

 もし、自分という存在を会社に例えるならば、この人たちはきっと共同経営者たち!

 みんなの尽力がありがたいです。

 ただただ感謝するしかありません。

 こうして感謝しているこの瞬間も、みんなが絶え間なく働いてくれてるのですよね。

 わたしも明日からもまた頑張って働き続けようと思います。

 HeLa細胞は、医療研究のために研究室で生育させた、ヒトのがん細胞である。1951年に子宮頸がんで亡くなったヘンリエッタ・ラックスから採取された細胞を、現在まで培養し続けているもので、半永久的に増殖できる細胞株とされる。

(総編集…コリン・ソルター 日本語版監修…奈良信雄『美しい人体図鑑 ミクロの目で見る細胞の世界』 P160から引用)

 HeLa細胞は適正な条件のもとで無制限に自己複製するため、不死の細胞と考えられており、持続的ながん研究を行うのに適した細胞株として応用されている。

(総編集…コリン・ソルター 日本語版監修…奈良信雄『美しい人体図鑑 ミクロの目で見る細胞の世界』 P161から引用)


 という記述には非常に驚かされましたが…。

 元の宿主が亡くなってから60年以上経つのに、細胞が生き続けている…!?



 〈こういう方におすすめ〉
 自分の体を構成するミクロの世界に関心がある方。

 〈読書所要時間の目安〉
 5時間くらい。

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