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作・絵…ジミー〈幾米〉 訳…岸田登美子『ブルー・ストーン』

 「帰りたい、あの場所に…」

 そう願うたびに砕けて、どんどん小さくなっていく青い石を描いた絵本。

 ※注意
 以下の文は、結末までは明かしませんが、ネタバレを含みます。





 青い石は、もともとは一つの大きな石でした。

 しかし、人によって半分に割られ、その半分だけが元の場所から運び去られてしまいました。

 人の手でどんなに綺麗な形に加工され、どんなに多くの人たちに愛されても、青い石は故郷と、故郷に今も居るであろう自分の片割れを求めて、こう願います。

 「帰りたい…」と。

 そう願うたびに砕けて、どんどん小さくなっていく青い石は、様々な持ち主のもとを転々とします。

 孤児院の子どもたちが青い石の持ち主になった時期もありました。

 帰りたい場所があっても帰れない。

 それは青い石だけではなく、子どもたちも同じ…。

 それまでに青い石の持ち主となった大人たちも、きっとそれは同じだったことでしょう。

 人間にとっての「帰りたい」が、「時」を意味するのか、或いは「場所」を意味するのか、時でも場所でもなく特定の「誰かのそばにいたい」という気持ちを意味するのか、答えは分からないけれど…。

 どんな人だってきっと、そういう寂しさを多かれ少なかれ抱えていることでしょう。

 青い石は、長い時が経ってしまったせいで、元居た場所のことを少しずつ忘れてしまいました。

 けれど、「帰りたい」という気持ちは強くなるばかり…。


 続きが気になる方は是非読んで確かめてください。

 わたしはこの絵本を読んでいて、鮭の遡上や崇徳院の和歌を思い浮かべました。

 どんなに多くの困難があっても生まれた川へ戻ろうとする鮭。

 なぜ命をかけてまで帰ろうとするのでしょうか?

 崇徳院の「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ」という和歌。

 なぜ、必ず再会しようと願うのでしょうか?

 きっとそれらの感情を言葉でうまく説明することは出来ないでしょう。

 想いに突き動かされて、としか、きっと言えないでしょう。

 …ここまでこの記事を読んでくださった方、あなたの心にも「帰りたい」という願いはありますか?



 〈こういう方におすすめ〉
 切なくて美しい絵本を読みたい方。

 〈読書所要時間の目安〉
 30分足らずで読み終えられる文字数ですが、とても余韻が残る絵本なので、30分以上〜1時間くらいを目安にすると良いと思います。

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